14:58 2018年12月11日
トランプ氏

新たな貿易戦争:アメリカは日本の敵となる?鉄鋼輸入制限の真の意図とは

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タチヤナ フロニ, 徳山 あすか
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トランプ米大統領が署名した輸入制限措置の発動―、鉄鋼25%、アルミニウム10%という高い輸入関税は、新しい貿易戦争の始まりとなりそうだ。安全保障上の脅威を理由に保護主義的な政策に踏み切った米国に対し、貿易相手国は軒並み反発している。新関税導入の本当の理由は何なのか、適用された先には何が待っているのか。本稿では、ロシア、中国、そして日本の専門家の見解をご紹介する。

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2017年米国商務省のデータによれば、米国の鉄鋼製品の主な輸入先はカナダ、ブラジル、韓国、メキシコ、ロシアなどだ。このうち、輸入制限措置の除外対象になるのは現在のところカナダ、メキシコのみ。日本は「同盟国である日本の鉄鋼やアルミが米国の安全保障に悪影響を与えることはない」と適用除外を求めているが、回答は得られていない。
ロシアの著名経済誌「エクスペルト」のアナリスト、アンナ・コロリョワ氏は言う。

コロリョワ氏「トランプ氏の政策はいつも瀬戸際で、許される範囲と許されない範囲の境界でバランスを取っていますね。彼は基本的にビジネスマンであり、稼ぎたいという願いが原動力となり、様々な政策が決定されています。今で言えば、国のために稼ぎたいということです。政治とビジネスはもちろん違います。政治では、最終的に国の未来を失ってしまわないために、相手と交渉し合意する能力が必要です。米国はWTOの原則に反しています。もしトランプ氏がWTOを説得できなかったら、EUも中国も日本もその他の国も、米国製品の輸入に強い制限をかけるかもしれません。トランプ氏は今後、少しでも多く米国に特権が残るように、輸入先の国々と交渉していくはずです。問題は、どこまでトランプ氏が強情を貫くかということでしょう」

トランプ氏の政治家らしからぬ意思決定方法は、大統領就任直後から変わっていない。杏林大学の馬田啓一名誉教授は、トランプ氏が「体に染みついた不動産ビジネスの常套手段を外交戦略に使っている」と指摘している。どんなに優良物件で条件が良くとも、まずはケチをつけ、売り手にもっと値段を下げさせるという筋書きだ。また、トランプ氏は日本で米国車が売れていないことに対して「不公平」「日本市場は閉鎖的」と常々批判してきたが、自動車輸入関税のない日本に対してその批判はあてはまらない。日本で米国車が売れない理由は単に、企業努力が足りないからである。

中国人民大学経済学院の黄衛平(Huang Weiping)教授は、米国の輸入制限政策により、世界中の国々が被害者になると考えている。

黄氏「もし世界の輸出入が自由貿易という原則でなく、相互的な経済制裁によって動いてしまうのなら、この状況は非常に危険な前例を作ってしまうでしょう。これは世界貿易の秩序全体を破壊するものです。ゲームのルールを作るのは容易ではありませんが、壊すのは一瞬で可能です。中国は現行のルールを破るつもりはないですが、米国は逆にそれを目指しています」

米国の事情に詳しい地政学分析者の高島康司氏は、世界経済の停滞に懸念を示している。

高島氏「トランプ政権によるこのような保護主義的な政策は、生産拠点の世界的な分散と、金融資本の発展に主導された現在のグローバリゼーションの否定です。軍産複合体は、グローバリゼーションの結果、ロシアや中国などの新興国が急速に台頭したため、アメリカの軍事的な優位が失われつつあると認識しています。アメリカの覇権を維持して安全保障上の脅威を除去するためには、グローバリゼーションの経済成長モデルを否定してでも、製造業の国内回帰を促進し、軍需産業の高度化を図らなければならないと見ています。その結果として起こるのは、保護関税の強化による貿易戦争です。これによりグローバリゼーションは減速し、世界経済は停滞するに違いありません。そうではないことを願いますが、もしこれが今回発動される鉄鋼とアルミニウムに対する高関税の実態であるとするなら、これからトランプ政権は包括的な高関税の適用へと進むのかもしれません。もちろんこれは世界経済にとっての決定的な転機になります。これからどうなるのか注視しなければなりません」

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経済, 戦争・紛争・対立・外交, ドナルド・トランプ, 日本, 米国
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