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    日本のTPP加盟、利益とリスクはどちらが大きい?

    日本のTPP加盟、利益とリスクはどちらが大きい?

    © AFP 2017/ Saul Loeb
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    安倍首相は国会に対し他国に先駆けて環太平洋パートナーシップ協定(TPP)合意を批准するよう呼びかけた。こうした性急な呼びかけは11月8日に米大統領選挙が控えており、この選挙で状況が複雑化する恐れがあることに起因している。

    実は次期大統領候補であるヒラリー・クリントン氏とドナルド・トランプ氏はTPP合意の批准に異議を唱えている。その一方で日本はTPPに大きな期待をかけている。日本がTPPに加盟した場合、利益につながるというのは何が一番の根拠なのだろうか?

    ロシアの雑誌「エクスポルト」の金融アナリスト兼経済論説員のアンナ・コロリョヴァ氏は、TPP加盟で日本は何よりもまず経済成長の新たな源を模索できるとして、次のように語っている。

    「日本は経済の抜本的構造改革の必要性を認識しています。一方でTPPは日本にかなり大きな優遇を約束するものです。これが出来れば陣営は最高で国際貿易の40%を操作することになり、貿易経済オペレーションを行うためにまったく新たな条件が生まれるでしょう。日本経済はIT化されています。ですからこうした統合プロセスから外れるわけにはいかないのです。関税の障壁が除去されれば外国製品の価格は下がります。これは国民の消費力の向上に非常にポジティブに影響し、ここ数年で、中国に対して日本が失ってしまったポジションもかなり回復するでしょう。」

    これはTPPに貿易の意味にもまして地政学上の意味を持たせている。つまりTPPに加盟していない中国を追い越し、太平洋地域で圧倒的な優位を誇る中国の役割に釣り合うパートナーシップを作るのだ。

    コロリョヴァ氏「以前日本はアジアでは長年にわたって統合者としての役割を務めてきました。日本は隣国諸国の経済にかなり巨額の資金を注ぎ、活発な貿易を展開してきたのです。ところがここ最近はこの役割は多少トーンダウンしています。これはひとつには日本経済が弱体化したことが原因であり、さらには中国の立場が強くなったこともあります。中国は決してぼんやりすることなく、方法論的にアジア太平洋地域における自国の影響力を拡大しています。このため日本にとっては地域での中国の役割伸張にある意味で対抗するような異なるアプローチをとるほうが得策なのです。」

    だがこの道では日本に立ちはだかるリスクは少なくない。このリスクに反対派が集中するのも十分根拠がある。

    コロリョヴァ氏「 TPP反対派が挙げる主要な論拠のひとつに未だに合意プロセスがかなりの部分、隠されたままであることがあります。利益につながるという大まかなせりふを除いては詳細は一切世間に公開されていない。だがこれは非常におかしな話であって、欧米間のTTIP合意交渉のプロセスと同じではないかとかんぐらざるをえません。TTIPでも長い間何の詳細も明かされませんでした。ですがインサイダー情報のおかげで中身が少し漏れるやいなやものすごい騒ぎが持ち上がりました。TPPでわかっていることも疑問を呼んでいます。合意の26項目のうち貿易に直接関係するのはほんのわずかしかなく、その大半がグローバル企業に特恵を付与することに割かれています。つまりグローバル企業の利益が優先されているわけです。この一方で中小企業はものすごく大きな打撃をうけることになります。これは重要な問題ですが、未だに事前の取り決めはなされていない状態です。」

    TPP交渉がなぜこれだけ厳重に社会には公開されずに行われているのか、TPPの実現で実際一番得をするのは誰なのだろうか?

    コロリョヴァ氏「得をするのはいつものことながら米国です。パートナー交渉は長年にわたって行われていましたが、これが活発に発展し始めたのはアジアにおける自分のポジションに恐怖感を覚えた米国が加盟を決意してからでした。

    ところで『タナカ・ニュース』といえば反体制派の情報インターネットリソースとしてポジショニングしていますが、この『タナカ・ニュース』の調べでは日本がTPP加盟で得る利益は向こう10年のGDP成長率でわずか0.05%です。

    一方で米国の自動車大手は日本市場におけるアピアランスを5~26%拡大しようと狙っています。このようにして日本の大企業でさえもTPP加盟によって得る利益はそう目立ったものではありません。他のリスクも存在します。農産品市場です。もし日本が今ある条件で合意を結んだ場合、主要農産物の生産は40%落ち込みます。ですから日本の農業セクターは大打撃を蒙るでしょう。」

    コロリョヴァ氏はほかにもTPP交渉がWTOの役割の弱体化を背景に進行していると指摘している。また国際貿易がさまざまなセクターごとに分割される傾向も認められる。第1に近隣諸国どおしという地理的原則で分かれる傾向があり、これも国際貿易全体にとってリスクとなっている。

    コロリョヴァ氏「新たな貿易陣営が出現すれば、そのルールはWTOのそれと真っ向から対立する恐れがあります。アジアのパートナーらは新たな陣営で一番手近なアジア市場に焦点を絞るでしょう。そうなれば彼らは特権的立場にたたされ、ここから困難な状況が生じ、世界全体の貿易ルールに抜本的な変化をもたらす恐れがあります。つまりこれはWTOに関わるあらゆる合意が再検討に付される恐れがあるということです。こうなると問題はもうグローバルリスクのひとつになりかねません。」

    このようにアジア市場にターゲットを絞ったTPPの将来性は十分大きくプラス面も多く期待できそうだ。それでもこれに向かうには日本は多くの約束事を取り付け、幾度も計算を繰り返さねばならず、政治闘争の枠内に限定せず、エコノミストらによる入念かつ詳細な作業が行われねばならない。

    なお記事の中で述べられている見解は、必ずしも編集部の立場とは一致していません。

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