04:28 2020年01月28日
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10月31日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、京三製作所、野村総合研究所は、モスクワ市交通管制センターと共同で実施していた高度交通信号システム(ARTEMIS)の実証事業完了式典を行なった。モスクワ市内の交差点に同システムを設置したところ、最大40パーセントの渋滞緩和効果があったことが明らかになった。

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従来の信号システムでは、交通量などのデータの送受信と処理に時間がかかり、実際の道路状況と信号制御との間にギャップが生じてしまっていた。しかしARTEMISは、路上に設置されているコントローラがデータを処理するため、流入交通量を正確に予測し、適切な信号制御ができる。また、道路を拡張したり大規模な中央装置を設ける必要はなく、設置したい交差点にピンポイントで導入できるため、低コストで始めることができる。

ARTEMISの実証は、7月から8月にかけてモスクワ北部オニェジスカヤ通りで行なわれた。朝と夕方の混雑時に、全長約2キロを通過する所要時間を測ったところ、最大で40%減。信号待ち台数は30パーセント減、信号待ち時間もトータルで40%減と、目に見えた効果があらわれた。31日、実証場所で行なわれた技術説明会には、雪まじりの雨という悪天候にもかかわらず、大量の記者やテレビカメラが殺到。渋滞問題に対するロシアの関心の高さが見て取れた。

モスクワ市交通管制センターのワジム・ユリエフ長官によると、モスクワの交通状況はきわめて深刻で、この20年間、車の数が増え続けているという。モスクワにおける1車両あたりのスペースは27平方メートルで、東京23区の62平方メートルに比べて半分もない。インドネシアの首都・ジャカルタのようにナンバープレートの奇数・偶数で交通量を制御するような都市もあるが、ユリエフ長官は「モスクワとしてはドライバーに厳格なコントロールをせず、渋滞を解消したいので、信号制御に大きな希望を抱いています」と話している。

この信号システムの導入を待ちこがれていたのが、ロシアの南西に位置するヴォロネジ市である。人口103万人のヴォロネジ市もまた、渋滞がひどいことで有名だ。同市はまもなく、市内の10交差点でARTEMISを導入する。

ARTEMISを開発した日本を代表する信号システムメーカー、京三製作所の荒井正人(あらい・まさと)執行役員は「オニェジスカヤ通りで最大40%減という数字は、当初のシミュレーション結果どおりでした。モスクワでは中心部から離れた場所で実証事業を行ないましたが、ヴォロネジの場合は市の基幹道路に設置します。ドライバーに渋滞緩和を認識してもらえるような効果が出るのではと予想しています」と話している。

ヴォロネジ市は日露都市環境分野協力のモデル都市となっているため、様々な業種の日本企業が都市環境改善に貢献している。

ヴォロネジ市の第一副市長で都市経営担当のワジム・クステーニン氏は「当市ではナイス社のスマートウェルネス住宅建設と積水化学工業による水道管のリノベーション事業がすでに始まっています。高度交通信号システムは日本企業が関わる3つ目のプロジェクトで、2か月以内には実証を終え、結果を出したいと考えています。そして4つ目には、地下鉄を作り、日建設計の協力を得て、駅を中心とした街づくりをしたいと思っています。日本企業との仕事は正確で遅滞がなく、信頼関係をもって進めることができています。日本企業の皆さんとともに全てのプロジェクトを効果的に実現したいです」と話している。

これを見て、レニングラード州も名乗りをあげた。同州は9月に、ARTEMISシステムを導入した際の効果調査について文書を締結し、将来的な導入に意欲を見せている。

NEDOは信号システム以外でも様々な分野で日本の技術を普及させる活動を行なっている。現在、ブリヤート共和国において、日本の廃棄物処理技術の普及拡大に向けたプロジェクトの事前調査を行なっている。また、極寒のサハ共和国においては、風力発電プロジェクトの事前調査を進めている。サハ共和国のプロジェクトは、カムチャッカ地方での成功体験がもとになっている。

NEDOの佐藤嘉晃(さとう・よしてる)理事は「安倍政権のもとで、ロシアが重要な国であることは政策として明らかです。その政策のもと、NEDOも積極的にロシアで技術開発協力を行なっています。実証事業を行なうことで設置コストや運用コストが明らかになるので、それを見てロシア側が導入の可否を決めることができます。成果がわかると、他の地域からも『うちもやりたい』という話が出るので、特に第一号案件は慎重にしっかりと見せなければ」と話している。

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露日関係, ロシア
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