00:30 2018年10月17日
駐日ロシア大使

ガルージン大使インタビュー:ロシアのイメージが悪いのは何故?ロシア人が南クリルに抱く感情とは?

© 写真 : The Embassy of The Russian Federation to Japan
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徳山 あすか
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駐日ロシア連邦特命全権大使のミハイル・ガルージン氏は、ロシアに一時帰国し、スプートニクのインタビューに応じた。ガルージン大使は、プーチン大統領と安倍首相との緊密な21回の対話は日露外交史上前例のないことであり、これこそが日露関係をダイナミックに発展させている原動力であるとの見解を示した。「大使として大いに満足している」という同氏に、日露関係の様々な側面について話を聞いた。

スプートニク日本

  • 日露経済、眠るポテンシャル

ガルージン大使は、今年5月に行なわれたサンクトペテルブルク経済フォーラムにおける安倍首相のスピーチが心に残っているという。このスピーチで安倍首相は、ヤマルLNGプロジェクトを始め、ロシアからの天然ガス調達のメリットを列挙し、日露のウィン・ウィンを強調した。日露両首脳はフォーラムの枠内で行われた日露ビジネス対話にも参加し、大いに盛り上がった。

大使「日露間には、貿易・経済協力関係を本格的に活性化させるための『まだ始動していない可能性』が大いにあると思います。10年前、私が本国の外務省で日本を担当する第三アジア局長だった時は、日露間の貿易額は300億ドルにものぼっていました。現在では、180億ドルです。前年に約13パーセント伸びた結果が、この数字です。もちろんこれはポジティブな要素ですが、かつてと比べてほぼ半分に減ってしまっていることは事実です。また、投資協力も低迷しています。これらはすべて日露双方にとって、失われた利益であると言えるでしょう。経済・産業界はこの問題を認識していますし、これを解決しようと積極的に動いています。政府間、そして経済界における数々の対話が近いうちに行なわれ、より貿易・経済関係が発展していくことを望みます。大使館としても、日本で行なわれるロシアビジネス関連の大規模なイベントには、ほぼ毎回協力しています。

  • 平和条約締結は日露関係発展の前提条件ではない

ガルージン大使は、ロシアの言い回し「荷馬車を馬の前に置いてはいけない」を例に挙げ、平和条約締結→日露関係発展、という順序に固執するのはナンセンスであり、まずは日露関係全体を発展させることによって新しい相互協力の機運、理解、信頼を高めていくことが重要との見解を示した。

大使「平和条約締結の問題があることはわかっています。しかし私は、この問題の解決を、日露関係発展のための前提条件とする必要はないと考えます。それはとても非生産的なことです。平和条約締結の問題は複雑でデリケートであり、高い感受性と緻密さが求められます。

ロシア側は日本人が南クリルに対して抱いている感情を最大限尊重しています。そのことは、ビザなし訪問や墓参の実施などによって示されています。と同時に、同意していただきたいのは、ロシア国民が、南クリルに抱いている感情も考慮されるべきだということです。南クリルが第二次世界大戦の結果、合法的にソ連のものになったということは、国連憲章によっても確定されています。我々の国が2700万人もの犠牲者を出して、ナチスドイツとその衛星国に勝利するにあたり最も重要な貢献をしたことは、覚えておくべきことです。あの恐怖の戦争の記憶は、社会や人の心の中で、今に至るまで生きています。南クリルがロシアに引き渡されたことは、戦争の結果のうちの一つです。私たちは、日本社会において、ロシア国民が抱いている感情への理解が深まることを期待しています。

  • ロシアの伝統と文化を広める

ロシア大使館は日本に住むロシア国民や日本人のために、文化行事を提供している。今年2月、春の訪れを祝うイベント「マースレニッツァ」が初めて開催され大盛況だったほか、5月には、反戦運動「不滅の連隊」が行なわれた。

大使「不滅の連隊には、約300人が参加し、命をかけて祖国を守ってくれた人々の記憶に敬意を捧げました。歌手のニキータ山下さんも参加してくれましたし、ソ連の軍服に身を固めた日本人のアーティストの皆さんは戦時中の歌を歌ってくれ、とても感動的で、私たちの心をひとつにしてくれました。こういった催しを今後も定期的に開催していきたいと思います。

  • メディアに歪められるロシアのイメージ

内閣府が実施している「外交に関する世論調査」によれば、昨年10月の段階でロシアに対して「親しみを感じない」とする回答者の割合が78.1%にものぼっている。一方、同調査でアメリカに親しみを感じる回答者は78.4%だった。なぜこのような数字になってしまうのか、日本におけるロシアのマイナスイメージを払拭するにはどうすればよいか、ガルージン大使の見解を聞いてみた。

大使「私がもし日本国民なら、私自身もきっとロシアに対して親近感を抱かなかったでしょう。日本メディアの報道を目にしているからです。残念なことに多くの場合、日本メディアは、ロシアに関する偏向的な、意図的に歪めた正しくない情報を読者に届けています。ですから、日本人がロシアに好感を抱かないのは、全く驚くことではありません。これはロシアを悪者にしようという、組織展開されているプロパガンダの結果です。多くの一般の方はそういった情報を真に受けてしまっています。この状況を打破するには、より客観的で誇張されていない、プロパガンダ的ではない、正しい情報を日本の読者、日本社会に届けることが必要だと考えます。

7月14日の読売新聞の社説を例に挙げてみましょう。社説「NATO会議 憂うべきトランプ氏の同盟観」は、 「北大西洋条約機構(NATO)はソ連・ロシアの脅威に対抗し、欧州の平和を支えてきた。」という一文で始まっています。ワルシャワ条約機構(注:NATOに対抗するため1955年にソ連を中心に作られた軍事同盟)が正式に解散し、ソ連が崩壊した今、何をもってして、ロシアがNATOにとっての脅威だと言えるのでしょうか。NATOは解散していません。逆にNATOこそが、東方に新しい加盟国を拡大し、軍事インフラを拡大し、ロシア国境ぎりぎりまで迫っています。

NATOは90年代、ソ連・ロシアに対し、東方に拡大しないと約束しましたが、彼らは約束に反した行動をとっています。日本の最大手新聞は、こういった状況を完全にひっくり返して解釈し、脅威はロシアから生じていると主張しています。

更に読売新聞は、ロシアが力によって現状を変更した例として、クリミアを挙げています。しかしクリミアは住民の民主的な意思表示によってロシアの一部となったのです。住民らは、NATO加盟国によって支持された、武力革命による違法な権力交代を良しとしませんでした。マイダンの映像では、NATO諸国の外相やEUの上層部、アメリカ政府の高官などを目にすることができます。クリミアの住民は彼らがウクライナ大統領打倒を大っぴらに奨励していることに驚き、ロシアの一部となることに賛成票を投じたわけです。

力による現状変更を始めたのはロシアではなく、1998年、NATOによってです。ユーゴスラビアが空爆され、住民投票もなしに、コソボの独立が一方的に宣言されました。これこそが力による現状変更です。読売新聞はこのことを知らないのか、あるいは忘れているのでしょうか。戦後ずっと、こういった情報を目にしていれば、ロシアに対する客観的ではない見方が蓄積されていくのは当然です。

今回のサッカーW杯は、ロシアが本当はどんな国なのか、オープンかつ好意的で、安定し、安全な国であるということを世界に証明する機会となりました。この大会が日本のサポーターにとっても、ロシアをより知る助けになったとしたら、嬉しいことです。

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露日経済協力, 文化, 戦争・紛争・対立・外交, 情報戦, 露日関係, 日本, ロシア
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