15:18 2020年05月25日
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北極には未調査の世界のガス埋蔵量の30%と原油の13%がある。これは西シベリアにある埋蔵量と同等である。かつてこれら資源は採掘されなかった。気候変化と氷の溶解により北極時代が到来、北極資源がビッグ・ポリティクスの取引対象になっている。

前世紀、北極は単に子午線原則で分割されていた。それによるとロシアは北極の大部分を有し、米国の分はそう多くなかった。しかし北極は生命なき砂漠であり資源は大掛かりな政治的軍事的傾注に値しないものとされていたため、米国はこれまでそれをそう気遣っていなかった。米国は北極開発を急ぎはしなかった。前世紀はむしろシェールガスに傾注した。今日は状況が変わった。

現在世界は北極を「新たな中東」として受け取り始めている。膨大な炭化水素資源、通年オープンの北極航路、いわゆる北西航路、スエズやホルムスに相当する北の通路と、両者は似通う点が多い。これらの地政学的重要性から間もなく北極が世界の大国の対立の焦点となるだろう。

ここにおける勢力分布はいかなるものか。高等経済学院の専門家によれば、主役はロシア。北極の富の大半がロシアの領海下にあるだけでなく、ロシアに砕氷船艦隊があることがその理由という。

「おかげでロシアはロシア沿岸から離れた航路に船を通すことができる。そうして航路を大幅に縮めることができる。これまでロシアの船舶は岸近くを通っていた。水の表面が凍る時期は湾に入ると、それから半年はそこから出られなかった。しかし状況は変わった。しかも今は船首の形態の異なる砕氷船が登場し、海洋深部に行けるばかりか、そう深くない入り江や河川の河口にも進めるようになった。これで状況はロシアにさらに有利に変わる。しかもロシアにはロシア以外の全部の国の分を合わせたより多くの砕氷船がある。しかもロシアは世界で唯一原子力砕氷船をもつ。これはロシアの国家的達成であり、世界のどこでもそのようなことはやっていないと言ってよい。この核のパワーをもった巨大な船にはいかなる氷も北極の冷たい水も怖くない。岸に沿ってでなく北に直進していくさいには原子力砕氷船にかわるものは世界にない」

米国は北極におけるロシアの優位性を深刻に認識している。米国は北極における遅れが戦略的敗北となることを懸念し、そのためこの地政学的地域にこれから10年で150億ドルを投じる計画。まずはロシアばかりか他の多くの北方諸国におくれを取っている砕氷船艦隊だ。ここにおいて米国を助けてくれ、大幅な遅れをちぢめてくれるような同盟国は見出せるのか?

「北極大国のうちでロシアと対抗しうるのが米国だけであろうということに疑いはないが、米国には砕氷船艦隊がない。しかしアジア太平洋地域の同盟諸国、韓国と日本が助けてくれるやもしれない。両国は長らくタンカーの建造を行っており造船技術はかなり高い。しかし氷の中を、北極圏を進めるような砕氷船は作っていない。ゆえにロシアはやはり大いなる先手を取っており、ロシアの課題はそれをキープすることだ。しかし危機の中ではそれは容易ではない。北極は莫大な投資を必要としている。非常に効果的で、かつ、数十年後にようやく利益が出るような、長期的な投資が。あえてロシアの造船に投資するリスクを取りうるのが中国だ。中国はほとんどすでにそれを実行している。中国はロシア極東の「ズヴェズダー」工場の資金を融通し、そこでは既に最初の石油タンカー砕氷船が作られている」

中国自身砕氷船を作っているが数量はまだ少ない。しかしそれが作られていることそのものが、北極への関心の高さをうかがわせる。北極航路はアジアと欧州をつなぐ最短航路であり、スエズ運河経由で日本と欧州をつなぐ道より40%も短い。これを通れば中国の安い商品が欧州にあふれかえる。欧州市場は今や米国市場より巨大である。

今日は韓国さえ砕氷船の建造に取り組んでおり、一見北極に関係なさそうな国々さえ北極に関心を高めていることをうかがわせる。

日本も北極戦略を発表した。資源の枯渇を目前に、新たなエネルギー資源の獲得先の発見と開発が要求されている。しかし韓国と中国は日本よりさらに早く北極のゲームのルールを定める北極評議会に名乗りをあげた。日本は今、自身も北極問題についてアウトサイダーではないということを示すことが重要になっている。

それをロシアが助けられるかもしれない。北極海のロシアの大陸棚にあるエネルギー資源は中東のそれと違い完全に安全だ。それを採掘し、問題なく日本に送ることが出来る。北極航路を通年利用できる可能性は日本の投資を北極プロジェクトに呼び込むかもしれない。

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