国際的トレンドになった高齢化社会

© REUTERS / Kim Kyung-Hoon国際的トレンドになった高齢化社会
国際的トレンドになった高齢化社会 - Sputnik 日本
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国連の予測によれば、2035年には地球の人口の約13パーセントが65歳以上になるとされている。人口に換算すると、その数は10億人を超える。先進国の高齢化はとりわけ深刻だ。先進国では同時に出生率が低下し、労働力不足の危機も襲いかかるからだ。各国政府の課題であり、同時に世界経済の新たなトレンドとなっている高齢化社会の問題をスプートニクが取材した。

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労働力不足

国連の評価によれば、1980年代に100人当たりの労働者(25歳から64歳の成人)が扶養した65歳以上の高齢者は平均して16人だった。この状況はなんと2000年代まで続いた。しかし、2035年になると、この数値が激変する。日本の変化がとりわけ激しい。日本では100人当たりの労働者で69人の高齢者を扶養する計算となる。そのほかの国々に目を転じると、ドイツでは66人、米国では44人、中国では36人まで増加すると考えられている。ロシアも例外ではない。

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外国人労働者 「老いゆく」国への救命浮き輪
ロシア労働・社会保護省のボフチェンコ次官によると、2025年には高齢者が人口に占める割合は27パーセントに達し、2035年には労働力人口を上回る勢いだ。

社会保障費

国家予算を逼迫させているのが社会保障費(年金、生活保護、介護、医療)の増加だ。それと同時に年金生活者の大半が低賃金であっても働き続けることを望んでいる。この労働力は先進国にとって貴重なリソースである。若者の比率が少ない先進国では納税者の数もそれに応じて低化しているからだ。英国の老年学会によると、英国が65歳以上の人々に支払う年金額は、高齢者が納める税金を下回ることが分かった。その差額はなんと440億ポンド(日本円で6兆1160億円)に上る。高齢者の購買力や税収がもたらす利益はこれほど莫大な額に達するのだ。

国によっては、高齢者にパートタイムの仕事を紹介するほか、高齢者用のポストを用意することもある。その例として、オーストラリアの場合、高齢者は小学校の登下校時間に歩道で交通整備の仕事にあたることが多いそうだ。

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日本の働き手、過去最低に
日本の場合、労働力不足が特に深刻なのは福祉の分野だ。厚生労働省の調べによると、2025年には要介護の高齢者が700万人を超えるため、福祉業界の労働力不足は250万人に達する。この問題を解決すべく、日本政府は元気な高齢者を雇用することで対応を検討している。こうした労働者のメリットとして、後に同様の介護サービスを自分も受けられる体制作りが進んでいる。

賃金の格差

体力は認知機能よりも早い段階で低下するため、高齢を迎えても仕事ができるのはハイキャリアの労働者か、あるいは高学歴の人間に限られる。国際応用システム分析研究所のデータによれば、欧米人の大半(移民を除く)が高齢になるとこのカテゴリーに分類される。つまり、高齢を迎えても所得が減少しない見込みだ。一方、中国は真逆の状況を抱えている。中国では50歳以上の大半が初等教育しか受けておらず、将来的には所得の低下が避けられない。さらに、中国経済は自動生産体制にシフトしており、ローキャリアの仕事は年々減少している。さらに、国際的にも雇用する側が高齢化の現状に順応できておらず、年齢に対する偏見は依然として根強い。高齢の労働者は経験豊かだとしても行動力がなく、新しい技術の習得は難しいという偏見が蔓延している。

「シルバー経済」

日本のシルバー世代の運転手たち 事故予防の鍵は「自制」 - Sputnik 日本
日本のシルバー世代の運転手たち 事故予防の鍵は「自制」
高齢化社会の国々では介護と医療の分野が投資を集めている。この道で世界をリードするのが日本だ。日本では予防医療のほか、糖尿病や心臓病、ガン、認知症、アルツハイマー病の早期発見と治療に莫大な投資が行われている。一方で、コストカットの必要から新しい技術の開発は足踏みしている状態だ。そうした技術の中には、高齢者が可能な限り長く自立した生活を送るうえで必要なものもある(パワーアシストスーツや、転倒を通知するガジェット、家事ロボットや会話ロボット、車椅子と一体化したベッドなど)。さらには、自動運転システムを搭載した車両はこうした高齢者をターゲットにしている。「シルバー」世代の旅行や娯楽サービスの需要も増している。

スプートニクの取材に応じた労働・社会関係アカデミーのサフォーノフ副学長(経済学博士)は以下のように分析している。

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100年後の日本 人口5千万人に激減するおそれ
「人口の高齢化が国家予算を圧迫する一方で、高齢者のニーズに応えるべくビジネスが活性化し、新たな製品やサービスが開発される流れはもはや世界的なトレンドと化した。ただし、「シルバー経済」は単なる健康関連の技術やサービスの提供ではない。これは高齢者向けのマーケットをも意味する。その業界は不動産、接客、アパレル、旅行、娯楽、生涯学習など、多岐にわたる。ビジネスはあらゆるものを提供する以上、裕福な高齢者やその子供らが出費を惜しまないものはごまんとある。さらに都市計画やインフラ整備も新たなビジネスチャンスになりうる。これは全く新たなライフスタイルの設計であり、高齢者の身体的ニーズに応えたものとなるだろう。」

5月20日から22日にかけて東京では老化・老年学のアジア会議が開催される。会議のテーマは「自立と共存」だ。

会議ではこれまで見てきた問題が議論されるが、果たして問題解決の糸口は見つかるのか。国際社会はいまその議論を注視している。

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