2013.01.11 , 15:42

モスクワにとっての南クリル諸島は日本政府にとっての尖閣諸島と同じ

モスクワにとっての南クリル諸島は日本政府にとっての尖閣諸島と同じ

   日本の有名な政治家森喜朗氏が、日本が自国の「北方領土」と呼ぶ土地、南クリル諸島の問題を解決するために、特命を受けて、再びイニシアチブをとろうとしている。

   先日「BSフジ」のテレビ番組に出演した森氏は、南クリル諸島問題の解決策として自身の考えを提示した。すなわち、最大面積の島択捉のみをロシアに残し、国後、色丹、歯舞を日本がとる、というものである。森氏はごく近いうち、安倍晋三首相の特別代表としてモスクワを訪問する。そこで改めてこの「解決策私案」を提示するということは大いにあり得ることに思える。しかし、とどのつまり、こうした提案が公式になされることはないであろう。菅義偉官房長官は森氏発言の直後、南クリル諸島に関する日本政府の立場は従前の通りである、と声明を出した。すなわち、日本政府は森氏のイニシアチブを支持せず、ロシアに対してはやはり、4島全ての日本への帰属という主張を届けるということだ。「譲歩」として日本は、諸島の「現実の返還の時期については柔軟に」対応する用意がある、としている。

   しかしこうした選択肢はモスクワを満足させるものではない。モスクワの視点によれば、南クリル諸島は第二次大戦の結果ロシア領土に組み入れられたものであり、これを見直す必要はない。しかし自由意志の発露として、モスクワは何らかの譲歩をする用意がある。可能な最大限の妥協としてウラジーミル・プーチン大統領が2005年に提示した解決策が、ロシアが自由意志で日本に色丹と歯舞の2島を返還した後平和条約を締結することを予定している1956年のソ日共同宣言を基礎にする、というものである。そして、これをもって領土問題は一度に、そして永遠に解決される。しかし日本は南クリル諸島全部の返還という主張に固執している。

   この立場は絶対的に非現実的なものである、とモスクワ国際関係大学国際問題研究所のアンドレイ・イワノフ上級研究員は考えている。

   ―ロシアにとっては、第二次世界大戦の結果得られたものを見直す可能性についての問題が届けられること自体が、全く受け入れられないものなのである。ここには地政学的な事情も一役を買っている。南クリル諸島というのはロシアの太平洋艦隊にとって、太平洋への玄関口である。諸島をコントロール下に置き、この重要な海域を制圧するという考えは、1940年代、米国をも魅了した。米国は戦後処理の一環として日本からクリルを獲得し、そこに軍事基地を構築することを夢見た。ただ、日本との戦争にソ連を参加させ、それによって米国の損失を軽減するという喫緊の必要性が生じたために、セオドア・ルーズベルト米大統領は南クリル諸島が将来的にモスクワのコントロール下に置かれることに同意せざるを得なくなった。あにはからんや、戦争終結から数年後、ソ連は米国の敵国になり、日本は米国の同盟国になった。米国は、日本政府の領土返還運動を支持するようになった。そこには、諸島に米軍基地を建設し、海峡をコントロール下に置く、という狙いも含まれていた筈だ。すなわち、必要の際にはロシア海軍の太平洋への出口を封鎖する可能性を手元に置く、という狙いが米国にはあったのだ。

   ロシアから「北方領土」の返還を求める日本政府は、同時に、尖閣諸島をめぐる中国とのホットな紛争を抱えている。日本政府はしかし、尖閣諸島については、領土問題の存在そのものを認めていない。ここで問題になっているのは尖閣諸島の陸棚に眠る化石燃料などではないのだ。日本は中国とこれを分け合うことに同意している。非常に文明的なことに、この天然資源の共同採掘に関する合意が既に結ばれている。しかし、尖閣諸島の一部を中国に明け渡すことさえ、日本市民の大部分には国民的な侮辱と受け取られる。さらに日本政府には、中国がそこに軍事基地を設営するのではないかとの危惧がある。

   同様の危惧をロシアも抱いているのだ。すなわち、南クリル諸島が日本のコントロール下に置かれた場合について。もしもそうであるならば、尖閣問題について日本が中国に対してとっている立場と同様の立場を、いまロシアが取ることも自然なことではないだろうか。

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