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    色々な種類のカルバサ

    ロシアの肉が日本で手軽に食べられる日は来るか?

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    徳山 あすか
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    ロシア農業監督庁が発表したところによると、現在日本の農林水産省の担当者らがロシアに滞在しており、ロシアの鶏肉生産システムを視察し、ロシアからの鶏肉が日本へ入ってきた場合のリスクについて評価する予定だという。

    スプートニク日本

    スプートニクではこれまで、ロシア産バターロシア産大豆など、日本への食品輸出の可能性についてお伝えしてきた。そこで今回は肉の輸出可能性について考えてみたい。現在、ロシアでは牛肉は多くを輸入に頼っているが、鶏肉と豚肉については十分な生産能力がある。2000年から2015年の間に鶏肉の国内生産は8倍、豚肉は5倍になった。ガスプロム銀行・経済予測センター長のダリヤ・スニトコ氏は、ロシアの食肉生産は、飼料を国内でまかなえること、水資源が豊富にあること、人件費が中国を下回ることから見て、国際競争において有利だという見解を示している。

    ロシアには国立の食肉科学研究所があり、食肉に関する基礎・応用研究が行われている。同研究所からの講演依頼を受け、北里大学獣医学部の有原圭三教授は2015年の年末にロシアを訪れた。有原教授は食品やペットフードを研究するとともに、研究成果を社会に還元するため、大学発のバイオベンチャー企業「株式会社フード・ペプタイド」を立ち上げて代表取締役をつとめている。

    ロシアは国として鶏肉・豚肉の輸出を拡大したい意向はあるが、まだ手探り状態である。美味しいだけではなく、健康によいなどの付加価値がついていなければ、世界の市場で勝ち抜いていくのは難しい。そこで機能性食品に詳しい有原教授のような専門家のアドバイスを参考にし、世界に通用する商品開発の可能性を模索しているというわけだ。

    有原教授(右)とアンドレイ・リシツィン食肉科学研究所長
    © 写真: Keizo Arihara
    有原教授(右)とアンドレイ・リシツィン食肉科学研究所長

    講演後、ロシアの食肉加工工場やスーパーを視察した有原教授は次のように話している。

    有原教授「設備が日本の大手メーカーと比べて劣っているということはなく、肉そのものの品質は、かなり良い線をいっていると思います。製造機械の多くはドイツ製で、食肉加工技術もドイツから導入していますから、その影響を受けてオーソドックスなものをきちんと作っているなという印象を受けました。美味しいハム・ソーセージも楽しみました。」

    筆者としては心の中で「教授が案内されたのは良い工場で、特別高級な肉だったのだろう」と思うわけであるが、有原教授は「色々な国に行きましたが、その国で最高級の肉でも、食べてみると美味しくないということもあります。モスクワのスーパーを見た限り、肉も綺麗ですし、いわゆる発展途上国とは別のレベルにあります」と話している。

    有原教授によると、ドイツは食肉の歴史は長いが、食肉加工品のラインナップはハム・ソーセージなど総じてオーソドックス。いっぽう、イタリアやスペインの加工品は非常にバラエティに富んでいるということだ。そのような珍しくて人目をひく商品は、日本で高値で売られている。ロシアはドイツの流れを汲んでいるため、今のところ商品の奇抜さで勝負することはできない。そもそも、ロシアの肉は美味しいのかまずいのか、普通の日本人にはイメージが全くない。まず手にとってもらうためには、何かしらのイメージ戦略が必要だろう。

    筆者の個人的見解では、日本で受け入れられる可能性がありそうなのはサラミ(ロシア語でカルバサ)かもしれない。ロシアのカルバサが現在の形になったのはピョートル大帝の時代(1700年代前半)であり、ドイツ人職人がロシアにやって来て製造技術を伝えた。このためカルバサを「ドイツからの借り物」だと言う人もいる。その後カルバサは深く浸透し、ロシアの食卓に欠かせないものとなった。ロシアのカルバサは豚肉以外に牛肉も入っていて風味豊かで美味しいが、あまりにも安いものは要注意だ。ソ連時代のカルバサは今よりももっと美味しく、ご馳走だったようで、地下鉄でカルバサ泥棒が出現したこともあった。

    色々な種類の「カルバサ」(サラミソーセージとハム)
    © Fotolia/ Kenny
    色々な種類の「カルバサ」(サラミソーセージとハム)

    ロシアが売り出したい鶏肉について有原教授は「日本でも養鶏は大規模化が進みコストダウンされており、外国の安い鶏肉も入ってきています。付加価値をつけなければ、価格面だけで勝負するのは難しいのでは」と指摘している。折りしも日本では、日本の輸入鶏肉の約8割を占めるブラジル産の安全性に大きな疑問符がついている。ブラジルの報道では、賞味期限切れの鶏肉を化学薬品などでごまかし、検査官らに賄賂を渡して国外に輸出していたということだ。ブラジル政府は21日、捜査対象となっている21社からの鶏肉輸出を停止した。これに加え、世界第二位の鶏肉輸出国である米国でも、また日本国内でも鳥インフルエンザが定期的に発生している。ロシア産鶏肉が「安全性」という付加価値をつけることができれば、海外で受け入れられる追い風となるかもしれない。

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