07:37 2020年09月20日
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モスクワにおける、法人と個人の枠を超えた唯一の日本人の集まりが、モスクワ・ジャパンクラブ(Japanese Business Club、通称JBC)だ。2007年4月、それまでのモスクワ商工会とモスクワ日本人会が合併し、新たな組織としてスタートした。ジャパンクラブは、日露間の経済活動の活性化、交流促進、ロシア在住邦人の日常生活支援などを行っており、法人会員 184社、賛助会員 3 団体、個人会員 30 名が加入している。今年5月29日、ロシアで新型コロナが拡大し、日系企業のビジネスの先行きが不安視されているタイミングで、伊藤忠商事CIS代表の堤孝行氏が理事長に就任した。スプートニクは堤氏に、ジャパンクラブの活動方針と、今後の意気込みを聞いた。

堤氏はこれまで、商社マンとして一貫してエネルギー畑を歩み、シンガポールや中東に駐在。対ロシアでは、「サハリン1」や東シベリアでの石油探鉱事業など、大規模なプロジェクトに関わってきた。2017年5月、伊藤忠CISの代表に就任し、現在に至っている。

モスクワで新型コロナが拡大した際には、他の日系企業と同様、厳しい舵取りを迫られた。堤氏は「今のところはリモートワークを続け、出社は許可制にしています。しっかり対策をしつつ、オフィスでの日常を取り戻していきたい」と話している。


コロナ禍で上がったJBCの認知度

堤氏が理事長として意識しているのは、JBCの定款に沿い、会員ファーストで活動することだが、一口に日系企業へのビジネス支援と言っても、具体的に何をするのかはその時々のニーズによる。

例えばコロナ禍においては、駐在員の日露間の移動が大きな問題となった。3月末、定期航空便が全面的にストップ。6月末、ロシア政府は高度な専門性をもつ外国人(HQS)の入国制限を一部緩和したが、その手続きには不明瞭な点が多かった。JBCは駐在員のロシア入国に関わる現状について会員企業にヒアリングを行い、在ロシア日本大使館に現状を報告し、日本人入国に対するサポートを求めた。出入国に関する情報は企業規模に関わらず重要で、JBCの情報共有に感謝の声が上がった。

堤氏は、コロナ騒動を振り返り「普段は大使館に陳情する、ということはあまりないのですが、大使館にも好意を持って対応いただき、会員企業の業務に直接関わるサポートができたことは良かったと思います。このことがきっかけで入会してくださった企業もあり、JBCの認知度を向上させることができました」と話す。

堤氏「駐在員で構成されているJBC理事のメンバーは毎年交代していきますが、できれば多くの会員企業に活動に関わってもらいたい。一方で理事が変わったからといって方針が変わりすぎたりしないよう、一定のレベルで、安定した活動を続けていくための体制を作りたいと思います。定款に示されている基本的な路線を大切にしていけば、ぶれることはないと思っています。」


ビジネスチャンス創出の手助け

理事長として新しく力を入れたいと思っているのは、JBCを中心にした横の繋がりを生かして、ビジネスチャンスを創出することだ。今月から、法人会員を対象にした「リレー・インタビュー」を開始。JBC副理事長の目黒祐志氏(三井物産CIS総代表)と手分けして、会員企業にヒアリングを始めた。

堤氏「これまで、JBCを通して日系企業同士が知り合うことはほとんどありませんでした。有名な会社であっても、たまたまどこかで個人的に知り合わない限り、全くお付き合いがないこともよくあります。インタビューを通じて、どこの会社が何をやっていて、どんな目標を持っているか知ることができれば、日系企業同士で協力できる分野が見つかるかもしれません。」


オンライン活用で会員との接点増

コロナ禍で、厳しい外出制限がなされたモスクワでは、リモートワークを進めざるを得なかった。しかしこの経験を生かしオンラインでの情報発信を活用することで、「JBCの活動が見せやすく、かつ見えやすくなった」という。

堤氏「今までは、定例会があったら、興味があってもなくても、座って講演なり話を聞くという一方的なスタイルが定着していました。しかしオンラインを活用すれば、セミナーなどでも聞きたい人だけが聞けば良いですし、必要な人が必要な情報を取っていくことができます。そうすることで、むしろ会員さんとの接点が増えました。こういう下地が整ったので、コロナが終息しても、オンラインの情報発信は積極的に使っていきます。」

最近では全会員を対象に、エンターテイメント情報や、ロシアを多面的に知るためのエッセイをメールで配信し始めた。ロシア人の国民性やロシア芸術に関する読み物、医療情報など、時勢に応じたテーマを選び、発信している。


ロシアという国は、来てみるしかない

堤氏がロシアやロシア人と長く付き合ってきて感じるのは、ロシア特有のルール変更には辟易するが、ロシア人は親日家で、意外と几帳面だということだ。

堤氏「ビジネスには常に合理的な説明を求められますが、ロシアでは政治が経済をも回している側面もあり、この国は常に透明とは言い難いものがあります。合理性・透明性だけに執着しているとなかなか物事が進んでいかないので、肌感のようなものを大事にしています。日常生活で困ることはほとんどないですが、仕事で困ることとしては、行政もフォローできないくらい、頻繁に規則が変わることです。今回のHQSの問題のように手探りで対処しなければならず、非効率です。

そういうこともあって多くの日本企業にはロシアやCISが特殊な地域、という意識があり、このマーケットは正しく理解されてきませんでした。しかし実は、ロシア人は親日家で、そういう面でのストレスはありません。これは、ロシアに来てみないと、なかなか実感としてわからないと思いますが、本当にそうなんです。それにロシア人には、日本人に通ずるものがあると思っています。

例えば、ロシアが初めての人に話すと皆さん驚かれますが、パスポートに押す出入国のスタンプにしても、きちんと左右ペアで押されていたりします。そういうことをやっているのはおそらく、世界中で日本人とロシア人くらいでしょう。これはロシア人の教育水準、業務に対する意識の高さを象徴するものだと思います。このようなことを実感するためにも、特に企業経営者の方々には、コロナ終息後にぜひロシアに来てみてほしいです。」

筆者のパスポートの出入国スタンプ。左右セットで押してくれるのがロシア流
© Sputnik / Asuka Tokuyama
筆者のパスポートの出入国スタンプ。左右セットで押してくれるのがロシア流

モスクワにおける日本人はコロナ騒動で一時的に少なくなってしまったが、残った人々は、可能な限りの仕事を続け、それぞれの立場から奮闘してきた。そのような「非常時」に代替わりしたJBCは、ある意味特別な使命を負っていると言える。モスクワが日常生活を取り戻すにつれ、ポストコロナの生活や仕事のスタイルに沿った、側面支援への期待が高まっている。

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