03:37 2021年01月26日
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新型コロナウイルスの感染拡大は世界中の国々で否定的な影響を及ぼした。しかし同時に、生活をよりよくするような新たな可能性を生み出すきっかけにもなった。コロナウイルスは日本社会にどのような変化をもたらしたのか?「スプートニク」がこの1年を振り返り、社会における傾向を評価した。

家族関係とパーソナルスペースの重要性を見つめ直す

コロナ禍の中、ほとんどの日本人が家族の重要性をより意識するようになった。リモートワークへの移行や「ステイホーム」キャンペーンによって、多くの人が、自身の抱えるストレスをコントロールし、互いを思いやり、家庭で快適な雰囲気を作ることがいかに大切かということを知ることとなった。

また独身男女の意識にも変化が現れている。これまで、多くの独身女性は、職場で多くの時間を過ごすことがほとんどで、家は寝るためだけの場所だったため、駅や職場近くの小さなマンションに住んでいた。そんな人々は、緊急事態宣言が出たときには、実家に帰ることもできず、厳しい制限が解除された後、実家に戻ることを決めたという。

家族に対する考え方の変化とともに、パーソナルスペースに対する考え方にも変化が現れている。「ステイホーム」が呼びかけられる中、未婚女性の中には、居心地の良い生活がいかに重要かということを忘れていたことに気づき、郊外にある、より広くてより明るい住宅に引っ越したという人もいる。

一方で、人間関係の重要性というものを、痛みとともに理解した人々もいた。家庭内暴力の被害者となった人もいれば、助けてくれるパートナーも家族もいないという状況に置かれた人もいた。

テレワークやワーケーションで仕事が変わる

デジタル化やリモートワークへの移行はこれまでの仕事のやり方に対するイメージも変えた。コロナ禍の影響下の状況は、オフィスにいなくても有効的な仕事ができることを証明したのである。すでに日立GMOインターネットグループといった企業が、コロナウイルスによる危機が終息したあとも、この勤務形態を継続していくとの意向を表明している。

コロナ禍の中、日本で見られるようになったもう一つのトレンドがワーケーションワーケーションという言葉は、観光地やリゾート地などで、ワーク(仕事)とバケーション(休暇)をバランスよく融合させることを意味する。このようなスタイルはファンタジーの世界でしかありえないように思われていたが、米国のIT企業ではすでにこれが現実のものとして成功を収めている。

そして日本もこのような勤務スタイルを真剣に検討し始めている。その先駆者となっているのが、和歌山県三重県。テレワークが通常的に行われるようになってから、美しい景色のリゾート地を勤務場所にしたいという人の数は大幅に増加した。つまり、仕事をする場所の選択肢が広がったことで、仕事のために狭い東京に移動する必要がなくなるのである。

しかも、ワーケーションは、勤務場所を多角化してくれるだけではない。効果的な職場の作り方に対するイメージにも変化をもたらしている。外国で行われた研究では、人は多幸感が強ければ強いほど、そして自分を取り巻く環境への満足感が強ければ強いほど、生産性が上がるということがなんども確認されている。

日本でも同様の結論が導き出されるようになっている。というのも、日本で働き方を変える必要性があることは、客観的な事実によっても裏付けられているのである。日本は、すでに数十年にわたり、労働生産性で、先進7カ国の中で最下位となっている。

集団によるプレッシャーから解放してくれるオンラインレッスン

一方、リモートワークという形式は、それが仕事でも学習でも決してオフラインに取って代わることを志向していない。これをオフラインに替えることはほぼ不可能であり、またその必要もない。少なくとも、こうしたスタイルの授業は、これまでになかった選択肢を生み出した。

最近、文部科学省は、「公正に個別最適化された学び」と題したプログラムを発表した。このプログラムは、ICT機器を使って、さまざまな理由によって、現在の教育システムに適応できない人たちを支援するというものである。病気や身体障害、発達障害、そして不登校の子供たちなど、誰一人取り残さず支援することが目的とされている。

オンライン授業は他の利点もある。第一に、集団からのプレッシャー(同調圧力)を弱めることができるという点である。若者たちは、周囲から疎外されないよう、集団のために個人の興味や関心を自分の中に押しとどめざるを得ないことが多い。しかしリモートでの授業では、必要のない付き合いに参加する必要もなくなり、それによりストレスの度合いを下げることができる(これは集団での職場でも同様である)。加えて、何らかの点で自分よりも優れている人たちの存在がないオンラインの方が、自分の意見を出しやすいという子どももいるだろう。

当然ながら、オンライン授業はいじめ問題の解決策になるわけではなく、いじめをなくすにはより本質的な別のアプローチが必要である。しかし、ある程度、この問題を緩和するものになる可能性はある。

オンラインデートで恋愛関係も変わる?

オンラインデートサービスの人気はここ数年にわたって日本で見られる傾向であるが、コロナウイルスの影響の中で、この出会い系サービスに対する需要は高まりつつある。また研究の結果、オンラインデートには、日本の男女のパートナー探しにありがちな問題を解決する力があることが分かった。

マッチングアプリはパートナー探しにつきまとうリスクを低減できる。このサービスを使用すれば、相手について多くの情報を、とりわけ趣味や価値観についての情報を事前に得ることができ、それをもとに相性が良いか、交際すべきかの結論を出すことができる。さらに、オンラインデートだとカフェやレストランに行く金銭的コストを削減することができ、オフラインのデートほど時間もかからない。こうした形式のパートナー探しは、リスクだけでなくコストも低減できるため、リラックスして、より自然体での交際が可能になる。長期的にはオンラインデートは恋愛につきまとう偏見をなくす手助けになる可能性がある。

このようなオンラインデートがさらに一般的なものになれば、日本の婚姻率の増加につなげていくことができるかもしれない。


ポスト・コロナの日本社会はどのようなものになるのか?

家族社会学者の永田夏来氏は、著書「生涯未婚時代」の中で、世の中には「ドラクエ人生」と「ポケモン人生」という2つの生き方があると指摘している。「ドラクエ人生」とは、ゲーム「ドラゴンクエスト」の中の生き方、つまりすでに分かっている一本道のストーリーをなぞりながら生きていく人生、一方の「ポケモン人生」は個人が居心地よく生きるために様々な可能性を自由に選び取ることを主眼としていく人生である。

それぞれの局面で、次第に選択肢が広がることによって、日本社会はさらに柔軟なものになる可能性がある。つまり、これまで当たり前だった「ドラクエ人生」から「ポケモン人生」へと移行しようとする人が増えてくるのではないか。

一方でこれは、時代とともに日本人がより個人主義的になりつつあることを物語っている。しかし、だからといって、集団主義が失われるということではない。おそらく、集団主義というものは新たな質のものへと姿を変えるだろう。なぜなら、矛盾しているように感じられるかもしれないが、個人主義というのは他者からの隔離ではなく、環境にとらわれることなく、他の人々と関係を作り出す力であるからだ。これに関連して、独身研究者の荒川和久氏は、「所属するコミュニティー」から「接続するコミュニティー」への移行が行われ、これにより人とコミュニティーの関係性が変わりつつあると指摘している。家族や職場関係への依存からの解放が、「自己の社会的役割の多重化」を引き起こすのである。こうしたお互いに対するオープンな関係は、血縁関係や所属グループにとらわれない相互関係を基礎とする人々で作られる社会に移行するための礎となるのである。

この記事に示された見解はスプートニク編集部のものとは必ずしも一致していません。

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