映画「はなちゃんのみそ汁」はロシア人のみそ汁に対する認識を変えた

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映画「はなちゃんのみそ汁」はロシア人のみそ汁に対する認識を変えた - Sputnik 日本
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モスクワの夏の風物詩であるモスクワ国際映画祭も、30日で閉幕した。映画祭期間中には日本映画「はなちゃんのみそ汁」(阿久根知昭監督)が2回、上映された。この映画はコンペ対象ではなく、映画祭のテーマのうちの一つ「セックス・食・文化・死」のカテゴリーに属する一本として選ばれた。

「はなちゃんのみそ汁」は実話をもとにしたストーリーだ。若くして乳がんを患う千恵、それを支える夫や娘のはな、周りの人々の交流が丁寧に描かれた家族のストーリーで、日本では2015年末に公開されている。自分に残された時間が長くないことを知った千恵は「みそ汁だけは作れるように」と、鰹節を削る所からみそ汁のつくり方をはなに教える。

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上映会場には多くの人が集まり、席が足りずに階段に座って鑑賞する人も多かった。驚いたことに、29日の上映会では観客の9割方は女性、特に年配の女性だった。家族の絆と食の大切さをテーマにした映画だけに、女性の関心を引いたのかもしれない。一部の人に感想を聞いてみた。

スヴェトラーナさん「感動しました。テーマは重いですが、その深刻さを表に出さず、明るく描写していました。俳優の演技も良かったです。」

インナさん「ロシア人、日本人という、国の違いを超えて、人間的に共感できる作品だったと思います。苦境に陥ったとき人間としてどう立ち振る舞えばいいのかと考えさせる、良い映画でした。」

マリヤさん「もし身近に闘病している人がいたら、この映画を他人事とは思えないでしょう。最後の方は見るのが辛かったです。ただ、全体的には、優しくてポジティブな映画だったと思います。大事なのは、周囲の人が、いかにヒロインを助け、支えたかということですね。今は、身近な人でも、見捨てるような人もいますし…。」

この映画を通して観客は、伝統的な日本食がどのようなものか知ることができた。ロシアでは日本食レストランが乱立しているが、およそ日本食と言えないようなものを出す店もある。マリヤさんは、みそ汁とは「具のない、水のようなスープ」だと思っていたが、この映画のおかげでみそ汁とは一体何なのかがわかったという。会場では、記者が日本人とわかると、映画に登場した鰹節、みそ、豆腐、野菜などの説明を求められた。日本食に対する関心はとても高いようだ。

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その一方で、モスクワ在住の映画監督・平野均氏は、ロシア人に日本人の感情の機微がどこまで伝わったのか、疑問を呈している。

平野氏「ロシアで上映されている日本の映画には二通りあると思います。一つには商業映画で、ビートたけしの映画のように、一般的に広く観られている映画です。もう一つは、日本では人気があるけれども、ロシアでは通りにくいような映画です。今回の『はなちゃんのみそ汁』もそうですが、日本人しかわからないような精神的なものがあるのではないかと思います。細かい人間関係の描写がロシア(の映画)ではあまりないので、ロシア人には分かりにくいのではないでしょうか。映画自体はすばらしいものですから日本通のロシア人には受けると思いますが、一般人には受けないと思います。」

実際のところ、映画に出てきた細かいニュアンスがどこまでロシア人に伝わったのかはわからないが、少なくとも、一部のロシア人のみそ汁に対する認識が変わったことは間違いない。

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