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    被害者学専門家「苦しみは一生続く。死刑に関する日本の自己決定、尊重されるべき」

    被害者学専門家「苦しみは一生続く。死刑に関する日本の自己決定、尊重されるべき」

    © AP Photo/ Itsuo Inouye
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    徳山 あすか
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    スプートニクでは日弁連の死刑廃止提案を受け、日本の死刑制度の行方について伝えてきた。今回は臨床心理学の専門家である、常磐大学国際被害者学研究所教授・研究所長の長井進氏に、被害者からの立場で話を伺った。長井氏は二十年以上もの間、事件の被害者や殺人事件の遺族と面談を重ね、サポートを行ってきた。

    世界的な潮流として死刑廃止国が増えていることについて長井氏は、「世界の流れに合わせて日本も同調する、という風に単純に考えなくてもよい。諸外国の自己決定が尊重されるのと同じように、日本の自己決定も尊重されるべき」との見方を示し、遺族や犯罪被害者が、死刑制度の廃止を求める日弁連の主張に同意するとは思えないと述べた。

    長井氏「『加害者にも人権を』と言うのであれば、まったく同等の人権を被害者にも与え、重みを持たせて当然ではないかと思います。死刑制度廃止を推進している人々は、被害者の立場を共感的に理解しているのでしょうか。刑事弁護人は次々と被疑者・被告人の利益になるようなことを述べたり、助言したりしますが、その行為そのものが被害者の心情を大いに傷つけたり、不信感を与えたりして、二次被害を与えています。一般に、二次被害は過敏な被害者心理のみによって引き起こされるものではなく、被害後に直面する現実を通して体験されるものです。

    2001年に大阪で起きた、大教大付属池田小児童殺傷事件を含め、これまで数多く殺人事件の遺族の体験談をうかがってきました。刑事司法制度、司法関係者、報道関係者を含む多様な人々によって、『二次被害を受けない被害者はいない』と言っても過言ではないでしょう。遺族の心情を理解するには、遺族が直面する過酷な現実を理解することが不可欠です。社会に被害者問題を訴え続けている犯罪被害者は全うな善悪の判断基準をもった方々で、法律的にも何の落ち度もなかったのです。家族がたまたま殺人事件の被害者になってしまった遺族は、思ってもみなかった理不尽な現実に直面させられています。

    何の落ち度もない被害者が殺害されてしまった場合、遺族は固有の罪悪感を抱き、自分が生きている限りずっとその亡くなった家族の無念、現実の理不尽さに思いをめぐらせ、その悲しみや苦しみが消えることは一日たりともありません。その観点からも、死刑廃止に関する国民の議論が本当に高まっているのかどうか問いたいと思います。国民は、被害者等がいかなる現実に直面するのか、それによっていかなる心情を抱かせられるのかをもっと深く理解し、犯罪と被害の現実をバランスよく認識することが大切です。それなくして死刑存廃を判断すべきではないと思います。」

    しかし長井氏自身、殺人を犯した人が全員死刑になるべきだと思っているわけではない。「死刑の存廃については国が責任をもって調査し、国民全体が決めるべき」としている。内閣府の2015年基本的法制度に関する世論調査では、死刑制度について「死刑は廃止すべきである」と答えた人が9.7%、「死刑もやむを得ない」と答えた人が80.3%だった。「死刑もやむを得ない」と答えた人のうち、その理由として一番多かったのは「死刑を廃止すれば,被害を受けた人やその家族の気持ちがおさまらない」というもので、53.4%だった。別の設問では、「仮釈放のない終身刑が新たに導入されたら死刑を廃止する方がよい」と答えた人は37.7%で、「終身刑が導入されたとしても死刑を廃止しない方がよい」と答えた人は51.5%となっている。

    日本の世論調査については賛否両論があり、世界最大の人権NGO「アムネスティ・インターナショナル」のキアラ・サンジョルジョ氏は、日本政府は自らの行動を正当化するために世論の死刑支持を利用していると見なしている。また同氏は、日本の世論調査は質問の仕方が正しくないため、必ずしも信ずるに値するものではない、とも述べている。

    一方、加害者へ目を向けてみると、特に死刑存廃問題を語る際にテーマとなるのが、更生の余地があるのかどうかという点である。人は立ち直れる存在であるという大前提に立ち、交通事故事件や少年事件等の遺族が刑務所や少年院で自らの辛い経験を話し、受刑者の更生を促すというプログラムもある。しかし、ある遺族は「法務省や刑務所の活動の社会的な評価を高めるために自分たちはうまく活用されているだけ。実際のところ活動をしても、受刑者が更生するかどうかは全く別だ」と漏らしている。

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