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    プーチン大統領

    プーチン氏の大統領戦圧勝から見るロシアの実態と、日露関係への影響

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    徳山 あすか
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    19日、日本時間午後6時の段階で、ロシア大統領戦の開票率は99.84%となっている。大方の予想通り、強さを見せつけたプーチン氏の得票率は76.66%だ。低下が心配されていた投票率も67.47%と、前回の大統領選を上回る数字となった。なぜプーチン氏は圧倒的に勝つことができたのか、新体制のもとで日露関係はどうなっていくのか。スプートニクは、ロシア政治研究の第一人者である新潟県立大学の袴田茂樹教授に話を聞いた。

    スプートニク日本

    袴田氏「プーチン氏は、今回の選挙でかなりの危機意識を持ち、投票率が低くなるのを危惧して、これまでにないほど、若者世代に熱心に投票を呼びかけ、各地の行政府にも投票率を上げるようプレッシャーをかけていました。結果がわかっている選挙にわざわざ行く人は多くありませんから。地方都市では、投票に行かせるために、食べ物やイベントを用意したりして、投票所がまるで歓迎会のようになっていました。私がかつてソ連に住んでいた頃、これとまったく同じことが行なわれていました。選挙の日には普段の商店では買えないような品物が売りに出されていたのです。そういった光景は欧米や日本では見られません。ここまでやる選挙とは果たして何なのか…疑問に感じます」

    • アルタイ州寒中水泳クラブのメンバー、投票所で冷水をかぶるパフォーマンスを披露
      アルタイ州寒中水泳クラブのメンバー、投票所で冷水をかぶるパフォーマンスを披露
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    • ピャチゴルスク市・選挙会場でのコンサート
      ピャチゴルスク市・選挙会場でのコンサート
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    アルタイ州寒中水泳クラブのメンバー、投票所で冷水をかぶるパフォーマンスを披露

    ロシア国民が何よりも期待しているのは、経済状態の好転だ。プーチン氏が1日に行なった年次教書演説では、今後6年かけて貧困率を半分まで減らすと述べ、国民の生活水準を上げると強調していた。

    袴田氏「最も重要で深刻な問題は経済状態の悪化です。賃金や年金は名目上増えていても、インフレのために実質は増えていません。国民の不満はたまっており、大統領と国民との直接対話でも、このテーマが何度も出てきています。貧富の差も拡大し、国民は、腐敗・汚職が解決されていないと感じています。このような状況が長ければ6年間も続くことになるわけです。90年代の社会の混乱を知っている中高年世代は政治に安定を求めますが、若者は『今の状況がこれ以上続いたらたまらない』と感じ、安定よりも変化を求めています。ロシアの将来を担うはずの若い学生たち、能力や意欲、専門性を兼ね備えた優秀な人材と話していると、彼らの多くは外国に出たいと考えているのです。ロシアではコネや賄賂を使わないとまともな職につけないからです。プーチン氏は彼らに果たして希望を与えられるのでしょうか?それが課題だと思います」

    また、袴田氏は、「プーチン氏やラブロフ外相のメンタリティそのものにも懸念を抱いています」と明かした。昨年11月18日、プーチン大統領はクリミア半島のヤルタで行なわれた、アレクサンドル三世(ロマノフ王朝13代皇帝)の記念像オープニング式典に出席し、アレクサンドル三世の偉業を褒め称えた。アレクサンドル三世は、農奴解放で有名な自由主義者の父・アレクサンドル二世と違って、「同盟国も裏切る。ロシアには2人の同盟者しかいない。それはロシアの陸軍と海軍だけだ」というフレーズを残したことで知られている。このフレーズは、銅像の台座の正面にしっかりと刻まれている。袴田氏は、「外の世界はすべて敵とみなし、自国の軍事力しか信じないという考え方は尋常ではありません」と話す。

    アレクサンドル三世の銅像前で挨拶するプーチン大統領
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    アレクサンドル三世の銅像前で挨拶するプーチン大統領

    ラブロフ外相は21日、日本を訪れて河野太郎外相と会談する。訪日を前に15日に行なわれたインタビューでは、米国が主導するミサイル防衛システムについて「イランや北朝鮮の脅威に対処するためではなく、ロシアを完全に包囲するために構築されている」と述べた。

    袴田氏「日本人からすれば北朝鮮の核・ミサイルは極めて深刻な問題であり、真剣に脅威を感じています。しかしラブロフ氏は、日本が米韓と協力してミサイル防衛をすることに関して、北朝鮮の脅威は単なる口実にすぎない、本当のターゲットはロシアだと言っているのです。日本人は全くそう思っていないにもかかわらずです。ロシアがそうやって被害者意識を強めれば、相互理解はどんどん難しくなるでしょう」

    昨年11月にモスクワを訪問した河野外相。まもなくラブロフ氏が日本を訪れる
    © Sputnik / Mikhail Voskresensky
    昨年11月にモスクワを訪問した河野外相。まもなくラブロフ氏が日本を訪れる

    安倍・プーチン両政権は、これまで安定した日露関係を築いてきた。プーチン氏の再選によって、この路線は踏襲されるのだろうか。

    袴田氏「私は、安倍首相の、領土問題を解決し平和条約を締結して真に日露関係を正常化したいという熱意を高く評価しています。しかしロシア側に領土問題を解決しようという意図がないことが問題です。8項目の経済協力プランについて言えば、日本政府が公的資金(税金)を使い大型プロジェクトを実施するのなら、平和条約交渉と経済協力のバランスをとりながら、並行して進めるべきです。それでなければ国民が納得しないでしょう。いっぽう、アジアの国々には日本企業が投資したくなるような諸条件づくりに努力し、日本政府の後押しがなくても民間企業がリスクをとって進出しています。ロシアも、日本企業が自らのリスクで多く進出するように、もっと真剣に投資環境を改善すべきです」

    安倍首相は5月にロシアを訪問する。そこでは南クリル(北方領土)における共同経済活動が主な議題になるだろう。15日の会見でラブロフ外相は「法的側面にとらわれるよりも、共同経済活動に重きを置くべき」と発言し、日本側が求める「特別な制度」を作るつもりは全くないということを改めて強調した。袴田氏は「法的にグレーゾーンの範囲、つまり日本もロシアも独自の解釈で運用できる範囲で共同経済活動をすることになると思います。その条件下では大型プロジェクトは難しく、参入したい日本企業も多くは出てこないでしょう。あくまでも共同経済活動をした、という成果のアピールのために、シンボリックな事業が行なわれるにすぎないと思います」と話す。

    袴田氏は、日露間の人的交流や文化交流が他の国に比べてあまりにも少ないとし、「今年は日露交流年でもありますから、日露の民間レベルでの交流を発展させていくことについては大賛成です。私自身も、ロシアにとって耳の痛いことでも、率直に意見交換していきたいし、わが耳に痛いことも謙虚に聞くつもりです」と話している。

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    選挙, ウラジーミル・プーチン, ロシア
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