20:55 2020年09月29日
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安倍首相辞任 自民党新総裁に菅官房長官を選出 (51)
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首相としての通算在任日数で歴代1位となった安倍晋三首相は、自らが掲げた公約や主な目標を達成せぬまま辞意を表明した。それらの実現を阻んだのは、新型コロナウイルスの感染拡大のような予期せぬ事態であり、また世論など十分予期できる要因でもあった。体調が万全でないことから、大切な政治判断を誤り、しかるべき結果を出すことができない可能性があると公言したことにより、安倍首相は強い政治家としての信用を高めた。というのも、安倍首相は政治において何より重要なのは、成果を出すことだと考えているからである。では、安倍首相は在任中に、どのような結果を出すことができたのだろうか。そして辞任後、世界と日本に何を残すことになるのだろうか。


アベノミクスはそれなりの成果をもたらしたが、誰もが実感できるものではなかった

安倍首相の内政における最大の成果の一つは、ほぼ毎年のように首相が交代していた6年にもおよぶ混乱の時代に終止符を打ち、政治の安定を取り戻したことである。2012年、2度目の首相の座に就いたとき、安倍氏は国の景気回復を最大の優先課題に掲げ、アベノミクスの基本方針となる「大胆な金融政策」、「機動的な財政運営」、「民間投資を喚起する成長戦略」という「3本の矢」は明確な成果を上げた。日経平均株価は大幅に上昇、輸出に不利な円高は円安に転じ、脱デフレへと流れを変えた。

しかしながら、こうした方策も国民の所得の増加に繋がることはなく、ほとんどの日本人はアベノミクスの恩恵を感じることはできなかった。とりわけ2014年と2019年に実施された消費税の増税は非常に厳しいものとなった。しかしながら、日本の債務残高が国内総生産(GDP)比で約250%となり、先進国の間では記録的な数字となっていたことから、消費税の増税は不可避であった。そして突然世界を襲った新型コロナウイルスはすべてを大きく変えた。これにより、2020年第2四半期の経済成長率はマイナス27.8%にまで落ち込み、輸出量も大幅に減少、訪日外国人旅行業界も大打撃を受けた。


オリンピックと憲法改正が主要議題から外される 

経済以外での安倍首相の成果は、外国人旅行者の増加させたことであり、また首相の個人的な勝利となるはずだった東京オリンピックとパラリンピック開催に向けて成功を勝ち取ったその尽力であろう。一方、首相にとって最大の心残りとなるのは、悲願だった憲法改正を果たせなかったことである。とはいえ、2015年に国会は、日本が攻撃を受けていない場合でも、同盟国を防衛するために自衛隊を海外に展開することを可能にする法案を採択し、2017年には、憲法施行70年を前に、安倍首相は自衛隊の存在を憲法に明記する意向を表明した。

この年、自民党は連立する公明党とともに過半数の議席を獲得し、改憲の可能性を大きく広げることとなった。しかし、世論の機運はこれとは異なっていた。その後、安倍首相はこの憲法改正を東京オリンピック開催の時期に実施しようとしていたが、まずオリンピック自体が主要議題から姿を消し、そして今回、首相自身もその姿を消すこととなった。


安倍首相と新型コロナウイルス

G7諸国の中で、日本は新型コロナウイルスの被害がもっとも少なかった国であったとはいえ、政府の対策は安倍首相自身の責任もあって、あまりにも遅く、政府によるコロナ対策をめぐる決定は国民から激しく批判され、支持率も大きく低下した。政府はコロナ対策に、他の国とは比較にならない、GDPの40%にも当たる費用を拠出した。しかしこのために予定された新規の国債発行は国の債務をさらに増大させる可能性もある。

また安倍首相が発案した国民への10万円給付の施策においても、その手続きに混乱が生じ、さらに1家庭に2枚の布マスクを配布するという政府の決定については、国民の間で「アベノマスク」と揶揄される事態となった。これらすべてによって、安倍首相の支持率はさらに低下し、辞任表明の直前には例がないほど低い数値となっていた。


外交:ほぼすべての国と良好な関係を築いた安倍首相 

一方、外交において、安倍首相は、国内で愛国的な機運の高まりを見せる韓国を除いて、近隣諸国との関係を正常化することができた。解決されないまま残されたのは、北朝鮮の拉致問題である。中国とは、数多くの意見の相違を抱えながらも、関係を改善させ、2012年以降は政治的な対話も発展の兆しを見せた。また今年は習近平国家主席の訪日が予定されていたが、この重要イベントはコロナウイルスの感染拡大で延期された。また対欧州外交では、2018年に首相は欧州連合(EU)との間で経済連携協定を締結し、米国の保護貿易政策に対抗するものとなった。

日米関係においては、依然、大きな意見の相違もなく、安倍首相は日本の首相として正しく振る舞い、トランプ大統領ともきわめて良好な関係を築いた。首相はトランプ大統領の偉大さに疑問を呈さず、加えて同盟国としていかなる争いにも関与せず、米国が他の国々に対して発動した制裁の維持に躍起になることもなく、米中や米露が対立する中でも、中国やロシアとの関係を保とうとする努力を続けた。

一方、ロシアとの関係について言えば、安倍首相は自身が歴史的使命と位置付けた平和条約締結という大きな課題を達成することはできなかった。

元駐日大使のアレクサンドル・パノフ氏は、スプートニクからのインタビューに応じ、「安倍首相はロシアとの二国間関係の牽引力であり、在任中には素晴らしい関係が築かれた。首相はできうるすべてのことをした。安倍首相ほど両国関係の発展を積極的に唱えた首相はいない。次の首相に同じことができるか、この問題についてそこまで熱心に取り組めるかは疑問である」と述べた。


人々が安倍首相をどのように評価しようと、国内でいかに不人気であろうと、安倍首相は豊かな経験を持つ、世界で知られる日本の政治家であり、彼ほどの影響力を持つ首相はいない。そして、もしかすると、首相はまだ自分自身の役割を終えていないのかもしれない。

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