2010.07.13 , 21:14

露投資ファンド、ICQの買収を完了

露投資ファンド、ICQの買収を完了

 ロシアのIT投資ファンド「デジタル・スカイ・テクノロジー」は13日までに、インターネットメッセンジャー(IM)のICQの買収手続きを完了した。

 ICQはイスラエルのミラビリス社が開発したインターネットメッセージサービスで、インストールすることで遠く離れたユーザーとチャットやビデオ通話を楽しむことが出来る。スカイプやマイクロソフト、グーグルなどとの競争が激化するなか、ロシア、ドイツ、チェコなどではトップシェアを誇り、毎月3200万以上のユニークユーザーが利用している。

 同サービスを所有していた米通信大手のAOLは昨年11月から売却を検討し、今年4月までの段階でDSTのほか、ロシアのプロフメディア(ポータルサイトのランブラー、MTVロシアなどを運営)、中国のテンセント(IMのテンセントQQを運営)の3社に絞っていた。資産価格は当初3億ドル(256億円)になるとみられていたが、最終的には1億8750万ドルまで落ち着いている。

 買収に成功したDSTはウズベキスタン出身の大富豪、アリシェル・ウスマノフ氏が共同で出資するITファンドで、国内ではメールサイトのメール・ルー、ソーシャルネットワーキングサイトのオドノクラスニキ、フコンタクテなどを保有。米本家のフェースブックにも一部出資している。いずれも人気サイトだが、オドノクラスニキとフェースブックは最近米国で逮捕されたロシア人スパイも愛用していたことで知られる。

 DSTはロシアで人気のICQ買収により、国内や東欧でのビジネス展開を有利に進めることが可能となる。ミルネル総裁は「地域における地位を強化する上で、素晴らしい可能性をもたらすもの」とコメントした。

 一方でIT専門家は、今回の買収の結果として機能の一部が有料になってしまうことへの懸念を語っている。すでにオドノクラスニキでは新規登録が課金対象となってしまった。IT企業「ウェブプロフィ」のユーリー・マリエンコ社長は、「心配するほどではないが、やはり有料化は避けられない」と考えている。

「課金漬けになると、ユーザーは離れていく。控え目なら、企業を繁栄させることにもなるだろう。

 ロシアはイノベーション市場における本格的なプレーヤーになるべく、資源大国としての縛りから脱却しようとしている。ICQ獲得はそのための一歩ともいえる。

 とにかく、稼ぎたい人が稼げばいいが、あまりに有料サービスの負担が大きくなれば、ユーザーは関心を失ってしまうだろう。」

 ロシアでは人気とはいえ、無料で充実したサービスを展開する競合他社がいる以上、無闇な課金は命取りだろう。一方、IT企業Rテフノのロマン・ロマチョフ社長はこう語る。

「ICQの買収はロシアにとって重要な出来事だ。数千万のユーザーを抱えているのだから。もうひとつ、安全保障上の必要に際して、ユーザーの行動を監視する新たな手段となりえる。こうしたサイトで特定の人物を監視するのは容易だ。ましてや安全が絡んでくる場合にはなおさらである。DSTはネットを監視するためにICQを獲得したとは思わない。ただ、監視はすべての先進国が必要に応じて行っている。」

 現在、サイバー攻撃などインターネット犯罪は世界における重大な脅威となっている。もちろん、国際協力を通じた解決に頼る場合もあるだろうが、自国民が利用するサービスを「国産化」することは、イノベーションの促進に劣らない安全保障上の利点をもたらすことになる。

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