21:23 2019年08月25日
太田敏正氏

作家の太田敏正氏:納得が親の最大の助け

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日本の作家でジャーナリスト、評論家の太田敏正氏の著書のロシア語訳『最良の父』(日本語原題『忙しいビジネスマンのための3分間』)のプレゼンテーションがモスクワで行われた。著者は二人の子どもを持つ父親として、仕事でとても忙しくて時間の無い父親がどのように子どもに接するべきか、数分しか時間がないときに何をして遊ぶべきか、数秒で子どもの心に残る会話をすることができるのかを語っている。

スプートニク日本

太田さんはモスクワ滞在中、ロシアの児童心理学者のオリガ・マホフスカヤ氏との間で活発な議論が繰り広げられ、それにスプートニクの記者も参加した。多くの国と同じく、ロシアでも日本でも、子育てを主に行っているのは母親である。ロシアの男性はこのように言う。「仕事から帰ると子どもはもう寝ている。家を出るときも、まだ寝ている。」結果的に、家族は補償されているが、子どもはお祝いの日にしか父親の顔を見ない。残念ながら、現在この状況は日本のみならず、ロシアでも現実となっている。太田さんによると、父親が働いている時でも、子どもが父親の存在を感じられる方法があるという。

太田敏正: 日本のお父さんたちは世界一労働時間が長い男性です。なかなか平日子どもの世話が出来ない分、お母さんに負担がよっています。お母さんが一人で子育てしていることを、最近、日本ではワンオペ(one operation) 育児といっています。とてもハードなので、今、出来るだけお父さんも育児しようと頑張っています。忙しいので、短い時間の中で何をして良いか分からない。そこで、まずは三分間でもいいから、できることを考えてみようというのがこの本のアイデアです。そして三分間には、実は日本人にはとても大きな意味があります。特に男性にとって。ウルトラマンは三分間で相手を倒すのです。日本人の男の子のヒーロです。一緒にいなくても、お父さんとつながっていると思ってくれることが理想です。まずは、子どもに対して、君がいること自体が嬉しいよ、と伝えること。それから、離れていても君のことを思っているよ、と伝えること。最後にもっとも大事なのが、妻のことを一生懸命愛すること。そうすると妻がパパのことを沢山子どもに話してくれるからです。

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オリガ・マホフスカヤ氏によると、ロシアでは厳しい教育はおむつの時から始まるという。多くの母親は常に子どもを厳しく叱り、子どもが駄々をこねたり、うるさくしたりするとき以外でも、子どもにいろいろと注意します。子どもは常に「ダメ」の壁に囲まれているのです。同時にロシアでは、日本では子どもは5歳になるまでほとんど何をしても叱られないと信じられています。そのとおりなのでしょうか?

太田敏正: 半分正しくて、半分違っています。大昔の日本では、確かにすごく自由にさせていたらしいです。20世紀になってから、日本でも厳しい子育てが流行りました。ですけれども、また最近、21世紀になってから、子どもは自由にさせた方がいいと考える親も増えています。ただし何でもやっていい、わがままを許すという意味ではありません。大人から見れば悪いことでも、子どもはそれを悪いと思っていないことが多いです。そこで、子どもが何かをした時に、いきなり叱るのは良くないと考えられています。

太田さんによると、両親はまず子どもの動機を理解しようとしなければならないという。なぜなら、子どもはまだ何が良くて、何が悪いのかを理解しているとは限らないからからである。

太田敏正: まず、子どもの気持ちを共感的に理解してあげる。その上で、ダメなことはダメと教えてあげればいい。そういうふうに考えて、何でもやらせていいわけではないけれど、悪いこといきなり叱ることは多くはありません。そうすることによって、今、日本人は子どもたちの自発性を大事にしたいと考えています。試しにやってみてほしいのですが、もし子どもが何かよくないことをやっていても叱るのではなくて、ああそういうことをしたいんだねというふうに共感を示してあげる。そうすると、子どもが落ち着くことはよくあります。僕もお父さんになったばかりのころには、悪いことしたら叱ればいいと思っていたのです。友達の家に遊びに行ったときに〔僕の友達の〕お母さんがもっと優しく接してあげた方がいいわよとアドバイスをくれたのです。試してみたら本当にうまくいったのです。それで僕の育て観は大きく変わりました。実際、子どもと同じ目線に立ってコミュニケーションをすると、ちゃんと子どもは分かってくれるんだという安心感、信頼感ができてくると思います。それは子どもにとっても、ものすごく励ましになると思います。

太田敏正: 子どもはどうしても人に迷惑をかける存在なので、いつもお父さんとお母さんは遠慮してしまっています。例えば、子どもが電車の中で騒いだり走ったりすると、親のせいといわれてしまうのです。それがお母さん、お父さんにとってすごくストレスになっている。このストレスを子どもにぶつけすぎてしまう親もいます。だから僕は電車の中でちょっと騒いでも子がいても、ニコニコしています。親をリラックスさせるために。これは日本の社会の問題だと思います。海外で子育てをしている日本人のお母さんは、海外の方が子育てがしやすいとよく言います。周りの人たちがすごく優しいと言います。

ロシアの親の間で最も議論されている問題が子どもへの罰である。言うことを聞かなかったり、悪い行いをしたりした場合は厳しく罰しなければならないと考える親もいれば、それには絶対に反対する親もいる。太田敏正氏の基本姿勢は、子どもに対する厳しさには柔らかさと説得力が必要だというものだ。

太田敏正: 子どもをしつけるのに罰は必要ないと、今、日本では広く考えられています。まず何か悪いことをしてしまったときには、それが悪いことであると教えた方がいい。でもそのときに怒鳴ったり叩いたりする必要はない。そして、そういうことをしたくなった気持ち自体を受け止めてあげる。そうすると子どもは自然におさまるはずなんです。小さいうちは自発性を育てることが大事だと考えられています。社会性はある程度大きくなってからでないと、本当には身につかないだろうと考えられています。だから、あまり小さな子に社会性を求めるのは早すぎるということがあり得ます。だから、社会性を少しずつ教えていくことが大事なんですが、そのときに分かると期待しない方がいいと思います。時間はかかるけれども、そのときはくれば必ず理解してくれるはずです。

ロシア人でも日本人でも親が抱える問題は共通している。それは、子どもにとって本よりもずっと魅力的なものとなってしまうガジェットである。これに対抗する必要はあるのだろうか?

太田敏正: ガジェットについては、いまだに学者さんの中には、子どもには触らせない方がいいと言っている方はいます。ですが、それをすべて排除するというのは、今の状況ではもう現実的ではないかなと思います。人間は危険なものを使いこなすことで進化してきました。ガジェットにも危険が沢山あると思います。例えば、スマホ中毒です。でもそれを小さなころから少しずつ使っていって、危険との距離のとり方を学んでいくことが大事だと思います。自分で自分を律することができるように時間をかけて小さいときから育てた方が僕はいいと思う。10歳を超えてから突然触らせると、もうコントロールが効かなくなるから、小さいときから少しずつ慣らしておいた方がいいんじゃないかと思います。

ロシアでは子どもの愛国教育が重視されている。日本にも同じ様なものはあるのだろうか?スプートニク記者のこの質問に、太田さんは次のように答えた。

太田敏正: そういうことはすごく警戒されていますから、していません。時々そういうことをしようとする動きがあると、それを日本の社会は避けようとします。親を大切にすることをわざわざ親が教えないのと同じように、自分の中から作られるもの、出てくるものであるべきだと考えられています。つまり、親が愛されたいのであれば、自分が愛される親であること、国が愛されたいであれば、愛される国であることが重要だと考えられています。だけど、それをやろうとする人たちはいるのです。その人たちが今、すごく力を持っているのは事実です。だから、僕はすごく警戒しています。

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子供, 文化, 教育, 露日関係, 日本, ロシア
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