03:56 2018年12月17日
映画監督、黒沢清さん モスクワは「熱のある町」

映画監督、黒沢清さん モスクワは「熱のある町」

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第52回モスクワ日本映画祭で観客、批評家の一番の人気をさらったのは黒沢清監督だった。黒沢清さんといえば20本の長編映画ほか、数多くの短編、ドキュメンタリー映画、テレビ映画を撮影し、数々の国際賞を受賞しており、映画祭でも重鎮役だ。今回のモスクワの映画祭には『予兆』と2013年にウラジオストクで撮影された『セブンス コード』と黒沢清監督の2つの新作作品が上映された。

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モスクワで黒沢清監督に一番よく聞かれた問いは「黒澤明監督のご親戚ですか?」というものだった。この問いに黒沢さんは「苗字が同じなんです」と慎ましやかに答えている。スプートニクは黒沢清監督にそれ以外の問いを投げかけた。

スプートニク: 黒沢 さんは映画『セブンス コード』をウラジオストクで撮影されましたので、ロシア訪問は初めてではないですが、 モスクは初めてですね。ウラジオストクと比べて印象はどうでしょう。

黒沢清:モスクワでまったく初めてです。とにかく日本にいると、モスクワというのはとても政治的かな町という印象があって、とても冷たく、いかめしい町なのだろうなぁと思っていたのですが、来てみたらまったく違いました。本当に美しくて、華やかで。当たり前ですが、普通のモスクワの人たちが生活している。本当に熱のある町なんだなぁと初めてわかりました。ウラジオストクはいいところでしたが、ほとんど撮影ばかりしていたのであまり町をよく見るチャンスがなくって。でもウラジオストクも海に面していますので、日本とは建物も人も全く違うのですが、海があって、すぐ山になっていて地形が日本の港町にもありそうな、親しみを感じる地形でした。

スプートニク: ロシア映画はどんなものをご覧になりましたか? ロシアの監督たちのことは何かご存知ですか?

黒沢清:残念ながら新しいロシア映画は日本でなかなか見るチャンスがありません。ちょっと古いもので、多分ロシアの映画を全部からした極一部にすぎないでしょうが、結構大好きな映画が沢山あります。ヴィターリー・カネーフスキイ、アレクセイ・ゲルマン、アレクサンドル・ソクーロフとか…。もうちょっと古いとアンドレイ・タルコーフスキイとか…。みんな相当古い方ですし、ロシア映画全体の中ではかなり偏った人たちだろうと思うのですけど、そういう人たちの映画は大好きで、見ています。

スプートニク:少し前に『旅のおわり、世界のはじまり』という映画をウズベキスタンで撮影されていますね。内容はシルクロードと関係があるのでしょうか。

黒沢清:ウズベキスタンと言えばシルクロードの真ん中の国です。ウズベキスタンは初めてきましたが、大変刺激的な国でした。映画の内容は直接シルクロードとは関係ないのですが、何も知らずにウズベキスタンに初めて行った日本の若い女性が色々な大変な目にあいながらも、最後にはウズベキスタンとそこに住む人々のことを理解していくという物語になっています。

スプートニク:今回 の映画祭に黒沢さんのホラー映画『予兆』が出ていますね。批評家は黒沢 さんを「夕暮れの巨匠」と呼んでいますが、ご自身はどう思われますか。『予兆』の中に込められたメッセージは何でしょうか。

黒沢清:自分のことはよく分からないですね。『予兆』はホラーの要素もありますが、ジャンルというとSFですね。ただ何でもない日常、日常生活をおくる人々しか出てきません。少しずつ日常変化し、見慣れないものがそこに進入してきて、最後に大きく変わっていくというような物語ですので、怖いところもあります。特に何らかのメッセージを言おうとして作った映画ではありませんが、知らないうちに日常が少しずつ変わっていって、ひょっとすると世界が崩壊してしまう。そういう危険が現代、どこに潜んでいるか分からない。だからよく注意して慎重に生きていかなければいけないというメッセージを観た方は感じてくれるかも知れません。

「エトノスカスキ(民話)」
© 写真 : 「エトノスカスキ(民話)」
スプートニク:あなたは監督と教師の仕事を両立されていますね。どちらがより難しく、もっと興味深いですか?

黒沢清:僕は監督です。大学出たし、学生に映画教えているんですが、僕は教師でも、教育者ではありません。つまりどう映画を教育できるのか全然知らないのです。自分が教えてもらったこともないし。だから僕が若い人に言えるのは、自分がどうしているか、僕だったらこうする、僕の経験からいくとこうだと、自分のことに限られます。映画全体をどう作るかを客観的に教えることが出来れば、それは教育だと思いますが、僕は全体ではなくて自分のことしか分からないので教育者ではありません。でも若い人たちは僕の個人的な経験を聞いて、色々参考にしてくれているようです。

スプートニク:ロシアでは日本の映画、日本ではロシアの映画をたくさん観る機会はありません。この2つの国がもう少し親しくなるために何が必要だと思いますか。

黒沢清:そうですね…。やっぱり例えば映画を通じて、また色々な文化を通して、本当に人と人がこうやって触れ合うことです。観光や旅行に行ってもいいです。僕もモスクワ来て、初めてこんな町だと分かりました。日本にいると分からないですから、国と国がどうするかなど関係なく、人と人が映画や町や色々なもの、食べ物なども通して、どんどん、どんどん勝手に行ったり来たりして知り合ってしまえば、国もついていくのではないかと思います。

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