14:08 2020年07月14日
新型コロナウイルス
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ラテンアメリカがコロナウイルス感染拡大の新たな「震源地」となっている。わずか1ヶ月でラテンアメリカの新型コロナウイルス感染者数は7倍に増加し、54万人を超えた。死亡率は8.5倍に増加した。感染状況が最も酷いのがブラジル、ペルー、メキシコだ。「国境なき医師団」は感染者数の急増を伝え、検査が不十分ことから、各国の公式発表の数字は実際の感染拡大の規模を反映していないのではないかと疑問視している。

感染状況の首位は、感染者数と死者数がスペイン、イタリア、フランス、イギリスを超えたブラジルだ。米ジョンズ・ホプキンス大学によると、5月25日時点で、ブラジルで感染が確認されたのは36万人、死者は2万2000人。感染の「震源地」は、公式に発表されているだけでも6万6000人の感染者が出ているサンパウロ州である。

ブラジルの非営利組織「保健政策研究所」のミゲル・ラゴ所長((Miguel Lago, executive director of Brazil's non-profit Institute for Health Policy Studies)を始めとする多くの専門家によると、ラテンアメリカが新型コロナウイルスの世界最大の被災地になる可能性があるという。ラゴ氏は「医療崩壊を回避するにはもう遅すぎるが、もしかすると、さらなる惨劇は回避できるかもしれない」と述べる。

ブラジルではジャイール・ボルソナーロ大統領の報道官も感染が確認された。しかし、ボルソナーロ大統領自身は積極的なウイルス対策に断固反対し、隔離措置の支持者を批判している。5月8日には、大規模な感染拡大にも関わらず、大統領が連邦最高裁判所(STF)に対して、一部の州知事がWHOの勧告を踏まえて大統領の意思に反する形で導入した隔離措置を解除するよう訴えた。

医薬品輸入会社Zalika Farmacêutica社長で、サンパウロ州カラピクイバ市保健局元事務局長のダヴィド・ジルベルゲルド(David Zylbergeld)博士はスプートニク・ブラジルへのインタビューで、ブラジルの感染状況は悪化のシナリオを描く可能性があるとして、次のように述べた。「私たちはこのパンデミックの進化について何も知りません。このウイルスについて何も知らないのです。今私たちが知っているのは、ブラジルでのウイルス拡散の速度と死亡率だけなのです。」

ジルベルゲルド氏によると、感染者の約80%は無症状で、他の人に感染を拡げているという。ジルベルゲルド氏は「最大の問題はウイルスに感染しても元気な人たちです。何の兆候もなく、深刻な症状もない人が、ウイルスを持っていることさえ知らずに行動を続け、キャリアとなっています。こうした人たちへの医療支援の態勢がありません。空き病床はほとんどなく、ICUのベッドもほぼ埋まっており、野営病院が作られている状態です。これはこれまで長く先送りにされてきたブラジルの公共医療制度の崩壊の問題です。私たちには感染増加に対処するための戦略的で集中的な計画がありません。本来あってはならないことです」と述べる。

モスクワ国際関係大学教授でブラジルとラテンアメリカ諸国研究の大家であるリュドミラ・オクネワ氏はスプートニクへのインタビューで、感染者数と死亡率を考えると、ブラジルの状況は世界的にも極めて稀で、もしかすると世界で最も悲劇的かもしれないと語った。「ブラジルの新型コロナウイルス感染者数の急増は政治的危機も誘発しました。というのも、ボルソナーロ大統領は当初から新型コロナウイルスの危険性を否定していました。そして、隔離措置の導入に全力で反対しています。軍人出身の彼は命令型の国家運営に慣れ親しんでいます。コロナ対策をめぐる対立で、ボルソナーロ大統領は1ヶ月の間にすでに2人の保健大臣を解任しています。彼らが隔離措置やソーシャルディスタンスなどの必要な感染対策を支持したためです。2018年の大統領選挙の際にボルソナーロ氏を支持した州知事たちも、大統領に反対しています。科学者、文化人、教育界、著名な政治家や学者らも大統領の姿勢に憤り、すぐに対策を講じ、啓蒙を始めるよう求めています。しかし、大統領はこうした訴えを拒否しています。彼は集会に顔を出し、支持者と握手やハグをし、知事の言うことに耳を傾けないよう呼びかけています。大統領の背後には相当数の国民からの強力な支持があるのです。それは主に大都市やその周辺のスラム街(ファベーラ)の住民です。彼らは極めて密集した環境で生活しており、小さな商売、ありとあらゆる種類のサービスや補助的な作業で生計を立てています。こうした人たちが人口のかなりの部分を占め、非公式経済部門を担っています。彼らにとって経済のシャットダウンは死に相当します。彼らに選択の余地はないのです。餓死するか、ウイルスによる感染死かです。ボルソナーロ大統領はまさにこの点を強調しています。もちろん混沌や失業を望む人はいないでしょうが、どうやってバランスをとるのかが問題です。経済を救うのか、人間を救うのか。誰にとっても極めて難しいジレンマです。」

経緯:新型肺炎はどのように流行するのか
© Sputnik / Savitskaya Kristina
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ほかのラテンアメリカ諸国については、新型コロナウイルスの感染状況と対応策はさまざまだが、多くの国でブラジルと同様に闇経済が経済の相当部分を占めることから、厳しい制限措置は多くの国民にとって生活の糧の喪失を意味する。

ペルーは感染者数でブラジルに次いでラテンアメリカで2位。感染者数は11万9000人を超え、死者数は3000人を超える。ペルー政府はブラジルと違い、厳しい制限措置を地方で迅速に発動したにも関わらず、この状況である。

メキシコでは、2月28日に初めて新型コロナウイルス感染が公式に確認された。現在、感染者数は6万人を超え、死者数は7000人を超える。5月30日まで制限措置と外出自粛が続くが、感染状況が許す地方では5月18日から制限の一部解除が想定されていた。メキシコの感染対策計画には民間部門の動員が想定されており、民間部門は国家機関に対して金銭面でも、設備機器、病床、医療従事者用の防護具、食糧や水の供給においても大きな支援を行っている。

チリ政府は当初、危険を過小評価していたものの、結局3月31日には状況が危機的との判断を下し、国内に緊急事態宣言が発出された。現在の新型コロナウイルス感染者数は6万人を超え、死者数は700人を超えている。5月14日、政府は感染状況の悪化を受けて首都サンチアゴに完全な外出禁止を発動した。外出禁止エリアでは食料品店、薬局、銀行、病院を除くすべての商業施設と製造業がストップしている。これまでチリでは、一部の地域で制限措置が導入されたり解除されたりしている。

エクアドルでも感染急増に対する態勢が整っていなかった。感染者数は3万人を超え、死者数は3000人を超えている。3月16日、全国に緊急事態宣言が出された。生活に必須と政府が認めたものを除き、すべてのビジネス活動がストップしている。4月初め、駐ロシア・エクアドル大使がロシア政府に対してコロナ対策支援を求めるメッセージを送った。

 国際労働機関(ILO)によると、エクアドルの労働力人口の約60%は非公式部門に従事している。つまり、定職も持たず、毎月の給料もない状態である。こうした人々にとって長期間にわたって仕事がないことは悲劇となりかねない。

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