17:34 2020年07月05日
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すでに2週間にわたって続いている米国の抗議行動は暴動と化した。発端は、ミネソタ州の都市ミネアポリスでアフリカ系米国人のジョージ・フロイド氏が警察官の拘束によって殺害されたことにある。翌日、当地で大規模なデモがはじまり、警察との衝突や破壊行為へと発展。その後、他の州へも広がった。デモは、フロイド氏を窒息させた警察官のデレク・ショービン容疑者が逮捕された後も収ることはなかった。15州で秩序維持を目的に州兵が動員された。

「米国で人種差別が無くなったことは一度もない」 

ソ連時代に駐米外交官を務め、現在、モスクワ人文科学大学国際関係学科長として教鞭をとるニコライ・プラトシキン氏は、この間米国で生じている事態は、いつの時代も決して止むことがなかったアフリカ系米国人の抗議だとして、次のように語っている。

「米国の重大な社会問題は人種差別だ。この問題は今も続いており、事態の激化は定期的に生じている。ある意味、これは米国の政治的状況に消えることのない問題として存在し、政府は常にその事態の進展に備えている。しかし、現在の抗議行動は、その規模と緊迫度にも関わらず、米国の社会的政治的システムにとって危険ではない。なぜなら、1960年代とは異なり、抗議行動には中心となる組織と軸をなすイデオロギーが存在しないからだ。

この数年のすべての混乱は、まさに自然発生的な暴動だといえ、時として双方に犠牲者が生じている。人々は自分たちの人生では何も好ましい変化が生まれないという思いから絶望しきってしまった。新型コロナウイルス感染による数千人の死者の大半が黒人市民だったということが、この絶望に拍車をかけた。抗議参加者はこのシステムを一掃することができないため、彼らは車の放火や店舗の襲撃といった身近なものの破壊を行っている」。

© AFP 2020 / Chandan Khanna
米国で抗議デモ

「痛みに苦しむ国民」

ドナルド・トランプ米大統領と、11月3日に迫った大統領選挙でその最大のライバルと目され、民主党予定候補のジョー・バイデン元副大統領は、フロイド氏の殺害を非難し、遺族に哀悼の意を表した。ところが抗議を行う人たちの行動についてはふたりの評価は異なっている。トランプ大統領はデモ参加者らを暴力集団やテロリスト、極左アナーキストと呼び、秩序回復のため州兵や軍をより積極的に活用するよう呼び掛けた。一方のバイデン氏も抗議者の暴力を非難したが、同時に、米国の体系的な人種差別主義の根絶を求める彼らの要求に連帯の意を表した。米紙「ザ・ヒル」によれば、先週の日曜(5月31日)にバイデン氏は地元デラウェア州ウィルミントン市で行われた抗議行動を視察している。

バイデン氏はインスタグラムで、「私たちは、痛みに苦しむ国民だ。しかし、この痛みによって私たちが根絶されることなどあってはならない。私たちは怒れる国民だ。しかし、私たちは自らの怒りで自分を見失ってはいけない」とコメントした。

モスクワ国立大学ルーズベルト記念米国研究基金のユーリ・ログレフ会長はスプートニクのインタビューに次のように語っている。

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Публикация от Joe Biden (@joebiden)

「トランプ大統領は声明を発表する以外、事態に対応するための必要な対策を講ずることができない。それは、米国では警察と州兵は各州の管轄下にあり、必要な対応は各州知事の裁量に一任されているからだ。州でも現地当局が民主党を支持する所は、抗議行動参加者との対立にさほど力を入れていない。当初、抗議行動が暴力的で無秩序な様相になるまでは、バイデン氏はこうした行動は合法的とまで言っていた。このような抗議行動はオバマ政権時代にもあり、こうした行動をアフリカ系米国人の不満とだけ結びつけることは正しいとは言い切れない。米国は人種差別問題でかなり大きな成功を収めたが、それでもすべての問題が解決されたわけではなく、道はまだ長い。多くのアフリカ系米国人が一人親の家庭に生まれ、犯罪や麻薬といった環境から抜け出せずにいる」。

暴動でコロナ問題が影を潜める

国際安全保障に関する無所属の専門家であるヴィクトリア・レグラノワ氏は、ある意味でトランプ大統領は運がいいと考えている。

「今日の米国の混乱によってトランプ大統領にとってネックであった新型コロナ問題が焦眉の課題から外され、実際にメディアではこのニュースが姿を消した。パンデミックを処理できず、その結果、米国は感染者数が世界で一番多い国となったとしてトランプ氏は叩かれた。そして今、民主党員たちはこの事態に乗じ、殺人を犯した警官らに対し、終身刑に匹敵する厳格な措置を取るようトランプ大統領に求めている。しかし、もしトランプ大統領が態度を軟化し、そうした方向に進んだなら、今度は警察や州兵が彼に反旗をひるがえすだろう。トランプ大統領自身は6月1日、各州知事との会議の場で、騒乱を鎮火できなかった者らを名指しで弱腰と非難し、暴動の首謀者らを厳格に処罰するよう要求した。大統領は、共和党員らが政権の座にある州では秩序が保たれているが、知事が民主党員出身者の州では、暴動や混乱などが生じ、事態が収拾されていないと強調した。このバトルにはメディアも親トランプ派、反トランプ派の別なく加わった」。

そして、またロシアの仕業?

トランプ大統領のライバル候補は、米国の混乱にロシアの関与ありと言及するのを忘れなかった。民主党員でオバマ政権で元国家安全保障補佐官を務めたスーザン・ライス氏は、CNNに出演した際に、全米で続いている混乱の背後にはロシアがいる可能性があると主張した。ライス氏は、「不正や不平等に反対する平和的なデモ参加者もいる。しかし、抗議行動を乗っ取ろうとする挑発者たちも存在する。私の経験上、この者らはロシアの戦術的方法論に沿って行動していることが見て取れる」と語った。このインタビューを収めた動画がツイッターで公開された。

しかし、多くの米国人は彼女の発言に対し冷ややかなコメントを残した。「もちろんロシアさ。なにしろ黒い肌のロシアの連中は強盗を行い、騒ぎを起こすからね」「冷戦時でさえ人々はすべてをロシアのせいにするほど狂ってはいなかったよ」。

ロシア国立研究大学経済高等学院・欧州国際包括研究センターのドミトリー・スースロフ副所長は、「米国のエリートは、社会は健全だが、しかし、トランプとロシア人がすべてを台無しにしていると考えている。トランプ氏を追い出し、『ロシアの影響』を一掃したなら、米国は平穏に戻るというわけだ。だが、都市部での暴動はその平穏は当分訪れないことを示している」と強調している。

スースロフ氏によれば、ライス氏の発言は選挙キャンペーンの一環と理解する必要がある。

「バイデン氏が次の大統領になった場合、ライス氏が彼の陣営に加わることを計画していると見ることができる。そしてロシア政府に対する非難は、トランプ氏がロシア政府と一緒に行動しているのだと主張する民主党の圧力の延長線上にある」。

この記事に示された見解はスプートニク編集部のものとは必ずしも一致していません。

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