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    なぜモスクワと東京の市民は両者とも古い集合住宅を好むのか

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    リュドミラ サーキャン
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    モスクワ当局の計画する住宅の全面的な「更新」計画は、20世紀半ばに建設された5階建て集合住宅の居住者を新しい近代的な高層アパートに移住させるというものだが、これが意外な反応をもたらした。蓋を開けてみると、5階建て集合住宅の住民の中で、これを歓迎した人の数は全員には程遠い(モスクワではおよそ150万人)ことが明らかになったのだ。ソーシャルメディア上では賛成派と反対派のグループがつくられ、自然発生的なものから許可を受けたものまであちらこちらで集会が始まった。自分たちの集合住宅が「更新」の対象のリストに入れられることに賛成の人々の集会もあれば、移住は絶対にしたくないという人々の集会もあった。いったい何が問題なのだろうか。

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    「5階建て集合住宅」とは、1950年代の終わりから1980年代の初めにかけて、ソ連で大規模に建設された規格に基づいた集合住宅のことである。ロシアでは、このような集合住宅は「フルシチョフカ」と呼ばれている。この名称は、第二次世界大戦後の復興期に国民に住居を確保するよう命じたソ連の指導者ニキータ・フルシチョフの名に由来する。建設費が安かったため、政府は大勢の市民に非常に速く住居を確保することができた。その時代においては、これは単に事態の突破口になっただけではなく、信じられないほど進歩的な決定であった。1960年代のほんの10年間のうちに、戦後の仮小屋や、狭い共同住宅、寄宿舎、そして半地下に建てられた小屋に住んでいた人々までもが、小さいながらも個別に独立したアパートに引っ越した。それらのアパートは無料で提供される公共住宅とみなされた。このような集合住宅の大部分は、5階の高さを超えることはなかった。これは建設基準でエレベーターの設置が要求されない集合住宅の高さの限度が5階であることと関係していた。今このような集合住宅の大部分は道義的にだけでなく、物理的にも時代遅れとなっている。

    いったいなぜ大部分の人々は古い住宅の撤去と近代的な高層アパートへの移住に断固として反対しているのだろうか。「更新」計画に含まれる5階建て集合住宅は、実は全部が全部老朽化し危険なものだというわけではない。それらの住宅の中にはまだ十分に品質の良いレンガ造りのものや、史跡、建築学上の記念碑でさえ含まれている。それに加えて、5階建て集合住宅の住民の大半はこの間、働いて得たお金を投じて我が家のリフォームを行ってきた。そのおかげで個々のアパートの内部はなかなか立派な作りになっている。普通、5階建て集合住宅のある地区には、子どもの遊び場と手入れの行き届いた小さな庭を備えた快適で静かな中庭がある。つまりここは窓を開ければまだナイチンゲールの歌声を聞くことができる、モスクワの一部分なのだ。

    そしてもう一つ、人々にとってかなり重要な要素がある。それは移住することによってこれまでの住民の小さな世界や社会的つながりが破壊されてしまう、ということだ。多くの場合、通う幼稚園や学校を変更したり、新しい隣人や職場への新しい道順に慣れなければならないだろう。新築のアパートの上層階に住みたいと思う人は少ない。以前の居住面積よりも広い部屋が保証されたとしても、どの集合住宅に、あるいはどの階に住むかの選択肢が住民に与えられることはまずない。住民らの心配はこの他にも高層アパートの人口密度が上昇すると、交通機関が混みあうのではないか、駐車スペースが不足するのではないかといったこと等々、尽きることがない。専門家らの評価では、古い住宅の全面的撤去による経済的効果は肯定的だ。全体では、「更新」計画に基づいて撤去が必要とされるのは、モスクワの住宅総保有量のおよそ10パーセント、180万平方メートル。とはいえ撤去の決定は、その集合住宅の住民の3分の2が賛成票をを投じなければ承認されない。投票は5月15日にすでに開始されている。

    興味深いのは、モスクワの5階建て集合住宅には、日本の「仲間」がいるということだ。第二次世界大戦後、東京や他の日本の諸都市は米国による爆撃で破壊された状態にあり、日本もソ連と同じように極度の住宅不足を経験していた。そのため、1950年代後半から、日本住宅公団は商店や子どもの教育施設、運動場を備えた「団地」と呼ばれる集団居住区の建設に着手した。日本の人々がモスクワの5階建て集合住宅を手本にしたのかどうかについて、歴史は沈黙したままであるが、これもまた住宅問題における一種の革命であった。つまり何百万人もの人々が、面積は控えめながらも、その代わり浴室やガスコンロを備えたアパートに初めて引っ越してきたのである。同じような住宅の複合体を、大企業も自社の従業員のために建設した。現在日本では約200万棟の集合住宅が団地にある。不便な、あるいは社会的評価の低い場所にあるアパートの大部分は空き家である。しかし中には安価な物件として売られたり、貸家となっている近代的なアパートもある。そしてこのような物件は他の高層アパートの部屋よりも有利だ。というのは、例えばこのようなアパートでは、日本ではかなり高額につくエレベーターの使用料を支払う必要がないからだ。近代的な諸設備が完備された小さなアパートは単身生活者や小規模な家族世帯に人気が高い。

    そんな老朽化した集合住宅を日本当局が「改装」したいと考えたところで、モスクワと同様、団地の住民の5分の4を超える同意が必要とされる。そしてこれもモスクワと同じように、多くの日本人は巨大な摩天楼よりも、緑に囲まれた集合住宅に住むほうを好んでいるのだ。

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