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    プーチン氏は急に日本に冷たくなったのか?日本メディアが伝えない大統領の真意

    プーチン氏は急に日本に冷たくなったのか?日本メディアが伝えない大統領の真意

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    徳山 あすか
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    13日、読売新聞と日本テレビが7日に行ったプーチン大統領へのインタビューが公開された。大統領は15日の日本訪問を前に、ロシアの立場について率直に質問に答えた。長いインタビューの中でプーチン大統領は「日露間に平和条約が存在していないことは時代錯誤」だとする一方、「ロシアにはどんな領土問題も存在しない、日本がロシアとの間に領土問題があるとみなしている」といった、日本にとってショッキングな発言もしている。

    スプートニクはロシア政治に詳しい新潟県立大学の袴田茂樹教授に話を伺った。今回の会談で領土問題が前進することを期待する日系メディアが多い中、袴田氏は以前から「プーチン大統領は領土問題で日本に譲歩できる状況ではない」と、冷静な見方を示してきた。

    袴田氏「今回のプーチン大統領の発言は、日本にとっては厳しい内容だったと思います。これは既に予想していた通りで、全く驚いていません。プーチン大統領は、日本との間に領土問題は存在しないとはっきり述べましたし、両国の間に平和条約を締結する基礎はまだなく、これを急いではならないと言っています。」

    日本の中には、プーチン大統領も安倍首相も国民の支持率が高いので、強力なリーダー同士であれば政治決断で領土問題を解決できるのではないか、と期待する声があるが、袴田氏はその見方を否定している。

    袴田氏「プーチン大統領の支持率が、もしロシア経済の好転、国民の生活水準向上、汚職の撲滅などによって高くなっているのであれば、領土問題である程度の譲歩をすることも可能かもしれません。しかし、そうではないのです。2011年には反プーチンデモや集会が何万人という規模で行われていました。その後、ロシア経済や社会情勢は好転するどころかむしろ悪化しているのに、あるときプーチン大統領の支持率は9割近くにまで上がりました。その理由はクリミア併合です。彼は『失った領土を取り戻した大統領』として、ロシア人のナショナリズムを満足させました。クリミアという領土を取り戻した大統領が、日本に譲歩したり、自国の領土だと主張している南クリルを簡単に日本に引き渡したりすることはできません。それを彼はインタビューの中で『私には高い支持率を乱用する権利はない』という表現を使って述べています。」

    さて、インタビューでプーチン大統領は、日本が対露経済制裁に加わったことを非難した。訪日前のタイミングで、急に日本に対して態度を硬化させたかのように見る向きもあるが、袴田氏は「プーチン大統領の日本に対する考え方は日本が対露制裁に加わる以前から変わっておらず、ひとつの口実にすぎない」と指摘する。

    袴田氏「例えばプーチン氏は首相だった2012年3月に日本メディアの取材に答えた中で、『ヒキワケ』という柔道用語を使い、両国の外務省に『ハジメ』の合図を出しましょう、という主旨の発言をしました。このことから日本のメディアも首相官邸も、彼が再び大統領になれば領土問題が前進するのではと期待を抱きました。しかしプーチン氏はヒキワケ発言をすると同時に、56年宣言(日ソ共同宣言)で歯舞・色丹の二島が日本に引き渡されるとしても、この宣言には、引き渡された島の主権がどこの国のものになるか、そしてどのような条件で引き渡されるのかは書いていない、という硬い発言をしました。つまり、引き渡し後も主権がロシアに残る可能性がある、ということを示唆したわけです。これらの発言は同じ取材の枠内で行われたにもかかわらず、日本メディアは、プーチン氏の強硬発言を一切報道しませんでした。彼が領土問題で日本に譲歩するつもりが全くないということは、以前から分かっていたことです。」

    今回の首脳会談のトピックとして話題になっているのは、ビザなし訪問の枠の拡大と四島での共同経済活動の実施可能性である。現状、日本人の元島民は自由に故郷を訪問することができない。年に数回の墓参、ビザなし交流、自由訪問の参加枠に入れなければ、実質他の訪問手段はない。プーチン大統領は、日本人の元島民がビザなしで自由に行き来できるようにすることは十分あり得る、政治的な制限は見受けられないとしている。

    しかし共同経済活動を行うとなると、どの国の法の下で行うのかということが問題だ。プーチン大統領は、四島における経済活動を日本の主権下で行うことが最初の一歩なら、二歩目は不要であると述べている。日本政府も、ロシア法の下では共同経済活動はできないという立場だ。袴田氏は「訪問枠の拡大でビジネスマンがビザなし訪問に参加できるようになったとしても、具体的な経済活動ができるだろうか」と疑問を呈する。元駐日大使のアレクサンドル・パノフ氏が提唱するように、日露が共同で法律を立案し、その法律が効力をもつ経済特区を新設するという案もあるが、袴田氏は「現実性がなく、大変難しい」と見る。

    プーチン大統領は、日本の信頼レベルは中国との信頼レベルまでには達していないのか、との問いに対し、シリア情勢やウクライナでの出来事は日本や日露関係には関係ないにもかかわらず、なぜ対露制裁に日本が加わるのか、と批判を展開した。袴田氏はこれに対して「日本に関係がないとは言えない」と異を唱えている。

    袴田氏「私は、クリミア問題はウクライナの主権の侵害だと見なしており、北方領土問題も日本の主権の侵害だと思っています。もし日本がロシアによるクリミア併合を批判しなかったとしたら、日本は北方領土問題で自国の立場を主張したり、南シナ海を自国の領海のように主張する中国に反対したりする権利も失うでしょう。クリミア併合は、住民投票こそありましたが、ロシア軍の管理下で行われたことであり、ウクライナ政府も議会も認めていない住民投票は公正なものとは言えません。日本は、ロシアによって主権が侵害されているという風に北方領土問題を捉えているわけですから、G7の中で、ウクライナの立場を一番理解できるのは日本ではないかと思っています。」

    袴田氏は、日本にとって脅威となるのはむしろロシアよりも中国であり、核実験を繰り返す北朝鮮や、韓国も含めた周辺国との関係を考慮すれば、長期的・戦略的にロシアとの関係を改善させることは日本にとってプラスになると考えている。明日15日から始まる日露首脳会談。両国の思惑が交差する中、安倍首相が言うところの「新しいアプローチ」は、停滞してきた領土問題に一石を投じることができるのか、間もなく明らかになる。

    なお記事の中で述べられている見解は、必ずしも編集部の立場とは一致していません。

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