14:26 2017年10月19日
東京+ 11°C
モスクワ+ 6°C
    ロシア初「死の研究室」がオープン:テクノロジーがもたらす死生観の変化

    ロシア初「死の研究室」がオープン:テクノロジーがもたらす死生観の変化

    CC0 / Pixabay
    オピニオン
    短縮 URL
    リュドミラ サーキャン
    147990

    ロシア国内初の「死の研究室」がサンクトペテルブルグ・独立社会学調査センターを基盤に設置された。「死の研究(デス・スタティーズ)」は現在、老齢人口が急速な勢いで増加するヨーロッパとアジアで特に注目が集まっている。長寿人口で記録的な数を誇る日本では2017年現在、100歳を超える人口が6万8千人を数えている。

    スプートニク日本

    西ヨーロッパでは、「死の研究」は社会学として一般で認められており、学会が開かれ、専門書も出版されている一方で、ロシアではこうした研究はこれまで行われていなかった。スプートニクは今回、「死の研究室」の創始者でこの分野の第一人者であるセルゲイ・モホフ氏にマイクをむけ、老化の意味づけ、デス・ツーリズムや人体冷凍保存などをテーマに対談を試みた。

    スプートニク:「研究室の創設に至った経緯と、この分野が注目されている理由を教えてください。」

    モホフ氏:「研究室を作る必要性が生じたのはこのテーマへの関心が社会、学界で急激に高まったからです。21世紀に入り、多くの国が高齢化社会となりました。1900年の時点では65歳以上の高齢者が人口全体に秘める割合は4%でしたが、現在ではすでに18%となっています。このまま行けば、21世紀の半ばには5人に1人が、そして今世紀末には4人に1人が65歳以上となるでしょう。学者らの試算では、どんなに医療が発展し、生活水準が向上しても、人口の高齢化によって死亡率は常に上昇します。ですからこの現象は、死やそれに関するプロセスに対する我々の考え方に変化をもたらしつつあります。エンディング産業は、今世紀の経済界で最も発展する分野の一つとなることでしょう。こうしたことがすべて合わさりあって、我々の研究に対する注目が高まっているのです。」

    スプートニク:「研究室ではどういった見地から死が研究されているのでしょうか?」

    モホフ氏:「分野が幾つかありますが、その中でも主流なものは3つです。エンディング産業、ホスピスの動向、死にゆく人への救済です。これらの分野では、親しい人を亡くした人がその死を受容していくこと、死と自分自身の終わりの意味づけていくプロセスの文化、死への恐怖、孤独などが研究されています。我々研究者は、専門家らで構成されたコミュニティができ、現代社会で人間が人生を終えることに関連した重要な問題に向けられるようになることを望んでいます。」

    スプートニク:「2005年からロシアの企業『クリオルス(KrioRus)』が、いつか蘇生されることを期待して、人や動物の遺体を冷凍保存にするというサービスを合法的に展開しています。現在、54人の遺体と20匹の動物の遺体が冷凍されています。この技術に対してはどう思いますか?」

    NASAが不老の妙薬を開発
    © Fotolia/ 18percentgrey
    モホフ氏:「冷凍葬は実に興味深い現象で、これは辿っていくとロシアの宗教的哲学につながります。この技術の興味深いところは、それが従来の伝統的な葬儀サービスにはじめて取って代わる一つであるということです。しばらくすれば、棺、霊柩車、花輪、墓地の区画や墓石などの物質的な文化の埋葬儀式に取って代わる21世紀の葬儀関連産業が現れるはずです。人をあの世に送り出す方法の多様化を求める声も高まることでしょう。すでに人々は従来と異なる様々な埋葬方法に目くじらを立てなくなっていることが見て取れます。例えば、骨壷を宇宙に打ち上げたり、遺灰をさんご礁のある海に沈めたりすることもできる。生まれ故郷の海や山など、最期の場所を選択する『デス・ツーリズム』も発達することでしょう。」

    21世紀における新しい技術の急激な発展も、今までとは違った死生観へのアプローチを必要としています。例えば、ロシア人女性が、亡くなった友人に似せて創り出したチャットボットがFacebook上に存在するという事実にどう接するべきなのか?もし故人の記憶や体験を何らかの媒体に記録できるとしたら、それは有益となるか、それとも有害となるか?もし、予定されているとおり、2020年には人間の頭を他の体に挿げ替えられるようになっていたら、そのふたりの命と生物学的な死との境界線をどこに引くことになるのか?そのような問題の解決の試みが、これからロシアの研究所でも始まるわけです。

    タグ
    科学研究, 科学, ロシア
    コメント・ガイドディスカッション
    Facebook経由でコメントスプートニク経由でコメント
    • コメント