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    TPP:米国の世界覇権に向けたさらなる一歩?

    TPP:米国の世界覇権に向けたさらなる一歩?

    © AFP 2017/ SAUL LOEB
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    火曜、ハワイで12カ国貿易担当大臣の会合がある。参加は米国、日本、ベトナム、シンガポール、マレーシア、カナダ、豪州、ニュージーランド、メキシコ、チリ、ペルー、ブルネイ。TPPに関する合意のあり方をめぐり合意を目指す。最終的なあり方ではない、またしてもとりあえずのあり方である。しかしその合意は、世界に、または世界の一部に、米国の全能的支配、あまりにも広範な規模のそれを打ちたてかねないようなものなので、たとえとりあえずの会合であっても、注意を払わないわけにはいかないのである。

    今回の会合の課題は、TPPがどのような規則で機能していくのか、と言う点をめぐる対立の輪を狭めることである。気の早いことではあるが、次のことは言えそうだ。TPPをめぐるオバマ大統領の考えを、米国の次期大統領が支持するかどうかは分からない。また、米国議会が支持するかどうかも分からない(TPPは民主党の大半に不人気である)。ともかく、米国は2016年までの合意締結を急いでいる。

    うまくいくかどうか。現時点で対立は4つのキーポイントに集中している。TPPが実現したばあい、医薬品の価格が急激にあがり、著作権・知的財産権に関する法規が厳しくなり、外国企業・投資家が外国政府の決定を無視し、または争う権利を得、インターネットの管理が強まる、とされている。

    ここから早くもTPPの本質がわかる。名称は貿易パートナーシップだが、ここで問題になっているのは、最重要部門のひとつ、サービスの貿易なのだ。世界銀行の調べでは、米国経済の80%、EU経済の75%がサービス部門に占められている。一方で、TPPにわざとのように組み込まれていないBRICS諸国は、世界の商品製造の56%を占める。サービスではない。つまり、ここには「生産者」と「サービス者」、ふたつの世界経済システムの厳しい対立があるのである。ただし、これは誰にとっても秘密ではない。そしてそこから、BRICSおよびそのパートナーたるさらに多くの国々に対するしかるべき関係のとり方が生まれるのである。加えて、もしTPPにおける候補者リストを注視したなら、そこに、米国が非常に強く中国との経済的パートナーの座から引き離すことを望む諸国が見出されるだろう。

    それは何も太平洋地域に限った話ではない。そこには目下米国とEUが審議中の環大西洋パートナーシップにおいても、既成の米・カナダ・メキシコ間パートナーシップにおいても、全く同じ秩序が見出されるのである。それは何を意味するのか。実に、アジアのみか、全世界が、2つのブロックに分けられようとしているのだ。冷戦の日々のように。これで今や、ウクライナの悲劇を含めて、世界で起こる多くのことがよりよく理解されるだろう。ウクライナはまさにこの企ての一部をなしている。つまり、2つのブロックへと逆戻りし、その間に対立を起こそうという企てである。

    中国とそのパートナーたちの戦略はいまのところ、これと正反対だ。現行の世界経済・政治システムを残し、そこにやわらかく組み込まれていき、その枠内で、自らの経済的重みの増大に合わせて、みずからの可能性(発言権、銀行資本における割合その他)を引き上げる。つまり、何らの対立でもない。しかし、見て分かるとおり、米国には事態のこうした推移が不快である。
    ここで医療のようなサービス分野を見てみよう。第一、この問題は今交渉において一番鋭い問題になっているのだから。TPPにおけるパートナーたちは自分の領土内で自分のジェネリック医薬品を製造し、販売することが出来なくなる。つまり、高価なアスピリンのかわりとなる、安価なアセチルサリチル酸(両者は事実上同じものである)である。これについては様々な国の現地新聞にあてて既に多くの憤激の手紙が医師およびその患者らから寄せられている。TPP体制では多くの病人がなすすべなく死んでしまう、というのである。

    ここでTPP創設が成り、それが全く同様の欧州および北米における経済的「自由」圏と連動したらと考えてみよう。何らのAPECも(そこでは中国が強すぎる)何らのEUもWTOも、その他夥しい使用済みのシステム規則もなくなることは明らかだ。つまり、それらは存在しつづけるかもしれないが、その意味合いはミニマムに近づけられる。政府もなくなる。その権力は、いまギリシャに見られるものに近づけられる。欧州の抱擁からは逃れなければならないと分かったときには、何をすることも出来ない。政府は単に無力なのである。

    民主主義とその可能性についての幻想を打ち立てることは止そうではないか。しかしそれでもなお、せめても、民衆の意思、住民投票、議会、選挙その他を期待できよう。しかしもしこれら規則が発効したら、民衆の意思などはあり得ない。苦情を言う相手さえいないのだから。

    当たり前のことだが、TPPにも利点がなければならない。この「支配の指輪」がこれだけ多くの国に、たったひとつの裸のパワーによって押し着せられるとしたら、奇妙なことだ。よって、今、いちばん面白い見世物は、きたるハワイ合意でどのような耐え難い条文が修正され、どのようなそれがそもそも削除されるかというところだ。しかし、これら全ての計画が全面的に葬り去れることを望むのは、あまりにも楽天的だろう。

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