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    ビザなし日本語学習の伝統と課題

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    徳山 あすか
    南クリル諸島:不和あるいは協力の島? (31)
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    ビザなし訪問の中でも毎年恒例となって人気を呼んでいるのは、専門家交流の枠内で行われる、日本語講師の派遣である。1998年の日本語講座開講以来、択捉島・国後島・色丹島でのべ3200人以上の住民が参加し、日本語を学んできた。日本語講師の話によれば、受講者は皆、とても熱心に勉強しているという。

    従来の授業では、日本でよく使われている教科書「みんなの日本語」(スリーエーネットワーク)を使用していた。これは、300時間の授業で初級を終える仕組みになっている、学習者の大学進学を視野に入れた教科書である。しかしこの事業はビザなし交流の枠内で実施されているという極めて特殊な教育であるため、夏期の1ヶ月から1ヵ月半の間だけ行われている。総授業時間数は約30時間だ。

    この状況を鑑み、富山大学国際交流センターの副島健治教授はビザなし日本語講座向けの独自教材を作ることを思いついた。副島教授自らも、2007年夏に国後島で教鞭を取った。

    副島教授「15回しか授業ができないなら、その時間で行う意味のある教材があるべきではないか、と思いました。自分なりに叩き台を考え、ロシア語通訳の方や島での講師経験のある方たちとタッグを組み、ビザなし交流の主催者側の賛同も得て、新教材の採用に至りました。これまでのように文法を積み重ねるのではなく、場面に応じた会話ができ、言いたいことが言えるような作りにしました。特に、ビザなし交流で役に立つようにです。とは言え、フレーズだけの丸暗記では面白くないので、語彙リストや文法の説明をロシア語で加えました。日本語だけを使って教えることから脱却して、ロシア語で積極的に説明をするようにしました。ひらがなを教えるだけでも何時間もかかるので、ひらがな・キリル文字を併記するなど、受講者のレベルに対応できるようにしました。

    1ヶ月勉強している間はみるみる実力がついていきますが、11ヶ月もブランクがありますから、1年後、またほぼゼロに戻ってしまいます。リピーター学習者の方はそれを何回も繰り返しています。新しい教材は、11ヶ月の間、自習もできるように意識しながら作ったつもりです。」

    副島教授が指摘しているように、学習の中断はビザなし日本語講座特有の課題だ。札幌市内の日本語学校に勤務する日本語講師の千葉直子さんは、今年色丹島に滞在し、日本語を教えた。千葉さんの参加はこれで4回目だ。千葉さんは、感想を次のように語ってくれた。

    「授業は、子どもクラスは16時から17時まで、大人クラスは17時30分から19時まででした。色丹島は学習会場が2つの村にまたがっている関係から、授業が一日おきになってしまいます。大人クラスにはお医者さんなど、忙しい方も参加してくれました。教えたいことがたくさんあるのに、授業数が少ないと感じました。以前は色丹島にあった日本語勉強のサークルがなくなったという話を聞いて、とても残念です。つまり、ロシア人で、日本語を教えられる人がいなくなったということだと思います。他のことで忙しく、なかなか自力で学習が継続できないからでしょう。現在日本語講師の滞在期間は夏期だけですが、例えば半年間ごとの交代制にして常に日本語講師がいるという風に、継続して学習できるような仕組みができると良いと思います。私も、スケジュールが合えばまた教えに行きたいと思います。」

    徳山あすか

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