トランプ新大統領は我々の「暗鬱な生活」に彩を添えることになるか?

© REUTERS / Mark Kauzlarichトランプ新大統領は我々の「暗鬱な生活」に彩を添えることになるか?
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2017年の新年を前にドナルド・トランプ氏は、 謙虚ぶるようなそぶりもなく、自身のツイッターに「世界は、私が勝利するまで暗く沈んだ物憂いもので、いかなる希望もなかった」と書き込んだ。1月20日から、つまりトランプ氏が米国の新大統領になれば、この国の政治史上に新しいページが開かれる。トランプ新政権の誕生と共に、国際政治にどのような変化がもたらされるだろうか? また果たして世界は「暗鬱さ」から抜け出し、元気で明るいものになるのだろうか?

トランプ氏 - Sputnik 日本
トランプ氏はオバマ大統領のアジア回帰を終わらせるか?
米国内自体で、トランプ氏は、オバマ時代に決められた法律の70%までを取り消すと約束した。そうした動きはもう始まっている。米上院は、保健医療制度改革である所謂オバマ・ケアの廃止手続きに着手した。全体としてトランプ氏は、国内の経済発展に力を集中し、自分達の安全保障に応分の負担をしようとしない同盟国の支援をストップし、さらに米国にとって死活的に重要な利益のない国々への干渉を止めるべきだと訴え、プラスをもたらさない同盟や条約からは撤退するのだと脅迫めいた主張をしてきた。

欧州は、トランプ氏の勝利と共に、NATOの運命をめぐり、極めて大きな不安、そして米国が環大西洋貿易投資協定(TTIP)締結交渉から抜けるリスクを経験した。しかしトランプ氏は、NATOのストルテンベルグ事務総長との最近の会談で「NATOという軍事ブロックは、平和の保障と国際テロリズムとの戦いにおいて評価してもしきれないほど重要な役割を演じている」と述べた。

スペインの政治学者アルマンド・フェルナンデス・ステインコ博士(Dr. Armando Fernandez Steinko)は、次のようにみなしている-

「トランプ大統領は、今後も今の規模で自分達の軍隊を財政的に支えてゆく力が米国にはもうないことを認めている。この事は、現実が裏付けており、それは、トランプ氏のファンタジーの中にもやはり存在していると私には思える。ではそれは一体、何をもたらすだろうか? それはNATO内における著しい緊張であり、国際関係における大きなプラグマチズムである。トランプ新大統領にとっての危険は、彼が有権者に大変多くのことを約束し過ぎたことにある。有権者は彼に、今や大きな期待をかけているが、彼は自分がした約束の大部分を遂行できないだろう。」

国内の政争は米国の「偉大さ」の助けにはならない - Sputnik 日本
国内の政争は米国の「偉大さ」の助けにはならない
一方TTIPのリスクはどうかというと、トランプ氏に起因するというより、欧州自体の中にある諸問題に関係している可能性が除外できない。

さてロシアだが、多くの人々が、トランプ氏の登場により、露米関係は温暖化するのではないかと期待している。実際トランプ氏は幾度となく、プーチン大統領に関し肯定的な発言をしており、ロシアとの友好的関係を復活させ、テロリズムとの戦いで協同行動を確立すべきだと主張してきた。そのため米国内の反トランプ勢力は、彼を危うくすっかり「食いつくしてしまう」ところだった。今のところ、米新政権の側からは、重大なシグナルは出されていないが、それに向けた前提条件はすでにある。以前スプートニク通信が伝えてきたような解決不可能な矛盾はない。では日本ではどうか。日本では、トランプ氏勝利による懸念は主に、日米軍事同盟の将来、TPPの運命、そしてもちろん日本国内にある米軍基地と結びつけられ、捉えられている。スプートニク日本のリュドミラ・サーキャン記者の取材の中で、ロシアを代表する日本学者で歴史学者の一人、ロシア人文大学のアレクサンドル・メシチェリャコフ教授は「米国を批判している日本人は多いが、基地なしに、また自主的に考え行動する日本なしに、自国の安全を保障することは難しいだろう」と見ている。

またスプートニク日本記者のインタビューに応じた、ロシア極東研究所日本調査センターのウラジーミル・グリニュク主任研究員は「露米関係の間で日本の首相がバランスを取るのは容易なことではないだろう」と指摘し、さらに次のように続けた-

「安倍首相は、二つの互いに排他的な方向性の間を巧みにすり抜けてゆくだろう。彼は一方で、ロシアとの関係発展を断固進める意志を示しながら、もう一方で、米国との同盟関係を保ち、G7のメンバーであろうとする。」

昨年11月に行われたトランプ氏との初の会談は、安倍氏を安心させたようだった。20日金曜日、安倍首相は、できるだけ早期に、定期会合のため米国を訪問する計画を決めたいと述べている。

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クレムリンの極東政策とトランプ・ファクター
主要国の中で特に、トランプ政権発足に神経を尖らせているのは、何といっても中国である。トランプ氏は、前任者のオバマ氏について「彼は、戦略的に重要な南シナ海を含め、中国政府の積極的な拡大政策に対し、あまりに弱腰だった」と非難した。ロシア科学アカデミー東洋学研究所東南アジア・豪州・オセアニア諸国調査センターの責任者、ドミトリイ・モスィャコフ氏は、スプートニク日本記者のインタビューに応じ、次のように指摘している-

「トランプ氏は、いかなる国際紛争に米国が参加し続けるか、どんな紛争は参加を見直すか、あるいはそもそもリストから外すかを自分で決めている。現在中国は、米国の主要なライバルであり、南シナ海問題は、中国政府に圧力をかけるための格好の材料となっている。」

とはいえ、トランプ氏が選挙戦の間に述べた反中国的発言のすべてが、現実になると考えるべきではない。例えば、中国製品に保護関税を導入するとの脅迫めいた公約は、おそらく実行されないだろう。そうした措置は、世界貿易にとって破壊的あるばかりでなく、実に馬鹿げているからだ。米国への中国の輸出4800億ドルのうちの大部分は、多国籍企業の製品なのだ。製品の中には、米国や日本そして韓国の技術やコンポーネントが含まれている。中国では、その組み立てが行われるだけである。

トランプ新大統領の国際舞台での最初の措置がどんなものになるか、春にブリュッセルで開かれるNATOサミットで、イタリアで5月に予定されているG7首脳会談で判断できるだろう。もちろん、トランプ新大統領が、それらに出席するならば、という条件付きではあるが。

 

 

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