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    米中、対立には向かわず

    米中、対立には向かわず

    © AP Photo/ Ng Han Guan
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    リュドミラ サーキャン
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    火曜、米海軍のミサイル駆逐艦「ラッセン」が南シナ海の人工島周辺、中国が領海を主張する海域に侵入し、巡視を行なった。南シナ海に島は100あまりあったが、昨年までにほぼ全てが海中に没した。昨年中国はそれらのあった場所に、人工の群島を盛んに建設し始めた。大規模な埋め立て作業に続いて、いま中国は滑走路その他のインフラ建設を始めている。こうした動きに対し、米国、日本、東南アジアの一部諸国は、中国は国際物流の通り道にあたるこの海域への支配を強めようとしている、との見方を共有し、中国がこれら人工島周辺の12海里を領海として主張すると、それは国際法違反である、と糾弾した。

    これに中国は予想通りの反応を示す。駐中米国大使が呼び出され、抗議を受けた。続いて中国外務省が声明を出した。それにいわく、中国は人工島について争う余地のない主権を有しており、米軍艦の行動は中国の主権を侵害しており、かつ、地域の平和と安全を脅かすものである。中国紙グローバル・タイムズは米国の振舞を「侮辱的」と規定し、中国政府に対し「米国と戦うことを恐れるな」と呼びかけた。

    中国にとって南シナ海は、輸出入の大半がそこを通る、戦略的ルートである。それを今、米国の第7艦隊が制海している。ところで、中国に劣らず、日本、韓国、ベトナム、フィリピンなどにとっても、南シナ海は重要である。何しろ世界貿易の総量の4分の1にあたる、5兆ドルもの商品が、毎年、この海を通過するのだ。米国の今回の行動を地域の同盟諸国が支持したことも、なるほどとうなずけるのである。

    菅官房長官は次のように述べた。「人工島の大規模建設は一方的行動であり、緊張を高めている。国際社会全体がこれに憂慮を抱いている」。あわせて長官は、米艦の巡洋について、日本と米国は緊密な連絡を取り合っている、とも述べた。またフィリピンのアキノ大統領は次のように述べた。「誰であれ、この海域におけるいかなる航行を制限することも出来ない」。ベトナムは今のところ公式なコメントは出していない。しかし、ベトナムの元外交官で、戦略研究・国際発展センター所長、ヌグエン・ヌゴク・チョング氏は次のように述べている。「ハノイの沈黙は肯定を意味する。しかし中国と数千kmにわたって国境を接するベトナムとしては、強大な隣国の逆鱗に触れないように、慎重であらざるを得ない」。

    次にロシア人専門家のコメントを聞いてみよう。

    極東研究所のアナトーリイ・クリメンコ主任研究員は状況を以下のように見ている。

    「自らの国益を最初に追求し出したのは米国だと思う。米国は地域諸国に対する影響力を確保することを国益としている。この国益を追求するに際して、彼らは複合的な方法をとっている。第一に来るのは、彼らの言い方では、外交である。そして外交を支持するもの、これが軍事力である。アジア太平洋地域においては、その役割を演じるのは米海軍である」

    モスクワ国立国際関係大学軍事政治研究センターのミハイル・アレクサンドロフ氏は独自の見解を示している。

    「むろん駆逐艦1隻で中国を驚かせることなど無理な話ではあるが、この件については米国は繊細な行動をとっている。ロシアとの対立を背景に、米国はアメとムチを使い分け、中国により緊密な協力を迫っている。米国が何より恐れているのは中国とロシアの軍事協力である。ゆえに、地政学的観点から、米国は中国を自陣営に取り込むべく努めているのである」

    専門家の多くが、米国も中国もともに情勢悪化を望んではいない、という点で一致している。米国はあえて中露の軍事的・政治的同盟のための条件を創り出すようなことを望まない。また中国は多くの理由から、米国との直接対決を望んではいない。いずれにせよ人工島を奪うことは誰にも出来ない。おそらく今回の米艦巡視の一件は、中米の相互的、かつ抑制的圧力に終わり、深刻な軍事紛争が起きるまでには至らないだろう。

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