19:53 2020年09月29日
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8月16日、日本の静岡県浜松市の41.1度と米カリフォルニア州デスバレーの54.4度と地球上の2か所で最高気温が観測された。こうした現象は科学的にはどうとらえることができるのだろうか。世界的に関連性はあるのだろうか。気候の危機が始まりつつある危険な兆候なのだろうか。これらの問いについてスプートニクは日本人専門家らに取材した。

過去の最高気温

世界気象機関(WMO)がデスバレーの54.4度公式記録として認証した場合、過去100年における世界の最高気温が記録されたことになる。デスバレーまでは2016年7月21日、クウェート、ミトリバフの53.9度が世界最高気温とされている。

米国の気象学者らによると、過去100年の最高気温はデスバレーで1913年に56.7度が、1931年にはチュニジアのケリビアで55度が観測されているものの、これを証明する十分な資料が存在していないため、これらを記録として含めるわけにはいかない。 

日本の事情はといえば、国内の最高気温記録は毎回、憂慮されながらも更新されている。これまでの最高気温は2018年に埼玉県熊谷市で観測されていた。同日、日本の各地で異常な高温が記録され、水銀柱が跳ね上がった。

WMOがこれを世界最高気温と公式的に認証するために、どれくらい時間がかかるかについて、気象学者で岡山大学理学部地球科学科教授の野沢 徹氏はスプートニクからの取材に次のように答えている。

「デスバレーでの観測を最高気温と認証するWMOの検証作業は、 おおむね2カ月~半年ほどかかるのではないかと思われます。 なお、浜松の観測結果の検証について公式な発表はありませんが、 気象庁内部では行われるはずです。」

英語圏の情報筋は、米国での世界最高気温の認証作業は極端な場合、数年を要しかねないと見ている。日本での最高気温の認定については、気象学者で、東京大学大気海洋研究所の木本昌秀教授は事情が多少異なっていることから、観測された気温は十分に信憑性があると考えている。

世界新記録は地球温暖化の影響?

野沢氏は、1つの記録がでただけでこれが地球温暖化の影響によるものという帰結を出してはならないとしている。ただし、この記録が、科学者らが地球温暖化は実際に起きていることを裏付ける十分な論拠を持っている中で出てしまったことは間違いない。

「ある観測点におけるたった1日の気温データだけで語れるものではありません。これが地球温暖化と関連した現象だという帰結を出すためにどんな要素が大事かというと、1点目は、局地的に高温となった原因を探ることで、そのためには、気圧配置や風向・風速などの情報が欠かせません。2点目は、原因となった気象条件の長期変化傾向を調べることで、近年の地球温暖化にともない、熱波が発生しやすくなっているのかどうか、客観的に調べることが重要です。

最近では、2点目の調査に多数の数値シミュレーションが活用されていて、 観測されているような地球温暖化が進んでいない、 仮想的な状況での数値シミュレーション結果と比較することで、 地球温暖化の影響が推定され始めています。 ちなみに、このような研究はイベント・アトリビューションと呼ばれています。」

このため野沢氏は、両方の記録とも実際に度を越した現象であり、危険視すべきと位置付けることができると語っている。

「デスバレー で日最高気温が54.4℃以上となったのは100年ぶりなので、それほど極端な現象であったことは間違いないでしょう。

また、浜松の日最高気温は、例えば、1カ月程度、かつ数百キロにわたる範囲の平均気温からは国内でも温暖化傾向が続いていることは明白で、熱波に相当するような事象の頻発化が危惧されることは間違いないでしょう。」

同様の見解を木本氏も表している。

「テスバレーや浜松の最高気温が地球温暖化のせいかというと、地球温暖化とは長期間における傾向ですから、1日1日の天気を全部地球温暖化のせいにすることはできません。ただし長期間にわたってはこういう傾向はあります。特に、最高気温が頻繁に更新される、あるいは今まで観測されていない気温が観測されるというこの背景には、地球温暖化があると言って構わないと思います。

ただし世界最高気温が記録されたか、されないかにかかわらず、地球全体の気温は地球温暖化でゆっくりと上がってきています。ここ数十年の世界的な気候を見ると、涼しい日よりは暖かい日の方が多くなってきています。そういう傾向は世界中の色々な場所でありますので、地球温暖化が起こっていて、それが我々にも気づくような形で顕在化してきているというのは間違いないと思います。」

木本氏によれば、日本の場合は気象庁 のサイトに非常に多くのデータ、グラフが発表されており、それを見ると過去100年で35度を超える猛暑日の日数は著しく増えている。このような長期傾向には地球規模の温暖化が大きな影響を及ぼしていると考えられる。大気温の異常な上昇の他にも豪雨に見舞われる日数が増え、台風の勢力も増している。2019年秋の台風19号(ハギビス)今年の大雨やそれまでの数年の被害を思い出すだけでも十分だろう。

木本氏は、「このまま何もしなければ21世紀の終わり頃には地球の温度は少なくとも平均で4度以上上がる見込みです。現在のところ、産業革命以前から比べ、まだおおよそ1度ぐらいしか上がっていません。にもかかわらず、これほど多くの猛暑日、強い雨の影響が一般人にもわかるほど続いているのです。もし万が一、4度も上昇したら、かなりひどいことになると思います」と語っている。

状況悪化の阻止には何が必要か

そうした事態に至らないために、私たちは何をしなければならないのだろうか。これについて野沢氏は次のように語っている。

「私たちにできることは、化石燃料燃焼起源のCO2排出をとにかく減らすことしかなく、日常生活におけるどのような活動でCO2が排出されているのか、正しく理解し、少しでもCO2排出を削減する努力を無理のない範囲で続けるしかありません。」

木本氏は地球の温暖化を止めるためには人為起源の温室効果ガスの放出量をゼロにする必要があると強調している。これはパリ協定の公式文書にも記載されている。これを実現するのは並大抵のことではない。このため、当面は世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃までに抑える努力をする目標値を掲げている。とはいえ、こうした値の気温上昇でさえ、影響は避けられない

木本氏 はまた、共通の認識があっても二酸化炭素をキャッチし、貯蔵するCCS技術(Carbon dioxide Capture and Storageの略)は万能薬にはなりえないとしてさらに次のように語っている。

「例えば火力発電所で少し石炭を燃やして二酸化炭素を出してしまったとしても、CCS技術を用いて、それを海底などに上手に隔離すれば、少しぐらいなら二酸化炭素を出してもいいという考えはあります。ですがこの技術を用いても今、放出されているだけの量を全部を海底の土の中に埋めるわけにはいかないので、仮に今後この技術を導入するとしても、それだけではゼロエミッションは達成できません。」

この他に木本氏は、 コロナウイルスのパンデミックによる世界経済の一時的停止状態で気候状況は多少は改善されるだろうと期待されたものの、これが抜本的な効果をもたらすことはないとして、次のように語っている。

「温室効果ガスは空気中に放出されると数十年以上もの長い間、滞留します。仮に1年2年の経済停滞で何パーセントか排出量が減ったとしても、長寿命のガスについては今までに排出された総量に対しての割合が問題になるので、コロナによる変質を期待することは難しいです。

もう1つ、人間の活動は大気汚染物質を出しています。北京の空は茶色く、霞がかかっていますが、あれがそうです。大気汚染は太陽の光を反射する効果が割合大きいので、汚染が悪化すると温度は少し下がり、温室効果自体は反対の方向に進みます。大気汚染物質は粒子で雨が降ると地面に落ちてくるため、先ほどの温室効果ガスに比べると寿命は短く、数日からせいぜい数か月くらいしか大気中に存在できません。

コロナで人間の経済活動が一時停滞しても、元に戻れば大気汚染物質の濃度もすぐにもとにもどります。NASAの衛星写真でみた武漢の大気汚染度も2は少し減っていましたが、4—5月にはすっかり元どおりになっていました。

大変残念ですが、経済停滞で気候変動が少しましになるだろうとの期待はもてません。」

この記事に示された見解はスプートニク編集部のものとは必ずしも一致していません。

タグ
気候変動, 地球温暖化, 米国, 日本
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