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    ドラマ「ゾルゲ」

    日本人俳優出演のロシア大河ドラマ「ゾルゲ」撮影終了!監督&出演者独占インタビュー【写真・動画】

    © 写真: Star Media
    オピニオン
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    徳山 あすか
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    戦前の日本で1933年から41年にかけて暗躍したソ連のスパイ、リヒャルト・ゾルゲをモチーフにした全12回の連続ドラマ「ゾルゲ」の撮影が終了し、公開の準備が進められている。このドラマは日本でいうところのNHK大河ドラマのようなもので、ロシア人は今から放送を楽しみにしている。スプートニク取材班は、モスクワにあるStar Media社のスタジオを訪れ、セルゲイ・ギンズブルグ監督と、出演した日本人俳優に独占インタビューを行った。

    スプートニク日本

    ギンズブルグ監督はゾルゲの撮影にあたって、長期にわたり準備を重ねた。ゾルゲに関する様々な資料を集めたが、それらの資料は互いに内容が矛盾していた。日本の敗戦後、米国人の手にわたった資料もあり、それを見つけ出すことはできたが、ソ連が保管していた資料に関しては、現在に至るまで非公開である。ゾルゲの死後20年にわたってソ連では、彼の存在そのものを誰も知らされていなかった。ゾルゲはロシア人にとっても、謎と伝説の人物なのだ。

    このドラマは完全にゾルゲの人生を再現したものではないが、ゾルゲの生きたドラマチックな時代を十二分に感じられるリアリティに満ちている。撮影には細部までこだわった。日本は既に超現代的な都市になってしまったため、戦前の東京の雰囲気と似た場所を探し、中国・上海でロケを行った。衣装もできるだけ本物に近づけられるよう、当時の日本の警察官が着ていた制服を研究し、再現した。出番が少ない役についてはアジア系の俳優を探すこともできたが、「日本人でなければ日本人の根底に流れるものを演じられない」という監督の信念のもと、最大限日本人を起用した。

    ギンズブルグ監督「ゾルゲは確かにソ連のスパイとして、反日本の立場で働きましたが、彼が本当に心から憎んでいたのはナチスドイツのファシズムです。ゾルゲは日本とソ連が戦争しないように力を尽くしていたのです。ゾルゲは自分の信念を最後まで曲げず、死に際まで美しかった。どう死んでいくか、は日本人にとって非常に大事です。それがきっと、ロシアよりもむしろ日本でゾルゲが人気がある理由でしょう。今では信じられませんが、ゾルゲが信じた共産主義は当時流行の考え方で、宗教のようなものだったとも言えます。心からそれを信じた人たちがたくさんいました。多くの国が共産主義の脅威と闘うため、逆に、共産主義者の主張を一部取り入れざるを得ませんでした。例えば時短勤務や社会保障、会社の福利厚生などがそれです。その意味で共産主義はある程度、世界に恩恵をもたらしました

    ギンズブルグ監督やスタッフらは、日本人俳優たちのことを「私たちの日本人」と呼んでいる。仕事を進めていく中で、時には言葉がなくても分かり合えたし、日本人が「ゾルゲ」を見たときに違和感がないように、アドバイスを求めることもあった。

    ギンズブルグ監督「日本人俳優を起用するにあたって不安はありましたが、最初の一週間でその心配はなくなりました。彼らは才能あるプロフェッショナルで非常に規律正しい人たちです。日本人の仕事に対する献身的な姿勢は、役者として大変重要な資質だと思います。日本語を知っているかって?ええ、『タヌキ』(モスクワで人気の日本レストランチェーン)のおかげで、色々な言葉を知っていますよ。海草サラダとかウナギ巻きとか…。撮影現場でしょっちゅう発音した日本語は『完璧!』です

    木下順介さんが演じる「タカギ」は架空の人物。ゾルゲのボディーガードという役どころで、ゾルゲを「主人」と呼んでいる。二人の間には殿様と侍のような、強固な信頼で結ばれた上下関係がある。タカギはゾルゲの身に危険を及ぼしそうな人物を片っ端から消していくという武闘派だ。

    木下さん「ロシアでたくさん仕事をさせてもらい、それぞれに素晴らしい監督やスタッフがいました。しかしその中でも芸術的な深さという点では、『ゾルゲ』の撮影で、人生の中でも一番か二番の経験をさせてもらえたと思います。撮影中の全ての時間が宝物でした。実話と架空のストーリーが絶妙に組み合わさった壮大な作品なので、芸術の国ロシアの最先端のドラマを日本の方にもぜひ見ていただきたいです

    山本修夢さんは架空の人物「オオサキ」を演じた。特高警察で働くオオサキはゾルゲとその一味を冷静沈着に追い続け、とうとうゾルゲを追い詰める。オオサキは職務に忠実である一方、自分の恋心をどう表現していいかわからない少年のようなピュアな一面ももつ。取材が行われたのはちょうど、山本さんの全ての出演シーンの撮影が終わった直後だった。山本さんは目に涙を浮かべながらこの撮影にかかわったメンバーへの感謝を話してくれた。

    山本さん「9か月にわたる撮影の全編が終わりました。監督やスタッフの皆さんから祝福を受けたら、涙が止まらなくて…。素晴らしい作品に参加できたことを本当に嬉しく思っています。ロシアの芸術や文化が大好きなので、この国で、このような撮影現場で、これからも仕事をしていきたいです。真の芸術家として活躍しているロシアの俳優と共演するには、言葉の問題や表現力も含め、僕自身がもっと努力して高まらなければと思いますし、チャンスがあればたくさん挑戦したいです

    オオサキ役を演じる山本修夢さん
    © 写真: Osamu Yamamoto
    オオサキ役を演じる山本修夢さん

    中丸シオンさんが演じるヒロイン石井花子は、実在の人物だ。花子はレストランのウエイトレスをしていた時にゾルゲと知り合い、深く愛し合うようになる。花子はゾルゲが処刑された後も彼を愛し続け、共同墓地にあったゾルゲの遺体を掘り起こし、多磨霊園に改葬した。現在も二人はそこに眠っている。後に花子はゾルゲへの愛をつづった「人間ゾルゲ」を執筆。実話に基づいた、花子のゾルゲに対する忠実な愛は、このドラマの最大の見どころの一つだ。中丸さんは役作りにあたり、「人間ゾルゲ」をボロボロになるまで読んだ。

    ゾルゲと石井花子のお墓参りをする山本修夢さんと中丸シオンさん
    © 写真: Junsuke Kinoshita
    ゾルゲと石井花子のお墓参りをする山本修夢さんと中丸シオンさん
    中丸さんがロシア人と仕事をしてみて驚いたのは、ロシアのキスの文化と男性のジェントルマンぶりだった。ロシアでは親しい人同士の挨拶は頬へのキスから始まる。ゾルゲ役を演じたスター俳優アレクサンドル・ドモガロフさんは、1カット撮影が終わるたびに頬にキスしてくれ、励ましてくれたという。ドモガロフさんはロシアの中年女性の憧れの的で、ロシアのセックスシンボルとして有名である。

    中丸さん「私は日本語で、ドモガロフさんはロシア語で演じるので、言葉の壁を心配していたのですが、何を言っているかわからないけれどわかる、というような、心が通じ合える素晴らしい役者さんでした。スタッフも共演者も愛おしい家族のような存在で、撮影終了前日はホテルで一人で泣いてしまいました

    山あり谷ありの撮影が終わり、山本さんと中丸さんは帰国。アファナーシエフ駐日ロシア大使も、日本人俳優たちの労をねぎらった。オーディションも含めて3年間かかったこの超大作の、一日も早い公開を待ちたい。

    在日本ロシア大使館にて、アファナーシエフ大使と
    © 写真: Junsuke Kinoshita
    在日本ロシア大使館にて、アファナーシエフ大使と
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    ソビエト連邦, 映画, 露日関係
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