「すべての人が日本を見るべき」―露日合作映画「ハチとパルマの物語」の監督に聞く

ハチとパルマの物語
ハチとパルマの物語 - Sputnik 日本
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ロシアではこの秋、映画「パルマ」が公開される。2年もの間、空港で飼い主を待ち続けた忠犬を描いたもので、実話を基にした作品である。制作会社「マルス・メディア」と「アメディア・プロダクション」が手がけたこの映画は、ロシア版と日本版(タイトルは「ハチとパルマの物語」)の2バージョンで制作されている。「スプートニク」はアレクサンドル・ドモガロフ・ジュニア監督にインタビューを行い、この作品と世界的に有名な忠犬物語「ハチ公」との関連性、またフィギュアスケートのアリーナ・ザギトワ選手の役どころなどについて話を聞いた。

どんな映画なのか? 

映画は1970年代にモスクワで実際にあった話を基にしたもの。航空機イリューシン18に搭乗する予定だった1人の乗客は、犬を飛行機に乗せることはできないと言われてしまう。獣医からの証明書がなかったのか、あるいは何か他の理由があったのかは分からない。そこでその乗客は犬の首輪を外し、ぎゅっと抱きしめると、そのまま放してやり、1人でタラップを登っていった。置き去りにされた犬は飛行機が離陸するまで、後を追って走った・・・。そしてその後、2年にわたって、犬は空港に残り、到着するイリューシンを待ち続けた。空港の職員たちはこの犬を憐れみ、食べ物を与え、そしてパルマと名付けた。

© 写真 : Yury RostСобака Пальма
犬のパルマ - Sputnik 日本
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犬のパルマ
© 写真 : Yury RostСобака Пальма.
犬のパルマ - Sputnik 日本
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犬のパルマ
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犬のパルマ

主人公は少年コーリャ(架空の人物)。母親を亡くし、自分の息子がいることを知らないパイロットの父親の元に行くと言う設定である。父親との関係は最初はギクシャクしているが、パルマは次第に少年の親友になっていく。

アレクサンドル・ドモガロフ・ジュニア監督は、「スプートニク」からのインタビューに答え、次のように述べている。「事実を元にした作品ですが、ストーリーにはいくぶん手を加えています。映画は裏切りと人間性について描いたものです。作品の中の犬は単なるシンボルとして描かれています。犬は裏切りとは何かを知りませんが、少年はそれを知っています。登場人物たちの人間関係はとにかくこの犬と関わっています。この映画には、動物の献身的愛情というものについて新しいことは何もないかもしれませんが、善良で、少し無邪気な物語です」。

オーディションには俳優、子ども、そして犬も

監督の話によれば、ほぼすべての俳優、子どもたち、そして犬もオーディションを受けた。少年役を演じたのは9歳のレオニード・バソフ、そしてパルマ役に選ばれたのは7歳のシェパード、リリヤ。リリヤにとってはこれが映画デビュー作となった。「子役のオーディションでは、おそらく200人ほどの審査をしました。悲劇的な眼差しをした子どもを探していました。痛みとそれを乗り越える力を映し出すような表現力のある目が必要でした。どこか“オオカミの子”のような。そのためにはある程度の人生経験があり、たとえ軽率であっても、自立した行動を取ることができる、そんな少年でなければなりませんでした。一方、犬のキャスティングについては、インターネットで広告を出したのですが、ペテルブルグのある知り合いの犬学者がそれを見て連絡してくれました。犬を選ぶのにはとても時間がかかりましたが、わたしたちはとてもラッキーでした。わたしたちが起用した犬は“本物の女優”だったのです。撮影中、犬は事件の渦の中に置かれていたわけですが、照明も、カメラも、人も、飛行機の騒音も怖がりませんでした。撮影クルーとともに離陸用の滑走路や手荷物ターンテーブルを走り、必要なときには遠くからカメラに向かって一目散に駆け、座って待つべきときにはちゃんと座り、雨の中でも、どんな天気の日もわたしたちの指示に従い、演技してくれました」。

アリーナ・ザギトワ選手が出演している理由とは? 

日本版である「ハチとパルマの物語」は文字通り、ロシア版のストーリーを下敷きにしており、物語の続編という形になっている。ロケは新型コロナウイルスの感染拡大の前に、秋田県大館市で行われた

監督にとって、日本人と映画制作を行うのはこれが初めての経験となった。日本版に出演している父親のアレクサンドル・ドモガロフは、映画「ソローキンの見た桜」に出演したことから、日本で広く知られるようになった。

「日本の制作者たちがシナリオを気に入ってくれ、父を通じて、この映画に日本の部分を入れたいと言ってきてくれたのです。依頼を受けたとき、最初は困惑しました。作品にはそれでなくてもプロットがたくさんあり、登場人物もたくさんいる上、ロシアと日本は文化も違えば、メンタリティーも違い、言葉のニュアンスも違っているからです。ただ、物語は全人類に共通するものだということで、わたしたちは共に作業をすることにしました。日本人はプロデュース的なアプローチに長けていて、市場を熟知しており、観客の好みも把握しています。そこでアリーナ・ザギトワ選手に、愛犬マサルと一緒に登場してもらうことになったのです。ザギトワ選手は日本でよく知られていて、ファンも多いですからね。彼女はアリーナ・ザギトワ自身の役で出演しています。

撮影は秋田県で行われました。わたしは初めて日本を訪れましたが、今回はあまり観光できず、残念でした。日本の人々はとても礼儀正しく、親切で、興味を持って人の話を聞くところが気に入りました。またぜひ行きたいと思います。すべての人が、日本という国を見るべきだと思います」。

現在、監督と撮影クルーは日本版の編集作業を行っており、作品の公開は2021年に予定されている。一方、ロシア版は今年の10月に公開されることになっている。

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