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    イシグロ氏

    イシグロ氏は日本を去れる だが日本はイシグロ氏から去ることはない

    © AP Photo/ Alastair Grant
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    リュドミラ サーキャン
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    日系英国人作家のカズオ・イシグロ氏(石黒一雄)氏の著作は今日すでに、ロシアの、そして世界の書店の店頭に「ノーベル文学賞2017年受賞作家」の札をつけて並べられている。だがロシアではイシグロ氏の長編作品はすでにファンを獲得していた。ロシア語によるイシグロ作品の著作権を独占する「エクシモ」出版にとっては今回の受賞は突然の大ニュースではなかった。「エクシモ」出版、海外現代文学部のユーリヤ・ラウトボルト部長はスプートニクからのインタビューに次のように語っている。

    スプートニク日本

    私たちがイシグロ氏に注目したのは、『日の名残り』でブッカー賞を受賞した直後です。これは彼の3作目の長編小説でした。それからその前に書かれた2作の『遠い山なみの光』と『浮世の画家』に目を通しましたが、これらには完全に魅了されました。これらの作品の登場人物らは日本の原爆の記憶、戦中時代の記憶を追っています。最初の作品からはっきりしていますが、イシグロ氏は現代文学の中で最も意味ある作家になるでしょう。彼にノーベル文学賞が贈られたのはその創作が十分に評価されたからです。私たちはイシグロ氏によって書かれた全作品、あわせて8作を出版しました。これで書店の書棚から彼の本は飛ぶように売れていくでしょう。とはいえ、これまでも彼の著作は安定して売れていましたが。

    イシグロ氏が1954年、長崎に生を受けた事実は重要だ。広島、長崎への原爆投下はイシグロ氏の生まれる9年前であり、彼が6歳の時に両親は日本を離れてしまっていたものの、それでもカタストロフィ、悲劇、恐怖の感覚と、こうしたことが起きた後では今までの暮らしを続けていくことは不可能であることがイシグロ作品のほぼすべてに刻印を残している。これにロシアの読者も気づかされたのだ。

    イシグロ氏の本を読んだ読者が「エクシモ」出版によせたレビューをここでご紹介したい。

    「これはむろん私見だが、イシグロ氏は6歳で日本を離れてはいても、日本人である両親のしつけを常に受けて育った。デフォルメされようが、ヨーロッパ文化の夥しい多層といっしょにされようが、日本の精神性というのは消えてなくなりはしない。こうした本をヨーロッパ人またはロシア人が書けるとは、私にはどうしても思えない。」

    村上春樹氏の長編『ノルウェイの森』が私に、どんな変化との戦いの最中でも揺らぐことのない姿勢を教えてくれたとすれば、イシグロ氏の『わたしを離さないで』は、一番恐ろしい苦しみでさえ、いかに戦うことなしにやり過ごすかを教える一種の参考書と呼べる。」

    「『わたしを離さないで』を読みながら、一体、いつ蜂起が始まるのかと固唾をのんでいた。主人公らはいつ、闘う必要性を理解するのか。いつ逃げ出すのか。生を愛しているのなら、なぜそのために闘おうとしないのか。ところが本の中では革命も蜂起も逃亡も起きない。澄んだ明るいメランコリーが多少あるだけ。それが桜の木の下で行われようが、英国の沼地であろうが、それはたいして重要なことではない。公を個人の前に据え、どんなに辛かろうが、他のやり方があるのではないかと思おうが、義のために完全に身を投げ出すということ、これはすべて骨の髄まで日本的なことなのだ。イシグロ氏は日本を去ることはできるかもしれない。が、日本のほうはイシグロ氏から去ることは決してない…。」

    「イシグロ氏のノーベル賞受賞は時代の印だ。時に私たちも彼の作品の主人公に自分を擬えることがある。カタストロフィまでほんのわずか、という。」

    Fun Facts:

    最も人気を集めたイシグロ氏の作品『わたしを離さないで(原題:«Never let me go»)は2011年に映画化された。これによってイシグロ氏の作品の知名度は一気に上がった。

    イシグロ氏はドストエフスキーに強く影響を受けたと語っている。またジャズの歌詞も書いている。

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    文学, ノーベル賞, 日本
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