なぜ北朝鮮の核実験は、それをめぐるパニックほど恐ろしくないのか?

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なぜ北朝鮮の核実験は、それをめぐるパニックほど恐ろしくないのか? - Sputnik 日本
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8月22日、米国と韓国は、北朝鮮に対する予防攻撃を仕上げ、北朝鮮の領土を占拠する目的で大規模な軍事演習を開始した。これに対し北朝鮮側は、例によって米国と韓国を先制核攻撃すると威嚇した。こうしたシナリオは、どの程度現実的なのだろうか? 北朝鮮とその隣国の間の核物質蓄積における、実際の潜在的相互関係はどんなものなのだろうか? 東アジアにおける核パニックは、何によって危険なものとなり得るのだろうか?

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まず単に常識から考えて、北朝鮮が自分の敵すべてを核攻撃するなどという事はあり得ない。それに十分な量の核を準備できないだろう。スプートニク日本のインタビューの中で、非政府組織ライフボート・ファンデーションのメンバーで北朝鮮の軍事問題の専門家ウラジーミル・フルスタリョフ氏は、そう指摘した後、次のように続けた―

「朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮には、兵器用核分裂性物質の2つの源がある。一つは、ヨンビョンの核センターにある25から35メガワットの生産用原子炉で、もうひとつは、2千から4千と、様々にその数が推測される遠心分離機が置かれている濃縮工場だ。おまけに原子炉の作業は一定のサイクルで進んでおり、それは軌道上からの偵察で明らかだ。平均のサイクルは、1年から2年である。そうしたそれぞれのサイクルの後、受け取られた燃料は搬出され、工場で加工される。濃縮ウランの加工には、さらに数週間かかる。しかしその量は、隣の核保有国、中国やロシアが古いストックの形でのみ入手した兵器級物質の量に比べても、微々たるもので、観測誤差のようなものに過ぎない。北朝鮮の主要な敵国である米国の備蓄量と比べても、状況は変わらない。また、すでに保有しており絶えず拡大しつつある韓国や日本の原子炉における『平和目的』のプルトニウムの量と比較しても、その差はやはり何十倍もあり、北朝鮮当局には不利である。」

現在、これまだなかったほどの重い潜在力を持つに至った北朝鮮に対し、隣国達は、同国の核実験にますます厳しく反応している。今年1月6日の核実験後まもなく、韓国セヌリ党のリーダー達は、朴槿恵大統領に、プルトニウムを抽出する目的で核燃料加工の可能性について検討するよう正式に要請した。これは技術的に、完全に行うことが可能だ。韓国最大の新聞「チョソン・イルボ」が公表した分析は、今持っている力を用いれば、韓国は18か月間で核爆弾を製造できることを、極めて詳しい形で物語っている

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自国の核兵器保有を支持する韓国の勢力もまた、米国は東アジアのもう一つの同盟国である日本に、米国から輸入した核燃料を加工し、プルトニウムを入手するのを許可しているではないかと主張している。権威ある雑誌The Bulletin of the Atomic Scientists「原子力科学者会報」のデータによれば、日本は現在、自国領内に約11トンのプルトニウムを持っており、さらに37トンを国外に保管している、とのことだ。同誌の計算では、これは、2千発の核弾頭を製造するのに十分なものである。また同専門誌は、日本が、自分達の核燃料加工工場を青森県の六ケ所村に稼働させるなら、日本は毎年、核弾頭1500発を準備するのに十分な量のプルトニウムを手にすることができると予測している。なおこれは、現在戦闘準備態勢にある米軍の核兵器の数に匹敵する。

これらの国々が核兵器を製造する潜在力は、北朝鮮などよりはるかに大きい。しかし自国のプルトニウムを兵器級に替えることは、彼らにとってそう簡単ではな い。まず米国をはじめとした国際社会が、それを許さないだろう。米国の核の傘の下にあり、完全にその安全が保障された同盟国には、自国の核兵器を保有する 段階まで、北朝鮮の行動を心配する理由はないからだ。

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北朝鮮の軍事問題に詳しいフルスタリョフ氏は「北朝鮮は恐らくすでに、核兵器を保有しているだろう。その射程内には、日本も韓国も入っている。しかし北朝鮮は、罰を受けることなく米国の同盟国に、挑発されることもなく核攻撃をすることはできない。米国は、そのシナリオがどんなものでも『同盟国のために』北朝鮮に報復するだろう。米国に先制攻撃をしたり、米国の核戦力を『根絶やしにする』ような能力は北朝鮮にはない」と指摘している。

北朝鮮指導部の誰の頭にも、隣国を核攻撃する考えはない。そんなことをすれば、数分後には、自分達自身が殲滅されてしまう。北朝鮮の核兵器は、現在もやはり、その敵国の核兵器同様に抑止機能を果たしている。しかし自国の原子力プログラムを兵器級のものへ移行させる韓国や日本の可能性が大きくなるならば、そうした軍拡競争が、この地域の状況が変化した場合、一転して全く予測のつかない結果をもたらすこともあり得ると思う。

著者と専門家の意見は必ずしも編集部の立場と一致してはいません。

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