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    宇宙空間での米国の弾道ミサイル迎撃:現実的か、それとも脆い幻想か?

    宇宙空間での米国の弾道ミサイル迎撃:現実的か、それとも脆い幻想か?

    © REUTERS/ Lucy Nicholson
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    タチヤナ フロニ
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    米国防総省のミサイル防衛機関が伝えたところでは、今週米軍は、大陸間弾道ミサイル(ICBM)迎撃実験に成功した。実験の過程で、迎撃ミサイルは、クェゼリン環礁から米本土方面に打ち上げられた演習用の大陸間弾道ミサイルを宇宙空間で撃墜した。しかしこの情報について、ロシアの軍事専門家、ウラジーミル・エフセーエフ氏は「全く正確なものではなく、一定の誤解を招くものだ」と厳しい見方をしている。

    スプートニク日本

    米国の弾道ミサイル
    © AP Photo/ Matt Hartman
    米国の弾道ミサイル

    大陸間弾道ミサイルというのは、人類が作り出した極めて印象深い兵器だ。巨大な威容を誇り、大変な威力を持つ熱核弾頭を搭載している。しかしそれは、地球上でのことに過ぎず、発射されてから数分間でのことだ。この時期が過ぎると、ミサイルには積載物(ペイロード)のみが残り、長距離ミサイルの場合は、それは高度何百キロの宇宙空間に出てゆく。そして地球の1000から1200キロ上空の低空人工衛星層に登ってゆく。

    このように宇宙空間で迎撃されるのは、米国防総省が主張しているような大陸間弾道ミサイルではなく、弾頭あるいは弾道ミサイルの頭部である。この大きな違いを理解することが重要だ。

    ミサイル発射時、まずそれはアクティブ・エリアを通ってゆく。その時間は、ミサイルの燃料次第だ。固形燃料の場合は3-4分、液体燃料では5-7分と言われている。アクティブ・エリアでのミサイル迎撃は不可能である。なぜならミサイルはまだ大気圏内にあり、衛星にそれは見えないからだ。

    衛星がミサイルを捉え、対象を認識し始めるのは、ミサイルがようやく高度100キロ以上に達してからだ。しかしこの段階では、ミサイル撃墜用ミサイルは使えない。それ自体、標的発見後、そこまで達するのに何らかの時間が基本的に必要だからだ。それゆえ、弾道ミサイルの実際的な迎撃がなされるのは宇宙空間であり、しばしば、すでに弾道ミサイルの切り離しが行われた高度1000メートルの上空である。

    しかし直接攻撃する標的は、ミサイルの まさに弾頭だ。つまり、より重要なのは、実際には大陸間弾道ミサイル全体より弾頭を迎撃する事なのか?

    スプートニク記者の、この質問に対し、軍事専門家のエフセーエフ氏は、次のように指摘している-

    「打ち上げ後初めのアクティブ・エリアで直接、ミサイルをすぐに迎撃した方が良い事は確かだ。そのため米国のミサイル防衛システムが仮想的に用いられる可能性がある。米国艦船に搭載されたイージスだ。しかしその成功を決定づけるのは、ミサイル発射地点からの距離だが、ある場合、地理的にそれができない。例えば、北朝鮮との場合もそうだ。彼らのミサイルを迎撃できるかどうか、極めて問題点がある。もしくは単に、迎撃を保証するためには、時間がなさすぎる。ミサイル防衛システムが単に間に合わないのだ。」

    エフセーエフ氏の意見では、米国軍事当局が今回示したのは、弾道ミサイル迎撃の潜在的可能性に過ぎない。迎撃は予想されたもので、演習場での迎撃というべきものだった。

    実際ミサイルは、様々な条件下で発射されるわけだが、それらを迎撃するためには、問題点はどこにあるのか?

    エフセーエフ氏は、次のように述べている-

    「最も大きな問題は、軌道に関するもの、そしてミサイルの発射時間だ。戦闘状態にあっては、それは常にわからない。第二の問題は、標的の信号の特徴だ。迎撃演習の際には、標的となるミサイルの信号の特徴は、よくわかっているのは当然だ。だから米軍は、迎撃に完全に成功したのだ。もし信号の特徴が明らかでないならば、ミサイルを識別するのは極めて困難であり、迎撃をかなり難しいものとする。」

    イージス
    © AP Photo/ Vadim Ghirda
    イージス

    それでは、最初のアクティブ・エリアでのミサイル迎撃を保証するものは、何なのか?

    この質問にエフセーエフ氏は、次のように答えた-

    「米国で開発された空中発射のレーザー兵器だ。そうしたものは、ボーイング777に装備されていた。なぜ空中発射かというと、そうすれば雲の上から攻撃できるからだ。レーザー光線の威力も弱まらない。しかし現在、こうした作業は停止された。つまり事実上、アクティブ・エリアでは、米軍は何も迎撃する物がないからだ。あまりに時間がない。ミサイル発射地点が、常にはっきりしているわけではないからだ。それゆえ米軍は、ミサイル弾頭の迎撃のほうを良しとしたのだ。弾道ミサイルと違って、十分な時間飛行するため、迎撃できる時間が長い。」

    しかし、どのような場合でもそうだが、ここでも米国は何食わぬ顔をし、真実を隠しているのではないのか?

    エフセーエフ氏はスプートニク記者の意見にうなずき、次のように続けた-

    「米国は確かに、ミサイルの頭部の迎撃を保証している。しかしこれは、陳腐なことといってよい。それにロシアの大陸間弾道ミサイルは、偽の標的を使って隠密飛行をする。そうすることで、ミサイル防衛システムをかいくぐるのだ。そうした場合、パッシブ・エリアでミサイル弾頭を見つけるのは、事実上不可能である。中国も、そうした偽の標的を持っている。北朝鮮も、同様のものを所有している可能性がある。それゆえ、米軍の今回の迎撃成功を喜ぶ根拠はない。」

    とはいえ、米国のジム・セイリング中将は、今回の迎撃実験について、米国にとって死活的に重要なものだと表現したが、実際実験は成功したのか?

    エフセーエフ氏は、この問いに対し、次のように指摘している-

    「米国は、自分達の達成を宣伝しようとしている。その成果は実際かなりのものだ。なぜなら秒速5キロから7キロのスピードで飛行している標的の迎撃を保証したのだ。彼らは、高度およそ1500キロで弾頭を迎撃した。この場合、彼らは実際、自国領土をかなりカバーできている。しかし、偽の標的を使って隠密飛行するミサイルにより、カバーできるエリアが本質的に狭まっているのも確かだ。しかし、今回の米国の迎撃実験成功を過大評価すべきではない。米国が今回世界に示したのは、あくまで演習での成功であり、弾道ミサイルが出す信号など、あらゆることがあらかじめ分かったうえでのことだった。 つまりスナイパーが、ライフル銃で射的をしたようなものである。」

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    ミサイル, 米国
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