日本は諜報機関を作って「普通の国」になる

© REUTERS / Toru Hanai安倍晋三
安倍晋三 - Sputnik 日本
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日本に自律的な諜報機関が存在しないことで、対外的な脅威への対応が制限されてしまっている。これまで日本は、自前の、そして第一級の諜報機関というものを、強く必要としてはいなかったらしい。

今になってようやく、日本政府は、この不備を是正することを真剣に検討し出した。これまで諜報機関の設置に反対していた野党勢力も、立場を変更させる可能性がある。そのきっかけは、テロ組織「イスラム国」に2人の日本人が拘束され、政府がついにこれを解放することが出来なかったこと。遡れば、2012年7月、ロシアのドミートリイ・メドヴェージェフ首相が、日本と紛争を抱えるクリル岩礁の4つの島のうちの1つを突然訪問し、日本外務省が度肝を抜かれたことがあった。ともかく、今、独立した対外情報機関を創設することに、安倍首相も前向きである。

「日本が普通の国になるためには、諜報機関が必要だ」とする、拓殖大学の川上高司教授にインタビューを行った。

「イスラム国」の日本人殺害事件、チュニジアのテロ、こういうことはこれから先も起きると、十分に考えられる。それに対して日本は、日本独自の情報組織、本格的な情報力がない。これまではいろんな国に協力を仰いでやってきたわけだが、やはりそれだけではどうしても足りない。日本独自の情報網、情報組織が必要になってくることは間違いないと思う。もちろん日本も、外務省を中心に情報収集をやっているが、どうしても、人や組織が欠けている。「普通の国」としては、やはり情報組織が必要になると思う。

このことは、紛争を未然に防ぐということからも必要不可欠だし、また、世界中の、たとえば米国、ロシア、英国、豪州など、色々な国と情報を共有するためにも、こちらから情報を提供し、また情報を頂戴するということが必要になる。日本が将来的に情報コミュニティに入るためにも、本格的な情報指揮が必要だ。

今でも、当然ながら、組織体はある。公安調査庁だとか、また防衛省など色んなところに、情報収集の場はある。しかし、それら機関を一元的に取りまとめたり、もしくは新たな機関を作って既存の機関をそこに入れたりと、色々なことが必要だ。

自民党にも既に部会や会議があり、色々な論議がなされている。それを中核に、日本も近々、情報組織を立ち上げる必要がある。こういう情報組織は、普通の国であれば、国防総省や国務省と同じくらい大事な機関である。日本もそのくらいの覚悟をもって、遅ればせながら、情報機関を作る。それによって日本独自の、安倍首相の言う「積極平和主義」の国に近づくことが出来ると思う。

— 「イスラム国」による邦人拘束・殺害事件に対する日本政府の対応を、情報の収集・分析・発信という観点から、どう評価されるか。

情報収集は、外務省を中心に、持てる情報網を使ってやったが、不充分であったと言わざるを得ない。情報収集のみではなくて、どういう国・機関に情報を提供してもらうか、救出をお願いするかというところの、情報力と、依頼する力、それが足りなかったと思う。日本の国内にも色々と事情があり、日本の場合はどうしても、同盟国に頼らざるを得ない。もう少し日本独自に動けるような情報網、情報力、パイプ作りが必要だと思う。具体的には、ヨルダンに当たったわけだが、果たしてヨルダンだけに最終的に頼るのは正しかったのか。トルコなど他の国にも当たれたのでは。色々考えられるわけだ。そういう選択肢があってどうしてこういうことをしたのかということを、もう一度検証することで、さらによい情報が得られるのではないか。

それからチュニジア。これも、世界規模に広がりつつある、「イスラム国」もしくはそれを支援・協力する組織に対する情報力が、もう少しあってよかったと思う。かなり予測は難しいのだろうが。それから、そこが危険な地域であるということを、もう少し政府は、民間の旅行会社や国民に、警告するべきだったと思う。それから、情報というものには、情報収集、分析、オペレーションがある。そのオペレーションの部分まで、かなり時間はかかるだろうが、将来的に、普通の国として出来るくらいの組織づくりが必要ではないかと思う。

— 国際関係のどのような変化によって今、(従来のように米国依存でない)自立した対外情報機関が必要とされているのか。

やはり米国の相対的なパワーの低下。オバマ政権になって、どちらかというと、外国政策より国内政策に力を入れるようになった。地球規模の米国の影響力の低下が見られる、それに対して日本は、ハード面、つまり自衛力を高めると同時に、ソフト面、つまり情報力を強化する必要がある。米国のパワーが減じて出来た力の「真空」の場所に、「イスラム国」に代表されるテロ組織など、サイバー面を含め、新たな脅威が出てきた。そのとき日本は、米国のみに頼るわけにはいかない。どうしても、自分の力、米国以外の国との協力が必要となってくる。そういことから新たな情報機関の設立が求められるということだ。

— 対外情報機関の創設によって、かえって国際間の不信感を高め、摩擦を強める恐れはないか。

私は逆だと思う。国際間の情報コミュニティに今まで日本が入れなかったということ自体が、「普通の国」ではなかったと思う。情報コミュニティに入ることでかえって、日本というのはこういう国なんだと、存在感を高めることになる。それは摩擦を高めることにはならないと思う。もちろん反対側から見ると、「日本が新たに独自に情報分野に入ってきた」という誤解を招くかもしれないが、日本は従来どおり日米同盟を機軸として活動しているわけだから、そういうポジションをはっきりさせれば、日米同盟の範囲内で十分に国際社会に貢献できると思う。

— 英国の対外諜報機関「MI6」がモデルになり得る、というのは。

なぜ私がMI6 と言ったかと言うと、日本の力を考えた場合、どうしてもヒュミント(対人諜報)の方に比較優位がある。また日本の国民的な特異性を考えると、そちらのほうがより好ましい、近しい機関じゃないかと思う。エリント(電子諜報)ももちろん含めて。議院内閣制という、日本の国のあり方や、日本国民の特異性、特技というものを考え、戦後70年間で「日本は平和的な国」というのが国際社会に認知されてきたことで、そういう友好的なネットワークを使って情報収集が出来たらと思い、あえてMI6ということを言ったわけだ。

自民党内の作業部会は、まだ名称も決まっていないその機関について、夏いっぱい、米国および英国の専門家と協議を重ね、この秋にも計画書を策定することになっている。

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