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    人は変わり得る存在?死刑廃止の潮流はなぜ生まれたか、日露の事情

    人は変わり得る存在?死刑廃止の潮流はなぜ生まれたか、日露の事情

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    徳山 あすか
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    今日、世界で死刑制度を維持している国は少なくなりつつある。ロシアのように、制度としては死刑が残っているものの、事実上執行停止されている国も多い。日本弁護士連合会(日弁連)は、来月に福井県で行われる人権擁護大会で、死刑制度の廃止を含む、刑罰制度全体の改革を求める宣言を提案する予定だ。

    死刑というテーマが人権擁護大会で取り上げられるのは、これが初めてではない。日弁連は2011年の大会で「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける」宣言を採択した。この根底にあったのは、死刑のない社会が望ましいという考え方だ。それを受けて様々な議論が行われている最中の2014年、日本最大の冤罪事件とも言われる「袴田事件」の再審開始が決まり、袴田巌さんが釈放された。

    日弁連の二川裕之(ふたがわ・ひろゆき)事務次長は、経緯について次のように話している。

    二川氏「2011年以降、各弁護士会の中で死刑制度について考える委員会を立ち上げたり、国会議員や報道関係者との議論、海外調査などを積み重ねてきました。この間に2つの大きな流れ、死刑執行をしている国が少なくなってきているという国際的な潮流と、目立った冤罪事件が出てきました。もちろん冤罪の場合に死刑を執行すると取り返しがつかないことになります。このような大きな流れを受けて、あらためて死刑制度を人権擁護大会の大きなテーマとすることにしました。

    議論は積み重ねてきましたから、今回は全社会的に議論を呼びかけるだけではなくて、もう一歩進めたもの、日弁連としてある程度はっきりした『国連犯罪防止刑事司法会議が日本で開催される2020年までに、死刑制度の廃止を目指すべきである』というスタンスを打ち出したのです。」

    日本の歴史に詳しいモスクワ国立国際関係大学・東洋学部長のドミトリー・ストレリツォフ教授は、刑罰緩和というアイデアはヨーロッパで生まれたもので、日本の刑罰システムの伝統には、犯罪者の権利の擁護という概念がなかったと指摘している。またストレリツォフ教授は、日本は国際社会から圧力をかけられており、大国として死刑廃止という世界的な潮流を考慮せざるを得なくなっていると見ている。いっぽう二川氏は、日本国内の議論や冤罪の恐怖が高まっていることを指摘し、世界的な潮流と日本の国内情勢は、死刑廃止の流れに同程度の比重を占めているという見解を示している。

    死刑が制度として存在しているにもかかわらずロシアで執行されていない理由は、「再犯を防ぐことにつながらない」という認識があるからだ。死刑は常に議論の的になっており賛否両論あるが、プーチン大統領は2013年の国民との対話において「死刑を復活させても、犯罪者が更生するわけでもなければ、犯罪率が下がることもない」と述べている。昨年春には右派で知られるロシア自由民主党の議員が、テロ実行犯と麻薬中毒者に対して死刑を復活させるよう求めたが、議会はそれを拒否した。

    もし日本で死刑制度が廃止された場合は終身刑がその代替刑となる。しかしその中身については、仮釈放の可能性の有無や時期など、専門家の間でも意見が分かれているのが現状だ。日弁連の今年の提言では、死刑廃止だけではなく、刑罰制度そのものの改革や、受刑者の再犯防止と社会復帰のための法制度についても触れられる予定になっている。例えば懲役刑と禁固刑を「拘禁刑」という形で一元化し、強制労働ではなく賃金制を採用する、あるいは受刑者を閉じ込めるよりも社会の中で処遇するといったことが提案される見通しだ。

    これら提言案の根底にあるのは、「犯罪者をとにかく刑務所に入れればよいというものではない。人間は変わり得る存在だ」という価値観である。犯罪を犯した人にもきちんとした処遇をし、彼らを社会に復帰させる。日弁連は、このような方向に刑罰制度全体がシフトしていくべきである、という理念をもっている。

    なお記事の中で述べられている見解は、必ずしも編集部の立場とは一致していません。

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