20:26 2020年05月29日
フィギュア特集
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ロシアのフィギュアスケート界はロシア全土と同じく自己隔離規制のただ中にある。選手たちは通常の練習環境を奪われたが、しかしフィギュア界というのはリンクはなくとも、センセーショナルな出来事が相変わらず「驚くような展開」を見せるスポーツだ。4回転ジャンプのあのアレクサンドラ・トルソワ選手(15)が突然、エテリ・トゥトベリーゼコーチを離れ、五輪チャンピオンのエフゲニー・プルシェンコ氏へと移籍。このニュースは一瞬にして国内メディアを駆け巡った。「ロシアのロケット」と呼ばれるトルソワ。彼女はなぜ突然、五輪チャンピオンのアリーナ・ザギトワ選手を育てたほどの名コーチのもとを「離れた」のか。様々な憶測がざわめいている。

スプートニクは読者のみなさんに解説を試みようと、かつて同じように、名コーチを離れ、他へと移った経験をもつ有名な選手、コーチたちに意見を聞いた。

トルソワ以外にもエテリ・コーチのもとでは、今シーズンのグランプリシリーズ(GP)ファイナルで銀を獲得したアンナ・シェルバコワ(16)やGPファイナルと欧州選手権で金に輝いたアリョーナ・コストルナヤ(16)がトレーニングに励んでいる。この2人に比べ、トルソワのこれらの大会での成績は銅だった。

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トルソワはこのチームで他の選手らと競い合うのに疲れ、別のチームでトップに立とうと決心したのだろうか。五輪ペアスケーティング2冠、現在はコーチ業のアルトゥール・ドミトリエフ氏(52、同名の息子は男子シングルのスケーター)は、選手の心理を「あれこれ詮索」し、この状況を劇的なものとすることは意味がないと考える。

「チャイコフスカヤ、タラソワなどといった名コーチからさえ離れた選手たちはこれまでもいました。かつてアレクセイ・ヤグディン氏だって現役時代、アレクセイ・ミーシンコーチを離れ、逆にタチアナ・タラソワコーチに移っています。こうなったのはエフゲニー・プルシェンコ氏と一緒に練習していたこと、チームで自分はもはやトップではないと感じたためでした。ヤグディン氏のコーチの変更は彼にとっては間違いなく成功でした。彼はこれで五輪で金メダルを獲得したのですから。このおかげでロシアには五輪チャンピオンが2人誕生しました。もちろん、こうしたことが再び他の誰かに起こるのかといえば分かりませんが、しかし、そうなりたいという気持ちはどんな選手の中にもあるのです」               

トルソワは五輪金メダリストにもなってはいない。しかし、高難度の4回転ジャンプを数種類も跳び、そしてそれによってフィギュア界の天才、あの羽生結弦選手を感動させたという点で、すでにフィギュアスケートの歴史に名を刻んだと言える。

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「なぜトルソワはコーチを変えたのか」という理由としてメディアが一番注目している中に、エテリコーチがチームでの彼女の存在にあまり注目していなかったというものがある。インナ・ゴンチャレンコ・コーチは、コーチは欲しいものを満足に授けてくれなかったという恨みを持って若い選手が離れるのなら、それはもっとも悲しく、間違ったことだとして次のように語っている。

「彼女に取り組む時間が足りなかったいうのは、おかしな話ですよ。トルソワの成績は、なによりもまずあのチームでの練習によって成し遂げられたものです。指導者がいなければどんなに才能ある人間でも得られる成果はわずかでしかありません。まさにチームがトルソワを指導し、そのおかげで才能ある少女は見事な成果を得ることができたのです。ところが年齢からいえばまだまだ幼い少女が突然、自分は他の選手たちより実際に優れていると決めつけ、チームの中で自分はより注目されるべきだと考え始める。そうした若いフィギュア選手の心境に影響を与えているのは、この年齢ではコーチではなく、間違いなく選手の両親です。通常、こうした考えは選手の取り巻きや家族で生まれ、強められますが、その結果、逆に選手自身にネガティブに作用してしまうことが多いんです」

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一方、ロシアのサイト「Sports.ru」は、ジャーナリストのイヴァン・クズネツォフ氏の考えを紹介した。クズネツォフ氏は、トルソワがエテリ・コーチのもとを離れたのは、それ自体、エテリ氏のチームが世界王者の誕生を独占している状況を打破するという意味で好ましいことだと考えている。 

この問題をきっかけにロシアのフィギュアスケートはさらに強く、おもしろくなるのだろうか。オレグ・ヴァシリエフ氏はそうなりうる可能性を否定してはいない。

「エテリ・トゥトベリーゼ・チームは、小さな少女を素晴らしいジャンプフィギュア選手に育成するということでは確かに成功しています。彼女たちのジャンプの回転はとても速い。でもそれは軽量で細身だからです。しかし、伸び盛りの彼女たちの身体が数年後、どう成長するかは誰にも分からりません。彼女たちが大躍進を見せ、他を抜きんでる時間はあまりにも短く、数シーズンでしかありません。トルソワは前シーズン、同じチームのライバルたちに先を越されてしまった。このことがおそらく彼女をイラつかせ、そして別のチームで自分が望むような結果を出すのだと決心させたのだと思います。さまざまなチーム間で競争が激化すれば、フィギュアスケートの試合はひたすら見ごたえのあるものになるはずですよ」

かつて同じようにコーチを変えた経験を持つ五輪チャンピオンのアレクセイ・ヤグディン氏は、自身の意見を簡潔に語った。

「今、トルソワの行動についてなにかを話すのはまったく無意味なことでしょうね。コーチを変えたアレクサンドラ(トルソワ)の選択が正しかったか、否かか、その答えはシーズンが開始してはじめて明らかになりますよ。今、私としては自分のコーチであるタチアナ・タラソワのこのセリフを引用するにとどめます。それは『結果で証明しなければならない』というもの。来シーズンを見れば、誰が誰に何を証明したかがわかります」

ところが、実は証明されるべきことはトルソワ以外にもたくさんある。プルシェンコ氏のアカデミーに移るのはトルソワだけではない。トゥトベリーゼ・チームからは、若い選手を育成してきたセルゲイ・ロザノフコーチも、まだジュニア世代のヴェロニカ・ジリナ選手(11)も一緒に移るからだ。ジリナはすでにトリプルアクセルを習得している。

 フィギュアスケートファンらは新型コロナウイルスのパンデミックが収束し、試合が少しでも早く再開されるのを心待ちにしているにちがいない。大会を観戦する中で私たちは、優れたフィギュアスケート選手たちによる熱い闘いに再び興奮を味わうことになる。


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