モスクワで今年も日本映画祭!開幕映画「ダンスウィズミー」でハッピーな気持ちに

© 写真 : DANCE WITH ME FILM PARNERS 2019開幕映画ダンスウィズミー
開幕映画ダンスウィズミー - Sputnik 日本
サイン
11月19日から12月1日まで、モスクワにおける日本映画祭(主催:国際交流基金、在ロシア日本国大使館、クールコネクションズ)が開催中だ。この映画祭は今年で53回目と歴史が長く、現代日本の姿を伝える最新の日本映画が鑑賞できるとあって、モスクワっ子の間で高い人気を誇っている。フェスティバル初日にはオープニングセレモニーが行なわれ、開幕映画「ダンスウィズミー」(矢口史靖監督、2019年)の企画・制作プロダクション「アルタミラピクチャーズ」社長でプロデューサーの桝井省志さんと、土本貴生さんが舞台挨拶を行なった。上映終了後に行なわれたQ&Aタイムでは行列ができ、「素晴らしい映画をありがとう」と感謝の声が寄せられた。

芸術の町・モスクワ

スプートニクのインタビューに応じた桝井さんと土本さんは、初訪問のモスクワの印象について「こんなに道が広くて車線がたくさんある国は初めて見た」「芸術家や文学者の名前がついている地名や施設が町中にある。芸術に対する姿勢が違う」と口を揃えた。

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桝井さん「こんな芸術の町でモノを作る仕事は大変だと思いますが、こういうところで映画撮影するアイデアが見つかるといいですね。」

土本さん「歴史が深すぎて、どうやって太刀打ちすればいいんだ、という気分になります。この町を理解するには時間をかけないといけません。」


コンペで勝つより、「楽しかった!」と言ってもらいたい

アルタミラピクチャーズは、ノンスター(スター俳優のいない映画)で原作がないオリジナルの映画を多数手がけている。

桝井さん「映画祭で上演してもらうことはありがたいですが、ある意味で映画祭は、企画側のパフォーマンスの場でもあるわけです。そこは、普通の町の映画館で上映するような映画とは違う、特殊な世界です。僕たちと矢口監督とは、『お客さんに向けて映画を作ろう』というのが共通の課題です。自分達も面白くて、普通の観客の皆さんが見て、楽しくて、すっきりするような映画を作りたいと思っています。」

今は、日本映画の上映権を、なかなか外国で買ってもらえない時代になっており、アルタミラピクチャーズの作品も例外ではない。国際交流基金はそういった部分をカバーして、日本の今の姿を伝える「素直な日本映画」の鑑賞機会を世界中で設けている。

桝井さん「国際交流基金は特殊なセンスをアピールするのではなくて、日本の姿が伝わる、普通の人が楽しめる映画をセレクションしています。その開幕作品に選ばれたのは、僕らとしては一番望ましいです。」

© 写真 : Asuka Tokuyama(左から)土本貴生さん、上月豊久・駐ロシア大使、桝井省志さん。日本映画祭オープニングにて
モスクワで今年も日本映画祭!開幕映画「ダンスウィズミー」でハッピーな気持ちに - Sputnik 日本
(左から)土本貴生さん、上月豊久・駐ロシア大使、桝井省志さん。日本映画祭オープニングにて

「ダンスウィズミー」製作秘話

音楽が聞こえると歌い踊り出すカラダになってしまった「ダンスウィズミー」のヒロイン、静香を演じた三吉彩花さんは、オーディションで抜擢された。有名女優も多数参加し、選考は難航。複数のプロデューサーも、ダンスや歌の講師も、それぞれ自分の意見があるため、すんなり決まることはまずないという。今回も数名にしぼり、ぎりぎりまで議論し、最後には多数決ではなく、監督が「この人なら演出できる」と自信をもった人を選んだ。実は、選考過程では別の候補者に人気が集まっていたが、監督が最終的に選んだのが三吉さんだった。

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監督に比べてプロデューサーという仕事に光が当たることは少ない。この映画の現場に関わったスタッフはおよそ300人。それらの人員をまとめ、プロジェクトを維持し、映画を完成させるのが、プロデューサーの仕事だ。

土本さん「最初は全く何も見えないので、不安でしょうがありません。仮に、脚本まであったとしても、例えば今回の映画なら、具体的にどんな踊りを踊るのか?といった、細かい点まではわからないわけです。ようやく最後の最後に音を付けたところでほぼ完成するのですが、そこにたどり着くまでが長いですね。」

桝井さん「同時録音では、こういうミュージカル仕立ての映画は作れないんです。歌を後でレコーディングして入れたり、演奏を後で追加したり、『切り貼り』の作業をしているので、それが技術的にうまく違和感なく作れるか、音のバランスはどうか、非常に手間のかかる複雑な映画でした。監督は普段は冷静で穏やかな人なんですが、彼がパニックになるくらい大変な作業でした。」


誰でも自分の能力を生かせる映画業界

昔は大手映画会社が自前で撮影所を抱えてスタッフを雇用していたが、そのシステムがなくなってから、映画業界で働く敷居はぐんと低くなった。現在は99パーセントがフリーのスタッフで、新しいプロジェクトが立ち上がるたびに、ゼロからスタッフを探さなければいけない。カメラマンが見つからなかったり、カメラマンがいても助手がいなかったりと、人手不足が深刻なのだ。しかしそのおかげで、チャンスは誰にでもある。

桝井さん「上は70代のベテランから、下は10代後半まで、色々な世代が一緒に働ける空間です。一回それを経験すると、なんとなくこの世界に残ってしまうんですね。映画監督になりたい、自分を表現したいという人はたくさんいますが、監督になることが全てではありません。映画は、何百人という人が、それぞれのパートで自分を表現できる、そういう仕事です。どんな人も自分の能力を生かせる場が絶対ありますし、そういう人たちがいて、映画が出来ているんです。この仕事のことを知ってもらって、製作に夢をもち、若い人にもっと盛り上げてほしいです。」

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「ダンスウィズミー」の上映中は、会場が一体となって笑ったり、名場面で拍手が起こったりと、落ち着くことがなかった。物怖じせずに感情をあらわにするロシア人のリアクションに、桝井さんは「ロシアの方は、映画の楽しみ方をよく知っていますね」と驚いた様子で話していた。上映終了後、会場からは映画に関する具体的な質問が次々と出た。中には矢口史靖監督の作品を全て見たというコアなファンもいた。

映画祭ではすでに「DESTINY 鎌倉ものがたり」「ザ・ファブル」「十二人の死にたい子どもたち」「人間失格 太宰治と3人の女たち」のチケットが売切れたため、一部で追加上映が行なわれる。また、山田洋次監督特集も並行して開催されており、「男はつらいよ」シリーズの最新作「男はつらいよ お帰り寅さん」が、日本公開日の翌日12月28日にモスクワで上映される。

日本では、正月映画としてアルタミラピクチャーズ制作、周防正行監督による「カツベン!」が12月13日に公開される。

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