日本のポップ三味線奏者が日本文化フェス「HINODE」で観客の心をつかむ  次は東京オリンピックか?

© 写真 : HINODE POWER JAPAN川嶋志乃舞
川嶋志乃舞 - Sputnik 日本
サイン
モスクワで開催された第8回日本文化フェスティバル「HINODE POWER JAPAN」(3月30~31日)には、日本から招待されたたくさんの才能豊かなアーティストが出演した。通信社スプートニクは、このスプリングフェスでもっとも存在感を示したスターの一人で、エネルギッシュな三味線奏者の川嶋志乃舞さんに話を伺った。川嶋さんはインタビューで、自身の音楽の中でどのようにして伝統的なものと現代的なものの独特の組み合わせにたどり着いたのか、そして、東京オリンピックで演奏したいという夢について語ってくれた。

スプートニク日本

三味線への愛のルーツ

― 以前、産経新聞のインタビューで川嶋さんは3歳で 三味線に 興味をもったこと、そして「三味線の野外ステージを見て、私もステージで演奏し、大勢の人に見てもらいたいと思った」と お話しされていましたが、やりたいと思ったのが 他の楽器ではなく 、ギターでも、まして現代楽器ではなく、まさに三味線だった理由はなんですか。川嶋さんが好きなのは三味線の音色そのものでしょうか。それとも邦楽全般ですか。

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川嶋さん:両親や祖父母など家族は誰も三味線をやっていませんでしたが、何か和楽器をやらせたいという両親の希望で、よく和楽器を観に行く機会があり、その頃から興味を持っていたそうです。しかしそれよりも、当時ステージで既に演奏をする5歳くらいの子もいたので、負けず嫌いの私は、同じくステージに上がりたいと思ったのではないか、という感情をなんとなく覚えています。

習い始めても、最初から三味線は持ちきれないので、民謡の歌や鳴り物(和太鼓など)の勉強から始まりました。

三味線の音が好き、というよりも、他人と違うことがしたかったんだと思います。何せ3歳の時の話なので、あまり覚えていませんが。(笑)

インスピレーションになったアーティストと音楽

― 川嶋さんの作品の特徴は、ポップスやジャズなどの洋楽と、津軽三味線を融合させた新しい音楽という点です。外国の音楽ではどんなものが好きですか。また、好きなアーティストはいますか、くわしく教えてください。特にあなたが好きなジャズではどんなアーティストが好きですか。他のジャンルでは好きなものはありますか。

川嶋さん:私のルーツはジャズ、ファンク、ラテン、それからバート・ バカラックなどから影響を受け1980年頃に日本で流行った「渋谷系」というジャンルです。特に影響を受けたアーティストは、ビル・エヴァンスシンバルズピチカートファイブ

しかし最近はクラブミュージック、R&B、エレクトロスイングも大好きですね。一人でスターのような輝きを放つアーティストに惹かれます。ジャンルはバラバラですが、トム・ミッシュディミー・ キャット二階堂和美などをよく聴きます。そう考えると、私が好むのはバンドよりもおしゃれなソロアーティストが多いです ね。自分に似ている人をリスペクトしがちなのかも。

日本の現代音楽は?

― 日本の現代音楽についてどのような感想を持っていますか。日本の現代音楽は好きですか、それとも日本の伝統音楽や外国の音楽 のほうが親しみを感じられ ますか。

川嶋さん:今の日本の音楽も大好きです。キラキラしていて、アニメの世界のようなポップさも秘めている曲も多いので、他国と比べることはできません。元気や勇気をもらう曲はたくさんあるし、とても質の良い音楽がたくさんあります。「フィロソフィーのダンス」というアイドルグループや、「ORESAMA」というエレクトロユニットなどオススメです。

歌唱の才能

― 私の知る限り、 川嶋さんは演奏者としてスタートし、そして今では歌も歌っておられます。川嶋さんの声は 日本の歌 手によくあるような高音ではなく、驚くほど低音です。そのことがあなたのパフォーマンスをとても大人びて、素晴らしいものにしていると思います。歌に関しては、なにか特別なレッスンを受けられましたか。

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川嶋さん:ありがとうございます。元々は三味線プレイヤーとして活動していたので、歌は歌っていませんでしたが、3年前の21歳頃から歌い始めました。J-popの世界では、歌のある曲がほとんどだからです。歌は好きだったし、自分で書いてみたかった理由も兼ねて、J-popの世界で三味線 と共に生き残るための手段でもありました。

ポップスソングの歌唱法については、すべて独学です。好きな音楽をたくさん聴いたり、youtubeやライブ会場で、口の開き方や発音の仕方などを勉強しています。しかし、日本民謡のレッスンには今でも通っています。発声方法こそポップスとは違いますが、日本語を発音し、意味を伝える上での「日本の心」を学ぶなら、よくあるボイストレーニングでは足りません。

「HINODE」からのビデオ。川嶋さんの演奏は1:43:50から2:14:10まで

日本的な「かわいい」から大人っぽい音楽へ

― 川嶋さんの最近のご発言で日本的な「かわいい」 ポップカルチャーをパフォーマンスに取り入れ、「『女の子』から脱出したい」というのがありましたが、外見のイメージチェンジ以外に、自分が創作する音楽をもっと明るく、ポジティブなだけでなく、よりシリアスというか、奥の深いものに変えようとされておられるのでしょうか?

川嶋さん:そうですね。今24歳なのですが、 生活の中で感じる大人の女性の感情や落ち着きなど、「女の子」でいるだけでは表現できない世界観をアウトプットできるようになりました。ジャズやクラブミュージックが好きなので、大人っぽくてお酒が似合う曲もたくさん書きたいと思っています。

目標は東京オリンピック2020の開会式

今の第1の目標は東京オリンピック2020の開会式で演奏することだとうかがいましたが、そのためにどんな構成がいいかなど、何かお考えがありますか。また、すでにそれに向けた準備を開始されておられるでしょうか。

川嶋さん:まずお声掛けいただけるように、自分の音楽を日々発信し続けています。ロシアのみなさんも応援してください!

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三味線は「ババ臭い」?

― 例えば「ババ臭い」といった三味線に対する日本人のステレオタイプの態度は変化しているでしょうか。全体としてご自分のパフォーマンスや創作から、どのようなフィードバックを得られておられますか。

川嶋さん:「和楽器バンド」の登場で、「ババ臭い」 という印象は「かっこいい」に大きく変わったと思います。 しかし、 彼らのターゲットはコスプレ好きやアニメ好きなどのサブカルチャー層なので、私はもっと気軽に楽しめるメインカルチャーに乗っていきたいですね。

私は、バンドという固定イメージのついた団体にいるわけではなく、常に自分自身の音楽やスタイルの変化を楽しんでいるので、時代に合わせてファッショナブルに音楽が出来ていることが何よりのフィードバックかなと思います。

ロシアに対する印象

― 川嶋さんはロシアにどういった印象をお持ちですか? こんなことをご存知だとか、これが好きだとか、ありますか?行ったことはおありでしょうか?

川嶋さん:ロシアは初めてです。 ロシアは女性が美しいのが印象的です。それから最近では、かっこいい戦車をテーマにしたアニメなども日本で流行っており、それをきっかけにロシア語を勉強する人もいますね。まだ知らないこともありますが、お土産に可愛いマトリョーシカを買っていく予定です。

© 写真 : HINODE POWER JAPAN川嶋志乃舞さん、「HINODE POWER JAPAN」で
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川嶋志乃舞さん、「HINODE POWER JAPAN」で

短期集中型は問題ではない

―  川嶋さんは前に、練習はあまり好きではなく短期集中型で、練習時間は当時からわずか30分だったとおっしゃっておられました。私はこれにはとても驚かされました。普通のリスナーとしては、特にポップ・ ミュージックということを考慮すると、川嶋さんの演奏は卓越していると思います。楽器に向き合う姿勢は時とともに変化したと思われますか。また、弦楽器の演奏方法を学びたいけれど、難しいと感じている人たちになにかアドバイスできることはありますか?

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川嶋さん:私は、長時間練習をするのは今でも好きではありません。逆に練習が少ない分、良い音楽は1曲につき2~ 3時間聴き続けて、隅々までチェックします。リスペクトする音楽・演奏と、自分のそれらとの差や違いはなんだろう? というポイントを研究するためです。これは、プロアーティストとして自覚してきた頃からの変化ですね。 実際に楽器を手に取って長時間練習しなくても、体や頭に染み込ませれば効率よくレベルアップできます。できないことをよく理解せずに必死で練習しても、苦しくなってしまうので…まず、頭や感覚で音楽を感じ、その音楽の癖まで好きになることが、私にとって大切です。私の目指す三味線での音楽は特に、演奏法のお手本が無いので、他の楽器から研究することがほとんどです。たとえば、 ギターやサックスからメイン楽器としてのポイント、ドラムからはグルーヴを出すポイントなど。とにかくたくさん聴いて研究する方が自分に合っていますね。

みなさん、楽器を弾きたい気持ちがあれば、 練習ばかりでなくても、自分の好きな音楽を、好きな方法で楽しんでみてほしいです!

豆知識:

  • 文化フェス「HINODE」で川嶋さんは、 三味線の弾き語りだけでなく、ボーカルコンクールの参考委員も務めました。川嶋さんはロシアの熱心な参加者たちに感激し、彼らが技能をさらに向上させ、日本の歌をさらに深く理解し、感情を込めて歌うことを学んでほしいと語った。
  • 川嶋さんは8歳の頃から様々な海外公演に参加している。行った国は、イタリア、スペイン、オーストラリア、スリランカ、そして2018年12月に行った台湾です。台湾公演は、はじめて文化交流プロジェクトではなく、ライブハウスでパフォーマンスしました。
  • 川島さんのほとんどのビデオクリップは自分でプロデュースしたもの。
  • どこか似ているアーティストは同じ日本人で、中国の伝統楽器「 二胡(Niko)」を弾きポップスを作曲する同世代の美人プレイヤーKiRiKoさ ん。「同じような境遇にいる」と川嶋さんが言う。
  • やる気の元は素敵な洋服とそれぞれで頑張るアーティスト仲間やフ ァンの存在。
  • 音楽の他に好きなものは美味しいご飯、犬と友達とのホームパーティー。
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