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    アジアで今後「カリブ危機」は生じるか?

    アジアで今後「カリブ危機」は生じるか?

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    タチヤナ フロニ
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    日本政府は、北朝鮮がミサイルを発射した場合、J-AlertやEm-Netを通じて国民に、避難の必要性を事前警告する方法を刷新する決定を下した。その際、世論調査によれば、現在日本人の大部分は、もし北朝鮮の側からの軍事攻撃の脅威が必然的なものとなった場合、武力による反撃というシナリオを支持している。まして日本ではすでに、避難壕が建設され、第三次世界大戦に向けた準備がなされているのだからなおさらだ。ちょうど、ソ連との冷戦時代のアメリカ人と同じである。

    スプートニク日本

    歴史の専門家達は、カリブ危機(キューバ・ミサイル危機)の時ほど、世界がグローバルな核戦争に近づいた時は、これまで一度もなかったと考えている。あれから約55年が過ぎ去り、世界は新たに、不安を持って今回の朝鮮半島情勢の深刻な尖鋭化を見守っている。原因は、キューバの時と同じく、ミサイルだ。朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮の指導者金正恩委員長は、幾度となく「共和国は、米国の標的を攻撃するため核攻撃力を拡大するだろう」と述べてきた。しかし3月6日に北朝鮮で打ち上げられた弾道ミサイルの一つなどは、日本・北陸地方の能登半島にも達しない、たった200キロを飛行しただけだった。

    アジアで今後、あのキューバの時のような「ミサイル危機」は起こるだろうか? スプートニク日本記者は、この問いを、ロシアの軍事問題専門家ウラジーミル・エフセーエフ氏にぶつけてみた。

    エフセーエフ氏は、次のように答えてくれた-「今回米国は、北朝鮮を挑発し、北はそれに対し、軍事パレードで一連の武器・兵器を誇示し、それに対して日本では一定の懸念が呼び起こされた。とりわけ注目されたのは、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「北極星1号」や中距離弾道ミサイル『ムスダン(舞水端)』の様々なバリエーションだった。しかし『ムスダン』は日本にとって『北極星』ほど脅威ではない。それ以外に軍事パレードでは『トーポリM』タイプの大陸間弾道ミサイルの模型も披露された。これは、完成された核弾頭を含め、核実験を背景にした宇宙ロケット、ミサイル技術開発における明らかな勝利である。確かに北朝鮮のミサイルは、まだ完全には完成されてはいない。しかし彼らがそれらを持っているというのは事実だ。『北極星1号』は高度400キロに打ち上げられ、400キロを飛行した。この事はすなわち、およそ射程1000キロを意味する。当然この事は、日本に、安全保障上の根拠ある懸念、さらには固有の核兵器を製造すべきではないかという考えさえ呼び起こしている。こうした状況において、北朝鮮を挑発する事は、どんなものであれ危険である。北朝鮮が、自分達の核プログラムをやめないことは明らかだ。それゆえ今のところは、北朝鮮の核ミサイル潜在力制限に関する合意達成に向け話し合いを始める必要がある。核ミサイルの廃棄ではなく、一定のかなりの譲歩のもとでの、その制限だ。私には、そうしたアプロ-チだけが状況を和らげることができると思われる。」

    よく知られているように、キューバ危機は、平和のもろさを自覚させることで、その後逆説的な形で国際的な平和安定の事業を助けることとなった。米ソ両政府は、軍備管理に向けた数々の措置に着手し、相互の信頼が強化された。では当時、何が一体それを破壊してしまったのか、今思い出す価値があるのではないか?

    1957年10月ソ連は、世界で初めて地球周回軌道上への、人工衛星の投入に成功した。それ以来、米共和党の言うところの「ロケット開発の遅れ」というテーマは、絶えず誇張され、1959年のアイゼンハワー氏の大統領キャンペーンの中心に置かれていた。ここで頭に浮かぶのは、先の米大統領選挙キャンペーンにロシアのハッカー集団が干渉したという、ヒステリックな主張との類似点だ。その余波は、トランプ氏が合法的にホワイトハウス入りした後も、露米関係に否定的な影響を及ぼしている。

    そして「ロケット開発の遅れ」というテーマの悪影響は、ケネディ大統領時代に一層深まり、まさに彼の時代にカリブ危機が起き、続いて宇宙での軍拡競争が始まった。米国は、体系的に自分達の軍備を、彼らが自らの同盟国防衛にとって戦略的に重要だと思うあらゆる場所に配備して行った。おそらくそうした理由から、当時のソ連の指導者ニキータ・フルシチョフ書記長は、彼独特の表現を引用するなら「アメリカ人のパンツにハリネズミを入れる」のは悪くないと考え、核ミサイルをアメリカの喉元に移動させたのだろう。

    さてこの21世紀に、金正恩委員長は「自分のハリネズミ」をどこかに入れることはできるのだろうか? 実際の北朝鮮の脅威は、果たして日本で言われているようなものなのだろうか?

    ロシアを代表する日本専門家の一人、ワレーリイ・キスタノフ氏は、次のように述べている-「日本における北朝鮮の脅威は、明らかに煽られ、可能な限り破滅的なシナリオで描かれている。北朝鮮の体制が、最初に攻撃してくるというシナリオなど、いかなる論理性もないにもかかわらずだ。彼らにとって、そんなことは単に自殺行為である。しかしトランプ現大統領は実際、予測のつかない人物だ。この事は、アフガンやシリアに対する空爆を見ても理解できる。アフガニスタンで米国は、示威的にMOAB(大規模爆風爆弾)を使用した。確かに朝鮮半島をめぐるトランプ氏の行動について、何かを予測するのは難しい。誰も戦争を望んでいないが、すべてが戦争に向け用意がなされているとの感じがある。第一次、第二次世界大戦が始まったのも、まさに何らかの挑発によるものだった。満州鉄道での挑発事件後起きた日中戦争も、その例に加えられる。今日、グローバル、国際レベルのこの地域における線引きは、もう米国と中国の間で行われている。米国は、金正恩体制を終わらせ、そこに親米政権を立てることに異存はない。目的は、朝鮮半島全体を平穏に管理し、南ばかりでなく中国と国境を接する北にも、障害なく米国の戦略兵器を配備する事だ、そして朝鮮半島を、中国に圧力を加えるための橋頭堡として利用する事である。」

    スプートニク日本記者は、朝鮮問題の専門家であるゲオルギイ・トロラヤ氏にも意見を聞いた。氏は「現在、超大国が衝突するような直接的な脅威は存在していない」と指摘し、次のように続けた-

    「朝鮮民主主義人民共和国の核ミサイルプログラムが原因で、世界戦争を思いつく人は誰もいないだろう。イラクやリビア、シリアとは違う。見返りとしてあまりに大きな損失が見込まれ、その事が米国を自制させている。もちろん韓国も、北との戦いを欲してはいない。米中間の対立の犠牲にはなりたくないと思っている。それゆえ米国の現在の行動は、北朝鮮に対する一時的な戦術であり、中国が北に対し何か措置を講じるよう脅迫する試みに過ぎない。米国との地政学的競争の中で、米国がこの地域で自分達の好きなように行動する絶対的権利を、最終的に中国政府に認めさせるための一時的戦術である。」

    さて日本の状況だが、対外的な危機と金正恩という敵に直面した日本人の恐怖感がプラスとなって、安倍首相の支持率が上がっている。国民の間の危機感を高める事は、安倍政権にどのくらいプラスなのだろうか?最後にスプートニク日本記者は、再びキスタノフ氏に聞いてみた。

    氏は、次のように答えている-「安倍首相は、日本の軍事力増強を根拠づけるために、この脅威を単に利用しているように思える。彼は、米国が戦後日本に押し付けた平和憲法を葬り去りたいと考えている。しかし核兵器が用いられない軍事紛争が起きた場合でも、それは日本に非常に否定的な影響を与える。何万、あるいは恐らく何十万もの難民が生まれ、まず韓国に、そして中国やロシアにやって来るだろう。そして彼らは、日本にも向かう。彼らが日本にたどり着くことは、そう難しくはない。例えば、対馬列島だ。おまけに日本は、そうしたバリエーションを予め念頭においている。北朝鮮の体制崩壊のシナリオの一つとして、難民受け入れに向け用意する必要があると言われている。なぜなら、アフリカと欧州の間で現在起こっているのと同様の何かが、難民流入により生じるからだ。日本国内に、難民を装って、様々な後方攪乱作戦を行ったり原子力発電所爆破を企てるテロリストが入り込む恐れもある。」

    以上のことを考え合わせた場合、6カ国協議から北朝鮮を追い出すのではなく、協議を再開させることは、今のところまだ遅くないように思われるのが、皆さんはどうお考えだろうか? よく言われるように「よい戦争より、冷たい平和の方がまだまし」だ。 我々には常に、選択の道が存在している。

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    ミサイル, 金正恩, 安倍晋三, ドナルド・トランプ, 米国, 日本, 北朝鮮
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