16:48 2019年06月27日

日本でのナボコフ:浮薄なロリータからナボコフ協会まで

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1965年11月、ウラジーミル・ナボコフは、注目を集めた長編小説『ロリータ』のあとがきで次のように書いている。「『ロリータ』は多くの言語に翻訳されてきた。アラブ諸国、アルゼンチン、ブラジル、ドイツ、オランダ、ギリシャ、デンマーク、イスラエル、インド、イタリア、中国、メキシコ、ノルウェー、トルコ、ウルグアイ、フィンランド、フランス、スウェーデン、日本では単独の作品として出版されている。オーストラリアでは販売が許可されたばかりだが、スペインと南アフリカでは今でも出版が禁止されている。鉄のカーテンの向こう側のピューリタンの国々でも出版されていない・・・」

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世界中の読者たちがナボコフについて議論し、「ロリータ学」という用語が世界のポップカルチャーに浸透し始めた頃、日本では女の子たちがロリータ・ファッションに身を包み、ソ連ではナボコフという作家について聞いたことがある人がいれば上出来だった。現在、ファッションスタイルとしてのロリータは多くの国に普及しているが、このファッションはもともと1970年代に日本で始まったものである。ロリータ・スタイルの特徴は子どもっぽさと純心さ、人形のような容姿を強調したところにある。名称はナボコフの小説のタイトルと完全に一致しており、もちろんそれは偶然ではない。ナボコフのロリータは、子どもと若者の境界、清純と不徳の境界にある十代の少女なのである。

© AFP 2019 / Caroline Gardin
ロリータファッションをした日本の少女

ナボコフの作品がソ連で初めて出版されたのは1986年。それはチェス選手を描いた『ルージン・ディフェンス』だった。『ロリータ』が出版されたのは1989年。ナボコフの出版がロシアで絶頂を迎えたのが1999年、ナボコフ生誕100周年を記念して出版された、ロシアのナボコフ研究者アレクサンドル・ドリーニン編のナボコフ作品集である。同1999年、日本では日本ナボコフ協会が設立された。協会員で翻訳家の中田晶子さんが、協会の活動についてスプートニクに語ってくれた。

© AP Photo /
ウラジーミル・ナボコフ

スプートニク:日本ナボコフ協会が設立されたのはいつですか?設立者はどなたですか?

中田晶子:  ナボコフ生誕100年の1999年春に協会設立大会を開催しました。英文学者とロシア文学者8名ほどが中心となって創設しましたが、協会員は、文学研究者と読者を合わせて100名ほどになりました。初代会長は、日本英文学会(日本の外国文学研究の学会では最大のものです)会長も務められた富士川義之先生です。富士川先生は、ナボコフについて日本で初めてのモノグラフを出版された他、『セバスチャン・ナイトの真実の生涯』(The Real Life of Sebastian Knight) や淡い焔 (Pale Fire)を訳しておられます。現在の会長若島正先生にご紹介することも可能です。若島先生は、ナボコフについての本を多数出版しておられる他、『ディフェンス』(Defense) , 『ロリータ』 (Lolita),  『アーダ』(Ada), 『スピーク、メモリー』(Speak, Memory) 等を訳しておられます。チェスプロブレムのInternational Masterとしても有名な方です。ナボコフ協会の会員は残念ながらだいぶ少なくなってしまいましたが(現在は60名程度)、協会の活動は活発におこなっています。

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スプートニク:日本では現在もナボコフの作品が読まれていますか?日本語での翻訳は出版されていますか?ナボコフの作品の魅力はどこにあると思われますか?

中田晶子:  はい、読まれています。人気のある作家です。小説は短篇も含めてすべて翻訳があります。英語版からの翻訳が多いのですが、現在ロシア語版からの翻訳の選集が一つ出版されつつあります。私自身は、『透明な対象』(Transparent Things) を共訳しました。

 ナボコフの本の魅力をどこに感じるかは、読者によって異なると思いますが、独創的な文章や鮮やかなイメージに惹かれる人が多いのではないでしょうか。それに加えて、作品中に隠されている世界の豊かさ― the other worldもその一つです―も他に例を見ない素晴らしいものと私は思います。

スプートニク:日本の文学の専門家によるナボコフ作品の研究は行われていますか?

中田晶子: 日本文学研究者でナボコフを研究している人はあまりいないと思いますが、比較文学のジャンルで、ナボコフは、谷崎、三島、川端等と比較研究されています。

スプートニク:日本ナボコフ協会は外国のナボコフ研究者、博物館、ナボコフ協会と交流していますか?

中田晶子: はい、ペテルブルクのナボコフ資料館やNYPL  (ニューヨーク公共図書館) のナボコフのアーカイヴが保存するバーグコレクション (Berg Collectio) で調査をした協会員が5,6人はいると思います。海外から来日されたナボコフの専門家は、アレクサンドル・ドリーニンやブライアン・ボンドなど30人近くになります。2010年3月に京都で国際ナボコフ学会を開催した時においでになった方が多いですが、個別に来日された方もあります。ブライアン・ボンド夫妻は、日本が大好きになられ、もう5,6回来日しておられます。『アーダ〔新訳版〕』 (Ada) の註釈を作っている京都ナボコフ読書会 (Kyoto Reading Circle)の活動にも協力していただいています。

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ペテルブルクのナボコフ資料館には、私は二度お邪魔しました。1998年3月と2002年7月です。2002年の時には、2人の日本人研究者と一緒に、夏季セミナーNabokov101にも出席しました。タチアナ・ポノマレヴァ館長のご厚意により、市立図書館で開催されていたナボコフの作品の特別展示を英語通訳付きで見せていただくこともできました。ポノマレヴァ館長とは、2016年秋にワルシャワで開催された国際学会(日本からは2名が参加)でもご一緒して、お世話になりました。

5月11日(土)、日本ナボコフ協会は設立20周年となる2019年の大会を、早稲田大学文学学術院(戸山キャンパス)33号館4階第1会議室にて開催する。希望者は誰でも参加可能。ふるってご参加ください。(一般来聴歓迎・予約不要・参加無料)

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日本, ロシア, 歴史, 文化
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