韓国経済に詳しい、日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所の渡邉雄一氏は、「日韓の主張は平行線。徴用工問題で進展がなければ、WTO紛争は宙に浮く」と指摘している。
渡邉氏「今回のケースは韓国が日本側の『政治的動機』に基づく報復措置を争点化しているのに対して、日本は『安全保障上』の措置と反論しており、これまでもこれからも、両者の主張は平行線を辿るでしょう。WTOにとっても、このような外交問題や安全保障が複雑に絡む案件の取り扱いは難しく、審理は難航することが予想されます。」WTOの紛争解決制度はこれまで多くの実効的な結果をもたらしてきたものの、最終審である上級委員会に不満をもつ米国が、委員の任命を拒否していることから、上級委員の数が必要最低限の3人になっている。この状態が続けば、任期の関係上、上級委員会が機能停止になるのは時間の問題だ。
直近でWTO判決が下りた日本製産業用空気圧バルブに対する韓国側の輸入関税引き上げのケースでは、提訴から最終判決まで3年半もかかっている。
渡邉氏「現状のWTOの審理体制が機能不全に陥っていることが、紛争の長期化に拍車をかけることになると思います。そもそも日本側にとってこのWTO紛争は問題の本質ではないため、日本側にとってより重要な徴用工問題の進展なくしては、WTO紛争は結局のところ宙に浮くことになるでしょう。」

韓国・LG経済研究院のコンサルタント、李地平(Lee Ji Pyeong)氏も、二国間協議による事態の打開には、悲観的な見方を示している。
李氏「韓国側の要請を日本が受け入れたのが回答期限の一日前であることから考えても、日本が本当に二国間協議をしたがっているとは思えません。徴用工問題が解決していないのに輸出管理問題が解決する可能性は、実際的にゼロです。韓国で差し押さえられている三菱重工業の資産の売却命令が出れば、日本はより強い対抗策に打って出るでしょう。ニューヨークでの国連総会でも日韓首脳会談が見送られたことを考えると、外交ルートでの解決についても、可能性はほぼないと思います。韓国のWTO提訴は、所詮は外交圧力の手段にすぎないので、二国間協議までに日韓ともじゅうぶんな準備はできない、間に合わないと思います。」
また、ロシアの元外交官で、モスクワ国際関係大学のゲオルギー・トロラヤ教授は、韓国がWTOに提訴すると表明した段階で、「全く意味のない行為」と一刀両断していた。トロラヤ氏「文大統領は日本との歴史問題や徴用工問題を愛国心の証拠として、国内の政争に勝つためだけでなく、外敵に対して大衆の反感が盛り上がるように利用しています。今では北朝鮮も、韓国にとって100パーセント悪役を果たしてくれる存在ではないからです。文氏の政権下では、この日韓対立を調整する見通しは得られません。」
日韓が二国間協議で解決できなければ、第一審にあたる紛争処理小委員会(パネル)での審理が始まることになる。戦いの場がWTOに移っても、両国は終わりの見えない対立を続けることになるだろう。
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