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    「マハーバーラタ~ナラ王の冒険~」演出家の宮城 聰

    今年のチェーホフ・フェスティバルは思いがけない発見がいっぱい!

    © 写真: chekhovfest
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    リュドミラ サーキャン
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    第12回国際チェーホフ演劇フェスティバルが、13日からモスクワで開幕した。今回は世界12カ国の劇団が19の演目を披露するが、そのプログラムは思いがけない嬉しい驚きに満ちている。

    フェスティバルは、フランス・パリの「ブッフ・デュ・ノール」劇場の「町人貴族」で幕を開けた。これはモリエールの作品で、演出はデニ・ポダリデス氏、ジャンルはコメディ=バレ(バレエを組み込んだ喜劇)で、ジャン・バティスト・リュリの音楽に合わせて演じられる。なお劇中に流れる音楽は、モリエールがこの作品を書いたルイ14世の時代のものだ。このフランスの劇団は、フェスティバルの間、様々なジャンルのお芝居を5本上演する。

    コムソモーリスカヤ駅
    © Sputnik/ Ruslan Krivobok
    チェーホフ・フェスティバル開幕後、モリエールの作品の後に登場したのは、同演劇祭と英国エジンバラ演劇祭とスタジオSounDramaが、昨年夏が第一次世界大戦勃発100周年にあたっていた事から共同制作した作品『戦争』だった。演出は、ロシア人でスタジオSounDramaの芸術監督を務めるウラジーミル・パンコフ氏だ。彼は、英国の作家りチャード・オルディントンの長編小説「英雄の死」とホメ-ロスの英雄叙事詩「イーリアス」、そしてロシアの作家で詩人、そして第一次世界大戦に従軍したニコライ・グミリョフの作品「騎兵の手記」を一つにまとめ、この戦争ドラマを創り上げた。初演は、昨年の8月9日、エジンバラ国際演劇祭を舞台になされ、観客にもまた新聞雑誌でも高い評価を得た。例えば、新聞«Morning Star»は「演劇は普通、戦争のリアルさを正しく伝えるという点で映画と競うのは難しいが、パンコフ氏と彼のグループは、全体として戦争についての偉大な叙事詩へと変わる、音や造形的イメージからなる印象的なモザイクを創り出すのに成功した」と評している。

    フェスティバルでは、もう一つ戦争をテーマにした演目がある。それは中国の京劇「楊門女将(楊家の女性将軍達)」だ。この作品は、京劇の中でも代表的流れの一つ、フーヂョウ(福州・福建省の省都)京劇団の有名な出し物だ。同京劇団は、チェーホフ・フェスティバルに向けて、2年前から準備を始めた。俳優達は、フランスや日本、シンガポールやマレーシアでも公演しているが、これらの国々では、作品の全体ではなく、その一部を紹介したにすぎなかった。今回ロシアの観客は、中国国外では初めて「楊門女将」の全幕を見る機会を持つ。京劇は、ロシアでは単にチャィナ・オペラと呼ばれているが、実際は、伝統的な中国の歌とパントマイム、武芸、アクロバットや踊りを、古くから伝わる中国楽器の伴奏のもと、調和的に一つにまとめた演劇芸術である。

    また今回のフェスティバルには、南アフリカから初めて「イナラ」という名の演劇集団が参加している事も大きな話題だ。このグループは、アフリカのリズムに合わせた音楽舞踊ショーという観点から見た演技者のレベルの高さから言っても、非の打ちどころのない衝撃的で情熱的な魅力にあふれている。振付家のマーク・ボールドゥイン氏が、ジョゼフ・シャバラル氏とエッラ・スピル氏の音楽に合わせ演出した。スピル氏は、インタビューの中で「後でプロフェッショナルな音楽と一つにするため、南アフリカの動物達が発する鳴き声などを特別に研究した」と述べている。一方ボールドゥイン氏は「イナラ」の振り付けにはズールー人のダンスを用いた。作品はアフリカ文化の真の祝祭となっている」と主張している。

    この他、モスクワの観客にとっては、バレエ「シンデレラ」も一つの発見だ。プロコフィエフ作曲のこのバレエをフェスティバルで演出しているのは、スペインの振付師ゴイオ・モンテロ氏だ。彼はロシアでは、今のところあまり知られていないが、今回のフェスティバルを機に、ロシアでもその名が知られるようになるだろう。彼が演出した「シンデレラ」は、貧しい娘についての一般によく知られたおとぎ話ではなく、大人のためのバレエで、主要なヒーロー達は強く大胆なイメージを持つ。主人公の持参金のない貧しい娘、つまりシンデレラを演じるのは、日本の門沙也香(カドサヤカ)さんで、彼女は、主人公のはっきりとした個性や強い生命力、そして傷つきやすい繊細さをうまく表現している。世界の批評家達は、口をそろえて「こんな普通と違った実験的でアバンギャルドなシンデレラは、これまでなかった」と述べている。

    さて今回のフェスティバルに、東洋的なエキゾチズムをさらに加えてくれた演劇グループがある。それは、日本の演劇集団、静岡舞台芸術センター(SPAC)だ。彼らはモスクワに、自分達独自のバージョンによる古代インドの叙事詩「マハーバーラタ~ナラ王の冒険~」を持ってきた。しかし舞台でこの叙事詩をすべて上演するのは、恐らく不可能だ。それゆえ演出家の宮城 聰(ミヤギサトシ)氏は、ダマヤンティ姫とナラ王の愛の物語の部分を、自分達の舞台用に演出した。そして物語の時代を10世紀に、場所を日本に移し変えた。このお芝居は、25人の俳優兼ダンサー、オーケストラそして語り部により進められる。演者は皆、大変巧みで、観客は知らず知らずのうちにお芝居の世界に引き込まれてしまう。ロシアではまだ誰も、このお芝居を見た事がないが、効果的な舞台セットと目を見張るような衣装は、ロシアの演劇ファンの心をきっとつかむに違いない。

    フェスティバルは、全部で2カ月以上続き、7月17日に幕を閉じる。プログラムは多彩で、かつ嬉しい事に庶民にとっても手頃な値段で、世界各国の演劇芸術の粋を直接見る事ができるため、チケット売り切れも出始めている。ロシア人の演劇好きは、昔も今も少しも変わらないようだ。

     

     

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