02:07 2017年09月26日
東京+ 21°C
モスクワ+ 14°C
    日本人が低い食料自給率を気にしないのは何故?

    日本人が低い食料自給率を気にしないのは何故?

    © Flickr/ Ruocaled
    オピニオン
    短縮 URL
    リュドミラ サーキャン
    97528198

    農林水産省は8月9日、2016年の食料自給率を38%と発表した。過去数年間は39%台で推移しており、昨年のこの数値は僅かな減少となったが、その原因は、昨年の台風続きで米などの穀物の収穫量が減少したことで説明がつく。しかし、たとえこの自然災害がなかったとしても、低価格のオーストラリア産牛肉、カナダ産豚肉、チリ産ぶどうなど様々な輸入食品の影響で、日本人にとって昔からの食品である米が食事に占める割合は徐々に縮小してきている。

    スプートニク日本

    但し日本は、食料自給率を熱量(カロリー)ベースで計算している数少ない国の一つ。これは、国民の1日1人当たりの国産供給熱量が1日1人当たりの供給熱量をどれだけ満たしているかを示すものだ。このため、国連委員会が作成している世界食料安全保障指数(The Global Food Security Index)では、2016年の日本の順位は109カ国のうち21位と、上位を占めている。

    国の食料安全を保障するためには、どれほどの割合を国産品で満たせば良いのだろうか。その評価は、専門家の間でも大きく分かれている。中には80%以上を国産品とすべきで、残りは他国からの輸入で構わないとする主張もある。一方、社会学者であり、ロシアの中小企業家組織連盟「ロシアの支柱」の評議会員を務めるドミトリー・ネスヴェトフ氏はこの考えを否定している。「スプートニク」編集部による取材の中で同氏が述べた見解を以下、引用する。

    国の食料安全を示す基準というものは存在しません。国連世界食料安全保障委員会ではかつて、何らかの基準を定めようとする試みもあったのですが、各国の状況があまりにも異なっているため、全ての国を共通の物差しに当てはめるのは不可能だと分かったのです。但し、食料安全に関して2つの見方が注目されるようになりました。それは、物理的または経済的な利便性です。物理的利便性とはインフラ発達度のことを表しています。これには、全ての国民が全ての居住地域において、定められた国民栄養基準に合った量と種類の食料を購入することを可能とする流通インフラの発展度合いも考慮されます。もう一つの経済的利便性とは、これらの食料を購入できる国民の購買力に関連しています。そして各国の状況を物理的および経済的利便性という2つの指標で考えてみると、結果は大きく異なったものとなります。数年前まではグローバル経済の傾向が優勢で、貿易障壁はかなり低く、どの国でもその経済合理性に応じて自国の判断で様々な食料の生産量と購入量を定めることが可能でした。ですが、今や時代は変わりました。グローバリズム思想は批判と危機に曝され、現在では国家保護主義の傾向が再び強まっています。時代は大きく後退しているのです。しかし今のような状況でさえも、100%の食料自給率を目標に掲げるような国は、北朝鮮を別として、あり得ないでしょう

    日本の食料自給率の低さは食料安全上のリスクとならないか、との本編集部の質問に対し、ネスヴェトフ氏は以下のような考えを述べた。

    これは経済的な確信を示すものです。国産品の占める割合が僅か3分の1という日本の状況は、自国に充分な自信があることを表しています。つまり、充分な資金と海外食品市場を持ち合せていることから、国民の利益を満たせるであろうという自信です。これに関連するリスクについては、日本政府は低く評価しています。もちろん、グローバル思想が危ぶまれ保護主義が再興する中では、国産品によって更に完全な食料安全を保障するのは、リスクのない方法でしょう。しかしながら、あらゆる代価を払ってでも国産品だけで食料安全保障を目指すのは現実的ではなく、経済的にも不利なことです。

    興味深いことに、世界で豊かな国とは、農作物の主要輸入国でもある。世界中から食料を買い上げている日本もこれらの輸入国の一つだ。日本に食料品を供給している国は50カ国以上、その主要国として中国、米国、台湾、香港、タイ、ベトナム、オーストラリア、カナダなどが挙げられる。日本の輸入品目で多いのは、豚肉、とうもろこし、生鮮野菜・果物、タバコ、アルコール飲料。この他、農林水産省が公開した品目別貿易実績一覧によると、薪や豚の皮といった品目も輸入されている。

    トランプ米大統領が日本や他のアジア・太平洋地域諸国との環太平洋パートナーシップ(TPP)協定からの離脱を決定した後、日本は7月にEUと自由貿易について合意した。今後、欧州産のチーズやワインなど美食家が喜びそうな食品がこれまでの3倍の勢いで日本に流れ込んでくることも考えられる。このため、日本政府がその宣言どおり2025年までに食料自給率を45%に引き上げるのであれば、国内農業生産を発展させ支援すると共に、今後の輸入を自由化・多様化するという複雑な課題を、自国農業セクターの損失を最小限におさえながら解決していかなくてはならないだろう。

    参考資料:ロシアの食料自給率は評価方法によって異なるが、現在は65~75%とされている。つまり国の食料輸入割合は25~35%だが、一方、大都市圏ではその割合は約50~60%に達している。

    タグ
    食品, 経済協力, 日本, ロシア
    コメント・ガイドディスカッション
    Facebook経由でコメントスプートニク経由でコメント
    • コメント