06:35 2019年04月20日
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イトゥルップ島のレニウム採掘 日露共同の火山開発は利益を生むか?

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タチヤナ フロニ
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領土紛争は土地の帰属の問題だけでなく、そこに存在する資源にも関わる。南クリル諸島ではそうした資源は文字通り、足元のクドリャヴィ火山の岩間から噴出している。 レアメタルであるレニウムに関しては、学界も断言しているように、今日、それなしではハイテク経済を想像することは不可能だ。

スプートニク日本

ロシアと日本の両政府が南クリル諸島に存在するこの希少な金属の採掘に共同で努力することができるかどうかについて、スプートニクは著名な火山学者で火山・地球力学研究所のゲンリフ・シュテインベルグ所長に聞いた。

シュテインベルグ所長は、クドリャヴィ火山のレニウムの発見者の一人。発見以来、シュテインベルグ氏は産業規模で南部クリル諸島での鉱山採掘は行なわれていない。「レニウムは戦略的金属だ。しかもレニウムそのものの鉱床は世界のどこにも存在しない。レニウムをとるにはモリブデン鉱石を採掘し、その濃縮物から抽出されねばならない。モリブデンの最大の採掘国はチリとペルーだ。ロシアでは、レニウムの大部分は主に国防産業で使用されている。つまり航空機およびミサイルの主要金属であることから、これがロシアにとって戦略的にどれだけ価値のあるものであるか、説明がつく。レニウムが世界中で輸出資源としての価値を持つようになったのは、電子機器や携帯電話の生産に巨大な需要が生じたのが理由だ。」

だがまさに国防および宇宙産業の分野では、高い耐火性を持つこの銀色の重金属は他に代わるものがない。なぜならばレニウムなしにミサイルを発射することはできないからだ。レニウムの融点は3千度を超える。まさにこの特性がレニウムを真に戦略的なものとさせている。

1980年代、モリブデンから作られるレニウムの世界の生産量の約半分はソ連が占めていた。しかし、そのレニウムは主にカザフスタンで抽出されていた。つまりこれは今日、別の国のものだ。ソ連崩壊後、ロシアはほとんどこのレアメタルがないままだった。ところが1990年代、イトゥルップ島の自然は予想外にもロシアにレニウムという贈り物を捧げてくれたのだ。しかもイトゥルプ島のようなレニウムは他に類がない。シュテインベルグ所長は次のように考えている。

「クリル諸島では、特殊技術を使ってモリブデンからレニウムを抽出する必要がないことが判明した。クドリャヴィ火山は人間に代わって必要なことをみんなやってくれたのだ。レニウム鉱床は直に噴火口で発見された。採取ライセンスもある。しかし残念なことに、ロシアはこれまでこうした有り余る自然の恵みを十分に利用してこなかった。それは1990年代の経済危機によって説明がつくのだが、今は幸運なことにサハリン州にはロシア政府から大きな注目が向けられており、レニウム鉱床の開発は連邦の目的別プログラム『クリル諸島の社会・経済発展2016年-2025年』に含まれている。」

とはいえ、20年以上の遅れは、財政状況だけでなく、イトゥルップ島の厳しい気候と火山による難しい環境にも関係している。特にこうした環境から、活火山であるクドリャヴィ火山の火口でのレニウムの抽出が果たして産業レールに乗せられるのかという民間投資家の疑問と不信を呼んでいる。

しかし シュテインベルグ所長は逆に自信を深めている。それは1910年にこの火山で働いた日本人の歴史的経験が確信を与えているからだ。さらにシュテインベルグ所長は、イトゥルップ島からレニウムを抽出することがまさに、南クリルの共同経済発展へのロシアと日本の最も重要な推進力となり得ると考えている。

「1940年まで30年間にわたって、日本人たちはクドリャヴィ火山で火薬製造のための硫黄を採掘していた。 火山噴火口の天然硫黄は、レニウムと同じガスから形成されている。硫黄を採掘するために日本人たちは、火山のすぐ近くと直にその山肌にロープウェイと狭軌鉄道(約4.5キロ)を敷設した。はじめにこれらで硫黄が降ろされ、その後、小さな冶金工場が立っていた海岸まで運ばれた。21世紀にこれが不可能というはずがない。レニウムは戦略的な金属であることや、南クリル諸島の全島がロシアにとって地政学的に非常に重要な地域であり、戦略的意義においても重視されることから、外国人の立ち入りはおそらく許可されないだろう。しかし、経済もまた戦略であることから、プーチン大統領と安倍首相がクリル諸島の共同経済開発に何らかの妥協策を見出せないともかぎらない。その場合、日本の投資と技術援助を受けたレニウムのプロジェクトが早期に実現されることもありうる。そうなれば、両国にかなりの利益をもたらすだろう。」

いずれにせよ今日、日本はレニウムの大部分を中国から購入しているが、ロシアとレニウムの共同採掘をすることで日本政府は中国政府との競争が可能になる。なぜならば、世界のレニウム年間総消費量は60トン。これに対し、クドリャヴィ火山のガスは地球の内部から地表まで少なくとも年間10トンのレニウムを放出していると考えられているからだ。

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