2013.10. 4 , 12:17

グリーンピース、かつてのダビデ、今やゴリアテ

グリーンピース、かつてのダビデ、今やゴリアテ

先月半ば、北極圏のバレンツ海で、国際環境保護団体「グリーンピース」の活動家らがロシアの石油プラットフォームへの不法侵入を試み、治安当局に拘束されるという事件が発生した。西側メディアでは、この一件はロシアに否定的なトーンで書かれることが多い。おなじみ「ロシアの前法治国家性」というやつである。しかし・・・

 たとえばカナダの「ナショナルポスト」紙のウェブ版を見ると、記事の直ぐ下に、一般市民からのロシアに好意的なコメントが並んでいる。「ロシアを好きになりそう。まずはオバマで、今度はグリーンピースと来たもんだ」「アナーキストへの正しい対処法」「グラーク(ソ連強制労働収容所)に送り込んで、そこで『エコロジー的観点から無害なライフスタイル』とやらを送らせるがいい。炭酸ガスだの何だのの排出量を極限まで抑えた生活を送らせるんだ。1年後、もしまだ生きてたら、かつまだ『更正して』いなかったら、もう1年同じことを繰り返す。結局、やつらが全人類に望んでいることは、こういうことなんだ」。ちなみに、カナダはグリーンピースの主要な「縄張り」である。そのカナダのメディアに、これほど批判的なコメントが集まっている。あるいは世界中どの国でも、一般市民はこのように思っているのではないか。米国でも、果てはグリーンピースへの一大献金国、いわばグリーンピースの「首都」であるドイツにおいてさえも。

 こうした反応を、一部市民のキザやヒネクレと片付けてしまうことは容易い。しかし、事はそう単純ではない。ドイツの「シュピーゲル」誌は90年代初頭、早くもグリーンピースの活動を追った連載を掲げており、グリーンピースは「油の差された集金マシーン」「PR製造企業」であると喝破している。同誌はある時次のように書いた。「グリーンピースの『つわものども』の、虹の七色の中で最も好む色は、ずばり『黄金色』である」(90年代初頭の社会調査によれば、ドイツ人の目から見て、グリーンピースは純金に次いで魅力的な投機対象であった。その年、ドイツ市民70万人が50マルクからの献金を行っていた)。ドイツだけではない、アングロサクソン系のメディアもまた、「緑の全体主義」を折々批判してきた。NZ紙「メトロ」はある時、「グリーンピースは『環境をめぐる戦いにおけるマクドナルド』である」と書いている。
 ドイツの女性ジャーナリスト、クリスティアネ・コリ氏は、長期の取材の末、次の結論に達した。「小さな緑の英雄ダビデは70年代初め、インダストリアリズムという名の巨人ゴリアテに果敢に立ち向かったが、やがて自らゴリアテになってしまった」。コリ氏は多数のグリーンピース職員(現役ないし元)に取材し、その「抑制なき浪費」「アクショニズム(行動への惑溺。内実を伴わぬ、PR効果とそれによる配当金のみからなる空虚な『エコロジー・ショー』への過剰な熱中)」に幻滅していった。
 比較的つつましやかに活動しているエコロジストたちは、次の事実につとに気付いていた。グリーンピースが、地元レベルで環境汚染と取り組んでいる環境団体の数倍もの利益を上げているのは、偶然ではない。環境保護業界のガリバーは、「ランクの高い」ものにしか手を出さない。たとえば、どでかいクジラや、愛嬌あるイルカたちの保護には取り組む。しかし、ドイツの「末梢」環境保護団体が、ドイツに棲息するハリネズミの一種の保護を求めたところ、「中央」の反応は冷淡なものであった。そこにはマーチャンダイジングという商慣行があるのだ。売れる見込みがないものには、始めから手を出さないのである。「クジラの歌」なるCDを出すとする。その販売利益はグリーンピースのクジラ保護担当課の懐に入る。しかし「ハリネズミの歌」など販売しても、まさか売れないだろう。ならば始めから取り組まない方が賢明なのである。

 報道にも等しく言えることである。報道も政治も一種のマーチャンダイジングである(ただし、より大規模な)。あの日、グリーンピースの「アークティック・サンライズ」号が、ロシアの石油採掘プラットフォームを襲撃した。しかし、あの海域で石油の採掘を行っているのは、ロシアの「ガスプロム」だけではないのである。ノルウェーのスタットオイルも、イタリアのENIも資源採掘を行っている。それなのに、メディアは「ガスプロム」ばかりを槍玉に上げる。「ロシアの北極開発フロントが国際環境NGOグリーンピースに攻撃された!」との西側メディアの報道は、先の例でいう「クジラの歌」と何ら選ぶところがない。喜んで聴く人がいる以上は、一日に10回でも歌うのである。誰がスタットオイルだの、ENIだのに関心をそそられるだろうか?そんなものは「ハリネズミの歌」に過ぎない。



 

 



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