15:53 2020年10月20日
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家庭内暴力、女性にのしかかる仕事の分担、歪んだ美の基準。こうした問題は多くの国に存在しているが、それへの対処の仕方は実に異なっている。日本の日常生活に潜む差別といかに戦うか、なぜそれについて語ることがこんなにも重要なのかについて、スプートニクはフェミニズムをテーマにした漫画を描いているエリー・タイラーさんに取材した。

むごい統計結果

日本の内閣府の2015年の統計によれば、配偶者から暴力を受けた女性は日本人家庭の4分の1にも上っている。

世界保健機関(WHO)が2001-2003年に横浜在住の18-49歳の女性を対象に行った調査では肉体的ないし性的暴力(またはその両方)を受けたという女性は15%に上った。本来であれば日本の状況は改善に向かっていいはずだが、実情は逆に負の記録を更新し続けている。

日本では同居、非同居の別によらず相手への暴力は法で禁止されているにも拘らず、2019年の警察の統計では16年連続で家庭内暴力の件数が伸びている

2020年が終了していない今、その完全な統計はまだ出せないものの、国連は春の段階ですでに世界で家庭内暴力の件数が増加しているとして、これに警鐘を鳴らしていた。状況がこんなにも深刻であるならば、なぜこれだけ長い間、何の変化も起きていないのだろうか?


どうして逃げなかったんだろう?

家庭内暴力の問題は程度の差こそあれ、世界中に存在し、その理由も様々だ。家父長的な家族構造のために、例え狂暴であろうと年長者には逆らうことが許されていなかったり、昔からの習慣、文化が邪魔していることもある。ロシアには「殴るのは好きな証拠」という慣用句があるが、これもその一例だ。活動家たち、人権擁護者らがどんなにこうした状況は有害であり、暴力は法に違反しているといったところで、昔から続いてきたことに逆らうのは簡単ではない。日本での家庭内暴力の状況は今どうなっているのか、日本人女性が自分の人権を守るのはどうしてこんなに難しいのか、こうした問題をスプートニクは実際に家庭内暴力を体験したイラストレーターのエリータイラーさんにぶつけてみた。エリータイラーさんは自己の辛い体験に基づいたシリーズ漫画「彼氏から逃げるためにアメリカの実家へ逃げた話」をインスタグラムに連載している。

スプートニク: ご自分のコミックでジェンダーの不平等や家庭内暴力の問題を取り上げたのはなぜですか?

エリータイラーさん: 家庭内暴力の問題を取り上げたのは、Self reflection(自己反省)みたいなものだったと思います。アメリカの実家へ戻った時、わたしの中でいろんな感情があって、それをどこにも発散できなくて、とても苦しかったのを覚えています。

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両親にも、当時の気持ちを理解してもらえず、とても辛かったので、アメリカに戻って来た一年はずっとノートにわーっと漫画を描いていて、現実から逃げていました。その一つが、現在描いている自分が受けたDVの話でした。

インスタグラムに載せたのは、同じ話を何度か書きなおしていて、わたしのDVは彼のパートナーに対する無関心さと、ジェンダーに関するものだっのではないかと思うようになったからです。

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ずっと自分はフェミニストだと思っていたのですが、それとは逆の生活をしていたことに未だに違和感を抱いています。当時の自分を考えると、どうして逃げなかったんだろう、どうしてもっと自分を大切にしてあげられなかったんだろうという後悔がわいてくるのです。インスタに載せている理由は、誰でも陥る問題だと人に知って欲しいことと、わたしも未だに自分で自分のことを許せないこと、当時のわたしのような状況にいる人に見て欲しいからです。

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また、ジェンダーの不平等に関しては、毎日感じているもので、もっと若い頃は、そのことを口にしてもめんどくさい女、空気の読めない女だと言われたりしていたこともあって、わたしの他に、日本人で違和感を感じている人は他にいるかもしれないと思い、描いています。

スプートニク: 日本で暮らす中で、女性の不平等やステレオタイプに遭遇したことはありますか?

エリータイラーさん:  毎日ありました!職場で楽しく休憩中にお互いの家のルールの話をしていた時、わたしが料理したときは当時付き合っていた彼氏がお皿を洗うことをルールにしているといったら、休憩室にいた同僚みんなに家事炊事は女の仕事だと言われました。しかも、責めるような形で。男性だけではなく、同じ女性からも厳しく言われたことを覚えています。理由を聞いてもそういうものだからと濁されたことも覚えています。

女性は見た目だけ判断され、どういう格好を職場でしたほうが、男性のやる気が上がるか、わたしのようなデブがおしゃれをしても豚に真珠だから意味がないとか、太っているから料理がうまいんだろうとか、わたしのような女を連れて歩いていると彼氏は恥ずかしいだろうとか、現代の日本では女性の見た目体型、ジェンダーロールに対する無神経な言葉は多いです。

それに反論すると、面倒な女、うるさい女、空気の読めない女だなんて言われたりします。もちろん、みんながみんなそうではないんですが、漫画を描いていて思い出すことが多くなり始めたので、描くネタは尽きないです。

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フェミニズムは女性に優しくする運動ではない

スプートニク: 日本社会における女性の地位向上には何が必要だと思いますか?

エリータイラーさん: フェミニズムは女性に優しくする運動ではないということを理解しなきゃいけないと思います。日本でのフェミニズム、フェミニストは、女性に「優しく」することだと認識している方々がほとんどです。優しくというのは、女性に手をあげない、レディーファーストを心がける、ジェントルマンのように女性を扱う、元々「男の場所」とされる分野に女性が入りやすいようにする、という認識のズレです。まず、これをフェミニズムだと勘違いしている企業が多く、それがマーケティングに利用されています。例としては、有名ラーメンチェーンがカウンターに仕切りをつけて、人目を気にせずラーメンをすすったり、替え玉を頼めるようにサイレントオーダーのボタンをつけて「女性向け」に改装し、女性が1人で入りやすいようにしてみたとか、そういう考えのズレです。

フェミニズムって優しくしてくれってことじゃないし、男と同じように男の世界で男として扱ってくれってことではなくて、みんな協力しあって生活できる平等な世界にしようぜってことを認識させる運動が必要だと思います。

わたしは漫画を描いていますが、誰でも読んで見て触って楽しい体験ができるメディアがないと、真剣に取り入れてくれないんじゃないかなと思い始めています。

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スプートニク: 日本の女性は不平等の問題を認識していると思いますか?

エリータイラーさん: 最近すこーしずつ認識しているように思われます。でも、それは女性の社会進出として一括りにされていて、たくさんの細かな問題の根を見ていない気がします。働くお母さんたちのために会社に託児所を設ける!保育所をもっと作る!保育にお金をかける!と、とてもいい案に思えるのですが、結局子育ては女性関連の問題としてしか見てもらえていないのかなと少し複雑な気持ちにもなります。それでも、働く女性、母となった女性を応援していることはフェミニズムの認識のスタートだと前向きに思いたいです。

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