22:56 2017年11月18日
東京+ 9°C
モスクワ+ 3°C
    安倍首相

    安倍内閣の支持率急落を日露の専門家が読み解く:対露カードは蘇生の役に立つ?

    © AP Photo/ Ivan Riordan Boll/ritzau
    オピニオン
    短縮 URL
    徳山 あすか, タチヤナ フロニ
    33277204

    7月に報道各社から発表された安倍内閣の支持率は軒並み急落した。日本経済新聞とテレビ東京調査で39%、読売新聞調査で36%、共同通信社調査で35.8%。毎日新聞調査に至っては26%まで落ち込んだ。これは一時的なものなのか、それとも安倍政権の終わりの始まりなのか。

    スプートニク日本

    ロシアにおける日本研究の第一人者、モスクワ国際関係大学教授のドミトリー・ストレリツォフ氏は、安倍内閣はもうしばらく低空飛行で持ちこたえるが、その後ジリ貧になるとみている。

    ストレリツォフ氏「安倍内閣には蓄積されてきた政治的資本や信頼の残り香のようなものがあり、それはまだ使えるでしょう。首相は自分の後継者についてまだ考えていないし、強い政敵もいません。安倍氏は、何をやっても裏目に出る状況を恐れているので、しばらくは何も新しいことをしないでしょうね。しかし総選挙が後に伸びれば伸びるほど、安倍氏、というより自民党が負けると思いますし、敗北の責任をとって安倍氏が首相の座を退くということにもなりかねません」

    いっぽう、日本の政治学者で京都精華大学専任講師の白井聡氏は、現在の状況を「急激な流動化の直前」だと話している。

    白井氏「25日、加計学園問題をめぐる閉会中審査が終わりましたが、これは安倍内閣の信頼を回復するものではなく、支持率低下はこのまま止まらないと思います。次期首相候補に石破茂氏が意欲を示していますし、支持率がもっと低下すれば状況は更に流動的になり、自民党の内外から強力な政敵が現れる可能性や、ひょっとすると自民党が分裂する可能性もあるので、何が起こるか全くわからなくなります。私も含め安倍政権発足当初から『NO』と言ってきた人たちはもちろん、そうでない人も、今は安倍政権への期待を維持するだけの具体的な理由が残っていません」

    27日、民進党の蓮舫代表は、就任から一年も経たずして辞任を表明。会見で「東京都議選を通じて自身の足らざる部分に気付いた」と述べた。その都議選で都民ファーストの会を大躍進させた小池百合子東京都知事は、現在日本で最も勢いのある政治家かもしれない。しかしストレリツォフ氏は「首相になるには人気以外に大政党の強固なリソースが必要。今、国政で自民党以外に権力が移るとは考えられないので、自民党を飛び出した小池氏が首相になれるかどうかは疑わしい」と話す。

    安倍首相は歴代の日本の首脳と違って、ロシアとの領土問題の解決に向けて強い意欲を示し、プーチン露大統領との対話を重ねてきた。ロシアとの関係改善は安倍内閣の蘇生に役に立つのだろうか。

    ストレリツォフ氏「安倍氏はロシア外交に実に政治的積極性を見せていますが、これもアベノミクスと同じで、今は目に見えた効果はなく、まだ効果が出るのを待っている段階にすぎません。もちろん、結果が出なくても、安倍氏が様々なことに取り組んだというのは事実なので、支持率にはプラスになると思います。しかし過大評価は禁物です。日本にとっては対中関係の方が対露関係よりも大切ですから」

    対して白井氏は、安倍政権の「対露カード」などというものはそもそも見せかけだったと話す。

    白井氏「ロシアは、日本が敗戦以来の異様な対米従属レジーム、つまり米国の機嫌を常に過剰に忖度するという国家指針をやめない限り、日本と真面目に付き合うには値しないと考えているでしょう。ただし、ロシアは日米安保体制から日本を引き離すために北方領土問題というカードを使おうとしているきらいがありますが、それは難しいと思います。日本にしてみればこれまで屋台骨としてきた日米安保体制の方が北方領土より大事です。安倍氏は『戦後レジームからの脱却』を訴えてきました。文字どおりに受け取れば、それは対米自立を意味するわけで、プーチン政権はそう受け取ったのかもしれない。しかし、安倍政権の本質からして、そんなことができるはずがないのです」

    安倍政権、またその支持者たちが対米従属を是とするのは、過去の栄光へのしがみつきがあるためだと白井氏は分析する。

    白井氏「戦後日本の繁栄は、親米保守権力の指導の下もたらされたという意識があります。それは豊かさの問題にとどまりません。日本は、米国のおかげでアジアにおける戦前からの優越的な地位を敗戦にもかかわらず保つことができたわけで、その意味で対米従属は戦後のナショナル・プライドをも支えてきたのです。しかし、90年代以降、この構造は揺らいできました。今後どのような政界再編があったとしても、親米保守路線の合理性が消えたことが認識され、無条件の対米従属という方針が崩れなければ意味がありません。対露関係の改善も、この変化抜きには不可能です」

    奇しくも安倍政権の対露政策については、ロシア人専門家がやや楽観的に、日本人専門家が悲観的に評価し、意見が分かれた。来たる9月6日と7日にはウラジオストクで東方経済フォーラムが開かれ、安倍・プーチン会談が行われることになっている。その頃には、安倍氏の自民党総裁任期切れまで、約1年を残すのみとなる。果たして支持率はどちらの方向へ動くのだろうか?

    タグ
    安倍晋三, 日本
    コメント・ガイドディスカッション
    Facebook経由でコメントスプートニク経由でコメント
    • コメント