05:25 2020年10月26日
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米国で一番裕福なラッパーのカニエ・ウェスト氏は新党「バースデーパーティー(BDY)」の大統領となることを夢見ている。新党の命名の由来についてウェスト氏は「当選した時はみんなに同時に誕生日がきたみたいになるからさ」と説明している。スプートニクはラッパーのスター、ウェスト氏の出馬の真の動機について、また技術的に選挙での勝算のないウェスト氏の出馬で他の候補の誰が得をして勝つのかについて、専門家に見解を尋ねた。

米外交政策のアナリスト、ドミロリー・スースロフ欧州国際複合研究センターの副所長は、ウェスト氏の出馬について、次のように分析している。

「ラッパー(ウェスト氏)が勝利するチャンスはほぼゼロに近い。これは米国の選挙プロセス自体に原因がある。米国の選挙プロセスでは有権者の大半の票を集めた候補者が必ずしも勝利するわけではなく、将来の大統領を実際に決めるのは選挙人の票だ(各州で過半数の票を獲得した候補が自動的にその州の選挙人の支持を得ることになる。その州で負けた候補は最終的にどれだけの票を集めたかの如何によらず、何の支持も得ることができない。このため民主党、共和党以外の第3の政党から出馬する場合、獲得できる票は極めて少なくなる)。いずれにせよ、ジョージ・ワシントンの例を除けば米国史上、無所属(民主党、共和党以外)で勝利した候補者は一人もいない。」

ではカニエ・ウェスト氏はこの選挙戦でどういう役割を演じることになるだろうか。スースロフ氏はウェスト氏の役割とは、スポイラーに他ならないと予想している。つまり実際に勝利する可能性のある主要な候補者のうちの1人の票を自分に引き寄せ、票割れを起こさせる人物のことだ。

スースロフ氏は、スポイラー効果を起こすのは大抵の場合、無所属で出馬の候補者で、米大統領選挙では記憶に新しいところで1992年、2000年の選挙がまさにその例だと指摘する。

「1992年、無所属で出馬した億万長者ロス・ペロー氏は当時、影響力も大きく、政治家としても名をはせていた。ペロー氏は自己資金で選挙キャンペーンを開始。保守層に訴えるスローガンで19%の票を集め、ビル・クリントン、ブッシュ・シニアに続いて3位につけていた。結果は、ペロー氏はブッシュ支持層の票を惹きつけたため、ブッシュ候補はクリントン候補に敗北した。2つ目の類似した例は共和党のジョージ・W・ブッシュ候補と民主党のアル・ゴア候補の戦いの時に起きた。アメリカ緑の党から出馬したラルフ・ネーダー氏の主張は多くの点でゴア氏とだぶった。ネーダー氏の得票率はわずか3%弱だったが、これは主要な州の票争いでゴア氏がブッシュ候補に敗北を期すためには十分だった。これとまったく同じ役割をカニエ・ウェスト氏も演じかねない。」  

ウェスト氏が引き寄せるのはトランプ、バイデンのどちらの票か?

現段階では多くの人はウェスト氏の出馬をホワイトハウスの考案した複雑なプランの一部なのではないかと勘繰っている。つまり「無所属候補」はトランプ氏の「ジョーカー」であり、ごく単純な理由でバイデン候補の票を横取りして現職の大統領に再選を約束することになるというのだ。その理由とは、彼がアフリカ系米国人であるという事実である。

アフリカ系米国人のディアスポラと「Black Lives Matter(黒人の命は大切だ)」運動の参加者たちは今回の選挙戦ではバイデン候補の支柱となる存在だからだ。

「Black Lives Matter」運動の参加者はまず、トランプ氏に反対する側に一票を投じる。この運動の参加者にとってはもともと支持する候補はバイデン氏だったが、ウェスト氏も支持の対象に加わることになった。こうして抗議運動の参加者の一部の票がウェスト氏に流れてしまう場合、バイデン氏は主要な州でトランプ氏に勝つための票数が足りなくなる恐れが出てくる。

それでも今回の選挙戦では詳細を100%予想することは不可能だ。すべてはウェスト氏が選挙キャンペーンで何をスローガンに掲げるかにかかっているが、スースロフ氏は、ウェスト氏が突如として極めて保守的な議題を取り上げるとすれば、これはトランプ氏に行く票を奪う可能性もあるとして、次のように語っている。

「ウェスト氏の出馬表明は今のところ極めて矛盾する性格を持っており、これによって2大政党の候補者のどちらの票を彼が自分の側に引き寄せることになるか、はっきりとは言い難い。おそらくバイデン、トランプの両方の票を取ることになるのではないだろうか。そうなると選挙戦への影響は少なくなる。1つには彼はアフリカ系米国人である。この層が支持するバイデン氏の票を奪いかねない。一方でウェスト氏は堕胎禁止を口にし、宗教的な発言を繰り返して神を信仰する自分をアピールしている。これは共和党が保守的な有権者に向けてよくつかう議題であることから、トランプ氏の選挙プログラムとどこか呼応しており、こちらの方の票も奪いかねない。こうなるとカニエ・ウェスト氏は両方の候補者にとって脅威となる可能性がある。ただしすべてはウェスト氏の選挙キャンペーンがどういう進化を遂げるか、一般の米国民の誰が実際に彼を支持しているだろうかにより、かかっている。これがはっきりして初めて、ウェスト氏が誰に加勢し、彼の出馬のせいで誰が選挙で敗北するかが見えてくる。」

最終的にラッパー、カニエ・ウェスト氏のような奇抜な無所属候補者の出現は、今の抗議行動の荒れ狂う米国にとって何を意味することになるのだろうか?

スースロフ氏は、ウェスト氏の出馬が示したのは米国の政治エリートの危機であり、民主党も共和党にも刷新が迫られていることをあぶりだしたとして次のように語っている。

「カニエ・ウェスト氏が音楽界から、サブカルチャーのアンダーグラウンドから突如として『出撃』したということは、今のメインストリームの2大政党の推す候補者らではもう手に負えない、そしてエリート候補は人気が無いことを意味している。ウェスト氏出現の現象はウクライナの現大統領のゼレンスキー氏(コメディ俳優でありながらポロシェンコ前大統領に選挙で大敗北を味合わせた)に似ている。これと同じようなことが今度は、米国で起きるかもしれない。ウェスト現象は米国の政治エリートの『破綻』をさしているのだ。ただしウクライナやゼレンスキー氏と異なるのは、ウェスト氏には選挙戦では勝ち目は無いという点だ。」

ともあれ、ウェスト氏はすでにサウス・カロライナ州で選挙キャンペーンの初イベントを行い、副大統領候補まで決めている。ウェスト氏は自分と組む副大統領もまた、同じくラッパーを選んだ。     

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大統領選挙, ドナルド・トランプ, 米国
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