01:34 2019年12月12日
  アリーナ・ザギトワ選手のクレオパトラ:衣装デザイナーが語る造形

アリーナ・ザギトワ選手のクレオパトラ:衣装デザイナーが語る造形

© AP Photo / Toru Hanai
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フィギュアスケートの衣装は、選手が観客の前で氷上に“描く”イメージを視覚的に補完する役割をもつ。アリーナ・ザギトワ選手は新シーズンである2019/2020年のフリープログラムに、歴史上もっとも有名な女性の一人である「クレオパトラ」のテーマを選んだ。スプートニク通信は、衣装デザイナーのオリガ・リャブコワ氏に、エジプト女王クレオパトラの造形について話をきいた。

歴史家はクレオパトラが美女ではなかったが、ガイウス・ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)とマルクス・アントニウスという2人の偉大なローマ将軍の心を捉えることができたと主張する。デザイナーのリャブコワ氏は、ザギトワ選手自身がとても魅力的であり、衣装の助けを借りて彼女を“飾り立てる”ことは初めから全く考えなかったという。衣装はザギトワ選手が演技の中で描くクレオパトラの像を、ほんの少し補完するにすぎない。「クレオパトラのイメージは通常、ゴールドやターコイズ、あるいはエメラルド色で、身体の露出部分が多く、大振りな金の宝飾とともに描かれます。現代のデザイナーも同様に、クレオパトラの衣装にピラミッドを思わせる三角形のモチーフを使用することがよくあります。私は、クレオパトラの既存のイメージを重複させるという安易な方法はとらないことにしました。あまりにも表面的になってしまうからです。私は、アリーナ(ザギトワ選手)のためにいつもと違うクレオパトラを作りたかったのです」。

リャブコワ氏は、写真や映画など大量の資料を見返したと語る。しかし最終的にヒントとなったのは、歴史本とクレオパトラに関する論文だった。「アリーナ(ザギトワ選手)の衣装に、ピラミッドやお馴染みの蛇ではなく、鳥が登場するとは誰も予想しなかったでしょう。ある歴史文献で読んだのですが、初期のクレオパトラ像はグリフォン(鷲の頭=空、ライオンの身体=大地、翼をもつ伝説上の生物)とともに描かれ、後に肖像画にハヤブサが登場します。私のクレオパトラの衣装にある鳥は、古い映画を観て私が掴んだ、クレオパトラの総合的イメージなのです。衣装の色は、トゥトベリーゼコーチと振付師、アリーナと私の4人で決めました。トゥトベリーゼコーチはもちろんイメージ作りに参加します。例えば、アリーナのクレオパトラの衣装は身体にピッタリし過ぎるものではなく、ゆったりとした、トガ(古代ローマ人の衣服、チュニック)のスカートが短いバージョン、といったようにリクエストがありました」。

蛇も最終的に加えることにした。ただしコスチュームにではなく、ブレスレットのように腕に。女王クレオパトラのイメージを完成させるものに、首元の華やかな装飾品や髪飾りなどがある。しかしリャブコワ氏は、これらがフィギュアスケートの衣装には相応しくなく、また単に技術的に不可能なのだと語った。「選手にとっては、髪のピン一つでも危ないのです。観客は美しい衣装を見たいと思いますが、フィギュアスケートは何よりもスポーツであることを忘れてはいけません。実際、私は髪飾りのアイディアを持ち込み、美しい鳥のデザインも起こしてみました。アリーナが実際に着けてみて、やはり邪魔になる、と。それでも、イメージの仕上げとして髪にストーンを張り付けようとしましたが、剥がれ落ちてしまうリストがあるため却下。危険がある、ということを私はデザイナーとして常に意識し、最適で安全な解決法を選びます。最終的に、面白いディティールがありながらも、クレオパトラのイメージを華美にし過ぎない衣装ができたのではないかと思っています」。

リャブコワ氏はスプートニク通信に対し、トゥトベリーゼコーチの教え子らと同様、リャブコワ氏も常に「勝つ」という目標を自分に掲げていると語った。衣装は単に美しく見えるだけではなく、選手のスケーティングを邪魔せず、選手とともに結果を勝ち取るために機能すべきだと考えている。


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