17:13 2020年07月05日
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神奈川県大和市は6月1日、歩きながらスマートフォンを操作することを禁止する条例案を市議会に提出した。このような条例は日本初で、可決されれば7月1日に施行される。しかし、このような制限は本当に必要なのだろうか?効果はあるのだろうか?また、このような禁止措置は、日本の他の都市にも導入されるのだろうか?

「歩きスマホ」に罰金?

日本の警察庁の最新データによると、2018年の携帯電話使用等に係る交通事故件数は2790件で、過去5年間で1.4倍に増加した。

大和市によると、禁止条例案の狙いは「スマホは立ち止まって操作するもの、という意識を社会に浸透させたい」というところにある。そのため、現段階では罰則規定を設けずに効果を上げることを目指している。しかし、施行後に改善がみられなければ、同市は「歩きスマホ」禁止条例に罰則を追加することも検討する。また、日本ではすでに、車や自転車の運転中にスマートフォンを操作することに対する罰則規定があり、その規定も2019年末から強化されている。

「歩きスマホ」に対する世界の動きは?

日本だけでなく、世界的にもスマートフォン使用時の交通事故が増えている。「歩きスマホ」に対する罰則規定を導入し始めた国は今のところ多くはないが、時間を経るにつれてこの動きは一般的になっていくかもしれない。

世界で初めて「歩きスマホ」の行為に市民の責任を求めたのは、米ハワイ州のホノルル市。同市では、「歩きスマホ」の違反が繰り返されれば罰金の額は増加していく。例えば、1回目なら35ドル(約3700円)、2回目は75ドル(約8000円)、3回目は99ドル(約1万600円)を支払わなければならない。

そのホノルルの動きに続いたのは、米カリフォルニア州のモントクレア市。同市では歩行中にスマホ画面を見る行為だけではなく、イヤホンで耳をふさいだ状態での歩行も禁止している。違反すると100ドル(約1万700円)の罰金が科される。

中国の浙江省嘉興市でも「歩きスマホ」禁止条例が施行されている。違反すると罰金を支払う義務があるが、その額は5〜50元(75〜760円)とホノルルやモントクレア市に比べると少ない。

日本では罰則なしの禁止条例で効果をあげられるのか?

スマートフォンや通信に関する市場調査や消費者動向を調査するMMD研究所によると、アンケートに答えた約96.6%が「歩きスマホ」は危険だと感じている。一方、IT施策の一端を担う政策実施機関「IPA(情報処理推進機構)」の調査によると、約40%の若者が「歩きスマホ」は「注意していれば事故につながることはない」と回答し、歩行中のスマホ操作はやめないと考えているという。この傾向について早稲田大学の加藤麻樹教授は、「歩きスマホ」に関する問題は、他人には関係があっても自分には関係はないという自信が、「歩きスマホ」を止めようという社会のポジティブな変化を妨げているのではないかと分析している。

「歩きスマホについては免許制度を伴う交通でもないし、不要不急の基準は個人によって異なるので、可否の判断は難しいと思います。特に、自分は大丈夫といった『正常性バイアス』が働くので多くの人は条例を無視する可能性が残ります。禁止条例案には罰則がない点で強制力がない以上、社会的通念として歩行中のスマートフォン利用の防止を促すだけにとどまる可能性は高いです。」

加藤教授によると、大和市がこの条例案を承認し、施行後その効果が認められれば、この種の禁止措置は日本の他の都市にも導入される可能性がある。しかしコロナ禍の今、この問題に世間の注目を集めるのは難しいかもしれない。

「過去の事例として受動喫煙防止条例や迷惑防止条例など、フロントランナーに一定の効果が認められることで全国的に展開する例があったように、大和市で可決し、かつ一定の効果が認められれば条例案が提出される可能性はあると思います。東京や大阪など特に人口が多くかつ全国に対する影響が大きい自治体における提案可能性もあるでしょう。ただ現在はご存知の通り新型コロナウィルスの問題があまりにも大きいため、市民の関心が集まらないかもしれません。」

一方、立教大学の芳賀繁名誉教授は、罰則なしの「歩きスマホ」禁止条例に対してより楽観的な見方を示している。

「日本人は法律よりも集団規範 (group norm) や社会的規範(social norm)に従う傾向が強いです。Covid-19の感染拡大防止のための『自粛』が法的根拠や罰則なしに機能した例や、電車の中での携帯電話通話をほとんど誰もしない例をみると、それがよく分かる。

では、条例は役に立たないかと言うと、そうではない。法律や条令は集団規範を変えるきっかけとなる可能性がある。日本では以前、歩きながら煙草を吸う人が多かったが、歩き煙草の条例ができてからは、非常に少なくなった。迷惑だと思っても注意できなかった人が、歩き煙草をしている人に注意できるようになったことや、歩き煙草は他の人や、特に子どもに迷惑だという認識が広まったからと思われる。したがって、歩きスマホの禁止条例も、多くの人に『行うべきでない迷惑行為だ』という認識を広めるのに役立つだろう。」

芳賀名誉教授は、この問題を国民に広く知ってもらうためには、危険性よりも迷惑性に焦点を当てることが重要だと考えている。   

「なお、歩きスマホは『あなたが怪我をするリスクが高いからやめるべきだ』と説得するより、『周りの人に迷惑がかかるからやめてほしい』と伝える方が効果的だ。『煙草が肺がんリスクを高める』と言っても『好きな煙草をやめてまで長生きしたくない』と言って煙草をやめようとしない。しかし、『受動喫煙が家族や子どもの健康を害する』と言う情報が広く知られるようになってから禁煙する人が増えた。

ナビゲーションや仕事の連絡でスマートフォンをどうしても移動中に使いたい、使わなければならない時はありますが、その場合は『歩きながら』使うのではなく、道路/通路の端に寄って止まって使えばいいだけの話です。」

この記事に示された見解はスプートニク編集部のものとは必ずしも一致していません。

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