2015.03.18 , 11:29

ゴロフヴァスト提言:自然へ前進せよ

ゴロフヴァスト提言:自然へ前進せよ

国際学術コンテスト「ユーラシア最優秀青年科学者賞2014」人間環境学部門を受賞したのはウラジオストクにある極東連邦代のキリル・ゴルフヴァスト氏である。齢34歳にして論文は100本を数え、モノグラフは5本、取得した特許は14種類。今回のコンテストでは、ナノ・トクシコロジー、すなわちナノ物質の人体への悪影響に関する研究が評価された。医学博士である彼がどうして環境学の研究へ?本人が語った。

「科学には日常から遠く離れた関心分野というものもあるが、それなしには現代生活が悪くなる一方であるような部門もある。いま人類の半分は飢餓に苦しんでいる。40億人以上がきれいな飲料水に不足している。多くの人々が工場付近に暮らしている。産業が環境を悪化させ、健康を害している。科学技術の進歩とは言うが、結果的に人間がそれによって苦しむのならば、一体、そのことに健全な意味などあるであろうか。産業の発展とアレルギーや気管支・肺、心臓・脈管系の疾患、癌の発生率の上昇には相関が見られる。ということは結局、我々科学者は、人間生活の改善に努めながら、むしろそれを悪化させてしまっているのである。つまり、我々は、進むべき方向を違えているのである。人間環境学は、多くのほかの重要部門と同じく、喫緊の問題性を帯びている。私は地上の人間として、先決すべき課題は、いま現に直面している課題、人類の生存がそれにかかっているような課題ということに尽きると思う」

ゴルフヴァスト氏といえども産業革命を否定するわけではない。ただ、企業活動に対する環境学的コントロールを強化しなければならない、との立場である。ゴルフヴァスト氏によれば、市場経済にあっては、多くの企業が利潤をすばやく上げることを追求しがちであり、保護された・清浄な環境というものに投資することを先送りにしがちである。

汚染は至るところで進んでいる。一見したところ無害な石炭も燃焼すると、空気中には炭酸ガスと水だけでなく(学校ではそう教わるわけだが)、水銀やウラン、レアメタルも出てくるのである。

「炭素エネルギーはその有害性において既に原子力エネルギーのリスクに匹敵する。つまり、チェルノブイリやフクシマを引き合いに出すまでもなく、原発事故は恐ろしいものであるが、火力発電所からたえず放出されるものも、それに勝るとも劣らない害毒を人間に与えているのである。

我々は環境学的に清浄な、永久的に再生可能なエネルギー源を追求することも出来たはずなのである。つまり、潮汐であり、風力であり、太陽エネルギーである。水素エネルギーも忘れてはいけない。今のところは高くつくものの、この方向で進んでいくべきだ。石油や石炭やガスをいつまでも当てにしていてはいけない。産業の利益は既に産業の害毒に覆い尽くされてしまっている」

現代医学は既に人体に有害な成分を全て研究し尽くしているかのように見えて、決してそうではない。金という既知の物質が、しかし大量に人体に取り込まれたとき、どのような影響が出るのかということさえ分からないのだから、未知の複雑な化合物については何をか言わんや。

世界の道路にますますはびこる自動車というものも、まさに唾を吐き散らすように、貴金属および希少金属を撒き散らしている。自動車の排気ガスにこそ、毒性微粒子が最も集中して局在しているのである。それが吸気ごとに都市生活者の体内に取り込まれているのである。

「理屈で言えば、新しい車は古い車より安全であるべきである。しかし実際は全然違う。新しい車は古いそれより大気を強く汚染しているのである。部品の嵌め合いで機密性は向上しているのに、部品が擦れ合って微小粒子が撒き散らされるのである。そして排気ガス中には、重金属、クロム、ニッケル、シリコン、触媒からは貴金属、これら全てが薄気味悪いほど高い割合で含まれている。ドイツにはなんと、道路上の埃を集めて、自動車の触媒から出るレアメタル、金や白金、イリジウム、パラジウムを精製する企業まであるのである。部品が完璧にぴたりと嵌った新しい自動車を製造するのが健全なのではないのだろうか」

ゴルフヴァスト氏は有害微小粒子を発見し、その周辺環境への流出を最小限にする方法を模索している。その考案したメソッドは、医学と物理学、化学を複合した、ユニークなものである。

「我々は、既在の、しかしこれまで他の科学分野で使用されていた機材を使う。機材を非標準的なやり方で使うことで、研究の地平と深度を広げることが出来る。たとえば、物理学で使われている、粒子の大きさを測定する機材がある。我々はこれを大気中の浮遊物の研究に利用した。他にも色々な機材を使っている。それぞれの機材が微小粒子の各種パラメーター測定に用いられる。設計者が想定しなかった分野でイノベーティブな使い方で機材を用いることで、これまで見ることが出来なかったものが見えてくる。複数のメソッドを組み合わせることで、我々を取り巻く空間の真の姿を明らかにすることが出来る」

環境を守ることは、今日からでも、そしてお金をかけなくても出来る、とキリル・ゴルフヴァスト氏は言う。なにも洞窟生活に戻れというのではない。しかし、自然と喧嘩してはいけない。結局のところ、自然は人間より賢いのである。

産業の発展と、環境への節度ある態度との間に、バランスを見つけなければならない。自然への回帰ではない、いわば自然への前進が求められる。

  •  
    シェアする